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2023年「第7回展示会ー戦争だ!カネ出せ!モノ出せ!ヒトを出せ!展」ー戦争を遂行する側から庶民を見る視点で。

 2023年の展示会は「戦争だ! カネ出せ!モノ出せ!ヒトを出せ!」
をテーマとし、戦時下で国や軍が庶民にどんなことを強いたかを紹介しました。前年が戦争や軍を利用する側の展示でしたから、今回はそれを逆にして、為政者側からの視点でとらえてみました。会期は8月8日―13日の6日間で、代表がフルで会場の販売係、案内係をやっていました。
 開催場所は恒例のギャラリー82で、信州戦争資料センターと公益財団法人八十二文化財団の主催でした。

庶民から絞り出されるモノ、カネ、ヒトをイメージしたチラシ

 戦争に必要なカネ。普段から戦争のための資金をためているわけではありませんから、特別会計を作って基本的に国債を発行して賄いますが、世界から孤立した日本では、国債を国民に買わせるしかありません。日中戦争がはじまると、国債に並ぶ貯蓄債券や報国債券を発行。さまざまなチラシで勧誘します。

人気漫画家も投入した支那事変国債の購入勧誘チラシ

 そして太平洋戦争。今度は各道府県ごとに消化割合を徹底させて、既に発足していた大政翼賛会の末端組織の隣組に割り当てて買わせます。そのため、この時期はチラシも少なく、戦意をあおるものばかりに。なりました。そして最後は射幸心に訴え、利息分を極端に割増して当たった人以外は元金しか帰らない福券、明治からの富くじ禁止を破った宝くじの元祖「勝札」まで行きつきます。ちなみに、勝札は1945(昭和20)年7月15日の発売で、戦後の8月25日、長野市の勧業銀行で抽選されています。

太平洋戦争当時のチラシは、穏やかな呼び掛けだった日中戦争当時とは一変します
国債購入のあおりがすごい
元金を返すのが債券の基本ですが、利息分の当たりが大きい福券は20年後の償還に

 戦争に必要なモノ。日中戦争に絡んで仏印に進駐し、屑鉄も石油も輸入できなくなった日本は、資源確保を狙って太平洋戦争を起こします。南方資源地帯を抑えたものの、船が足りず荷役能力も不足し結局、頼るは国内。金属供出は太平洋戦争前の日中戦争当時からの呼びかけで、お寺の鐘が出されるのもこのころです。そして銀など貴金属、航空材料となるアルミの貨幣、そして火薬の原料とする綿も集めて回ることになります。

さまざまなモノの供出を呼びかける回覧類
1944年、火薬原料の不足で綿の供出を求めます

 農家には増産の掛け声ばかりで、化学肥料もなく、農具も鉄の配給不足で中古を総ざらいしても足りない状態に陥っていきます。綿花代わりの桑皮繊維、モノを運ぶためのわら製品など、手不足物不足が重なる中、美談で説得される国策紙芝居も展示しました。

物の容器不足が深刻な中、大忙しの農村で指定のかます1万枚を作った国策紙芝居「国思ふ」

 戦争に必要なヒト。兵役は義務とされた大日本帝国で、徴兵から逃れる手はありません。今回、1943(昭和18)年に徴兵され、仏領インドシナの部隊にいたところインパール作戦に投入されることになった、現在の飯田市出身の兵士が戦後、復員してすぐに描いた「回想録」を、解説付きで読みやすく復刻し「一兵士が描いた戦場の記憶ー牧内兵長回想録」として発行しました。
 さまざまな資料を使って調べた足取りを書いた地図を添え、足取りと戦場の傷をいやすかのように描かれた「回想録」の絵を重ねて、戦争が日常に降りかかる様子を追体験していただければ幸いです。ほかに、動員のためのヒトの情報を国が管理していく様子、動員される学生、本土決戦に備えたゲリラ戦を指導する「国民抗戦必携」など、貴重な資料を展示しました。 

軍需工場に動員された女学生が出来高表に描いたとみられる挿絵が凄まじい
(ケースをかぶせる前の写真です)
展示前の「国民抗戦必携」。疎開した登戸研究所が所蔵していたもの。複製禁止

 今回の実物資料はおよそ200点。過去の展示会に比べて最大規模となりました。期間中、300人余りの方にご来場いただき、回想録や図録も多数ご購入いただきました。アンケートは124人の方にご回答いただき、45%は県外から訪れてくださいました。Twitterで催しを知った方が6割で、ほかにも回想録発行を新聞が報じたことからきてくださった方も目立ちました。初めての来訪者も、55%で、ネットで知ってきてくださる方が中心になっているようです。一方で、観光に来て立ち寄ってくださる方もおられ、嬉しい限りです。年代としては40代―50代の方が最も多くなりました。

さまざまな世代の方で盛況だった会場

 今後もお客様に、来て良かったと思っていただける展示を心掛け、精進していきます。よろしくお願いいたします。

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信州戦争資料センター(まだ施設は無い…)
ここまで記事を読んでいただき、感謝します。責任を持って、正しい情報の提供を続けていきます。あなた様からサポートをしていただけますと、さらにこの発信を充実し、出版なども継続できます。よろしくお願いいたします。