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NEW DAYS ★ プチDAYS★ブルックリン物語

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ブルックリン在住の大江千里が日々の暮らしを綴る6000字前後の読み応えあるエッセイ。「NEW DAYS」も仲間になりました。単行本『ブルックリンでジヤズを耕す 52歳からのひとり…
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#大江千里トリオ

Days 2024 「まるで baggage claim で回る荷物のように・後編」

12月24日、札幌ジャズ、25日、札幌から東京へ、そしてクリスとのリハ、目の前のことだけに集中していたら、あっという間にBlue Note当日がやってきた。 トリオは僅かなクリスマスの一日を別々に過ごす。それぞれがそれぞれの時間があるのとないのとではその次が全然違ってくる。ロビーコール。クリスとのリハはいいガス抜きにもなり僕は新鮮な気持ちで2人に会う。「よっ」お互いに挨拶もほどほどにBlue Noteバスに乗り込んだ。 「このバスいつもよりも大きいよね。」 ロスが座席を

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Days 2024 「まるで baggage claim で回る荷物のように・中編」

仮眠の後、リハが始まった。 翌日本番を行うホールの入ってるビルの別の階だ。トリオの面々は、会ってない時間分膨らました自己練習の結果をここで互いに確認する。3人の仕上がりは上々と見た。あっという間にリハは終わる。 夜はPND社長仕切りで「西鶴」(ネットで見つけた魚介の店)をおさえる。個室で思う存分堪能する。美味しかった。 たちなみが骨折しただけのことはある路上の異常なツルツルに気をつけつつ、トリオはよちよちホテルへ戻る。 「屋上の風呂へ行ってくるよ。露天風呂もあるんだよ

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Days 2024 「まるで baggage claim で回る荷物のように・前編」

師走とはよく言ったもので12月は本当に忙しかった。JCCIのDinner GALAやFCIの新春インタビュー。ツアーの準備や前倒しの忘年会など次から次へ。一つ終えて帰宅すると我が家のクリスマスツリーに少しホッとする。 でも心の中は目の前に迫るブルーノートツアーや年明けのソロツアーのことでいっぱいだった。あれもこれもと考えると焦って人間は失敗する。だから流れに身を任せてやれるだけをやり、あとは楽しく食べて寝るに限る。そう思って毎日を過ごしていたら、気がつくとあっという間にクリ

¥200

プチDAYS 「戦いの火蓋は切られた!」

JCCI( Japanese Chamber of Commerce and Industry of NYC )、いわゆる在米商工会議所の  "39th Dinner Gala"での演奏が無事に終わった。 Info: 12/11  8pm performance starts, 700 guests, the Ballroom of the Hilton Midtown NYC 在米商工会議所のレベッカさんから夏前にメールをもらった。2023年という激動の年の終わりにアメ

¥200

プチDAYS「雨の糸を曳く。里見八犬伝。未来の箒に跨る。」

時差ぼけはありがたい日本のお土産だと思うようにする。 アメリカに帰国して3日間は昼夜関係なく寝続けた。ベッドで気を失ったように寝た。ニュージャージーでぴの世話をしてくれてたKayからペンステーションでぴをピックアップし、やっと一緒にいつもの我が家だ。 時差ボケで寝続けていたかと思えばムクっと起き上がりいきなり仕事を始める。レギュラーのアルファのラジオを録音したり、アメリカのPR担当のダンとの諸々の打ち合わせなどやることが山ほどある。 Kayには感謝しかない。ぴの調子がす

¥100

プチDAYS「All the way back to NY」

N Yに着いた。 夜遅かったので ぴのピックは翌日にしてそのままブルックリン宮殿へ。 太平洋を越えて日本からアメリカへ、ウーバーの運転手の愛想の悪さや、まだ工事中のラガーディア空港のひどい道路の凸凹の洗礼を受ける。日本は舗装されていてシートベルトも義務付けられていて頭を車の天井にバコバコぶつけるなんてなかったもんな。ブルックリンのどこ? って質問するからアプリに入ってるのにもう一度答えるも仏頂面で返事なしだもんな。日本はこんなことなかった。 日本の良いところは他にも数え

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プチDAYS 「ブルーノートの巣の上で」

オールを漕いでいると港に着いたので少しだけ休むことにする。 ブルーノート二日間が終わった。夢のような時間だったがそれなりの苦労はあった。短い時間の中で集中してショーを成功させるため、みんなが一丸となり知恵と体力をマックスにして挑戦し続ける時間だったように思う。 まず僕のコンデイションは相変わらず、自分で「結構メンテできている」と豪語するわりには、施術の先生は「これで明日ピアノを弾くなんて到底無理なコンディション」と言われ大きなショックを受ける。でも40年間、最悪のケースな

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プチDAYS「珈琲の香りに誘われて」

いつからだろう? この苦みばしった香りに誘われているのは。 昔はこの香りが嫌いだった。顆粒の珈琲を飲んでいた昭和の時代の話だ。それがいつの間にか淹れたての香りが漂うだけで、一杯の美味しい珈琲が、、、、飲みたくなる。 子供の頃、親指を隠して墓の前を通った。あの縁起担ぎのクセをいつしか気にしなくなって久しい。何度かの喪失を経験し、自分も人生の後半に差し掛かり、景色の隅にはいつの間にか、珈琲が湯気を立てているようになる。 朝ごはんの時、食卓で珈琲を飲む父の顔を怪訝そうに覗き込

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プチDAYS「本能か電子かで、ゆらゆら!」

ぴの持ってる「ぴ時計」。 彼女はiPoneを持たないのにきっかり夜中の3時半と午後の4時にNature Calling(おしっこうんこ)を済ませる。その時間の正確さには舌を👅巻く。 必ず終わった後トイレのTraining Sheetsを鼻で畳んで掃除をするので、そのガサガサって音で、パパにはわかる。 「ぴ、偉いね。じゃ、パパが後はやってあげるね」 と言うと 「よかった。じゃあ後はよろしく」 トイレからキッチンへ。 ぴ時計は既に新しい次を刻み始めているようだ。

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日曜Special プチ"大江千里DAYS " 「Dr.ゴボーを探して」

久しぶりに大好きな和食屋さんでランチを食べた。 午前11時半に顔を出すと、 「いいよー。裏庭に座ってビールでも飲んで待ってて」 と言ってもらえたのでそうさせてもらう。 自炊メインになってから外で食べなくなった。でも, 何かいいことがあったとき、自分が頑張った後にご褒美をあげたいとき、やはり「外食」はいい。 しばらく来ないと裏庭の様子が違う。日本をモチーフにしたアートが壁一面に描かれていてその独特の和の世界観が際立つ。この店は日本食文化が大好きな中国系インドネシア人が

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大江千里DAYS「五番街をワシントン公園まで下れば」

11月の風はピリッとクリスピーでどこかこそばゆい。そんなに早く冬にならないてもいいのに。もうちょっとのんびり秋のままでもいいのに。 冬と夏の間を反復横跳びしているNYの秋の気温。そういえば去年もこんな日々を繰り返しながら気がつくとあたり一面雪景色だったっけ。そんなこと考えながら散歩から帰宅してピアノの練習に入ると、窓越しに街路樹の黄色くなった葉っぱたちが風に揺れている。 今週に入りやたら地下鉄に冷房が入る。もうすでに冬の準備をしてきた人々を汗びっしょりにさせながら電車は橋

¥150