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日中戦争も泥沼の1941年6月、内務省は国民生活から迷信を排撃ーでも、最後まで神風が吹くとは言い続けたけど

 日中戦争がいよいよ解決策が見えず、北部仏印進駐とかでさらに状況も悪くなってくる中、内務省検閲課は「国民生活からの迷信排撃」に取り組んでいました。長野県の地方紙、信濃毎日新聞の1941年6月1日付夕刊(発行は5月31日)には「暦にも大手術 六曜九星五行を初めとし 相性運勢など除く」との見出しで、内務省の取締り方針を紹介しています。

迷信排撃って、国の仕事かね

 著作権切れを受けて記事を転載しますと「国民生活から迷信を排撃すべく内務省検閲課では生活と密接な関係にある暦の取締り方針を研究中であったが具体案が出来、今後発行の暦、カレンダー類からは六曜、九星、五行を除くことと決定、31日付で全国に通牒を発し、高島易斷発行外2種を発禁処分に付した。今後市場に出る暦は神宮暦を標準にして、相性、運勢などは一切除かれるが、太陰暦干支については太陰暦は月齢を示し農村の行事に深い関係がある干支は古書を読む上に必要なもので六曜九星などに比し迷信の実害が極めて少ないという理由でこれを認めることとなった」

 高島駅斷がなんと、「発禁処分」を受けています!

 さて、実は信濃毎日新聞には、こんな記事が連載されていました。九星の運勢ですね。今でいう、その日の占い、みたいなものです。こちらは1941(昭和16)年5月31日朝刊に載ったものです。

運勢蘭の記号は陰陽五行の印です

 この朝刊が出た日に、先の夕刊が発行され、同時に全国に禁止が通牒されているわけですね。その結果、信濃毎日新聞もこの通牒を受け入れて、翌日、6月1日の朝刊にはこんなお断りが。

「当局の暦取締りの新方針に従い」九星の掲載をやめますと。

 当時の国の圧力の強さが分かります。是非を問う間もなく右ならえ、です。しかし、一般への周知はなかなか広がらなかったようです。同年11月7日付の信濃毎日新聞朝刊には「迷信なし新日記」の記事がありました。

日記も暦統制の対象に

 こちらも著作権切れで記事を紹介しますと「季節の使者の日記類が例年より10日遅れて26日から一斉に松本市内各書店の店頭にずらりと御目見えした。去年まで幅を利かした半円日記が全然影をひそめて、大衆向きでは90銭の当用日記に統一された事、クリスチャン日記、仏教日記、小学生日記、中学生日記、女学生日記等々の文化的のものが著しく減じた事、各日記を通じて百科事典式の奥付がほとんど半減したほか、迷信的な記事を削った事等が従来と変わった主なる点である。書店では『いや、どうも売れ行きの良いのに驚きました。大体日記類の顔が揃ったと思ったら第一日目に割当量の3分の1を売りつくしてしまいました。もっとも、いつもですと恵比寿講が日記帳売れ行きのバロメーターでした、約一週間遅れているのですから無理もないことでしょう。私共へ共販会社から配給されたのが大体2割減ですから年内にはすっかり片付いてしまうでしょう。高島駅斷所発行の御調法といったものを探して来るものが大部ある所から見て、未だ九星を加味した暦類が出ないことを知らぬ人々が随分多いようです

 そりゃ、暦なんて年末にならないと関心が向かないですからね。気づいた時には発禁になっていたとは、知らないのも無理はない。そして、なぜ迷信がダメなのかの説明もない。

 そして、そのくせ最後まで「神風が吹く」と言って居たんですから、おかしなことで…あ、これは「史実」でしたか(´・ω・)


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