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【書評】 やり抜く人になるのは難しくない 『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』

ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。83冊目。

『やり抜く人の9つの習慣 コロンビア大学の成功の科学』(ハイディ・グラント・ハルバーソン、林田レジリ浩文 (翻訳))

週に一度、クライアント先での定例会議があるので、日本橋付近に来る。

打合せは15時位に終わるので、そのあとは丸善日本橋の横のルノアールに入り、そこで水出しアイスコーヒーを飲みながら三時間くらい仕事をし、そのあとは丸善を足が痛くなるまで歩き回りつつ、閉店間際に数冊の本を仕入れ銀座線で帰宅する。というルーチンを楽しんでいる。

マルゼン楽しい。位置的には八重洲ブックセンターにも足を延ばせるのだけど、品ぞろえの俗っぽさ+αな感じが好き。かっこつけてない。

あと、地下に降りると地下鉄直結ってのが良い。しかもトイレと改札が近いので

ルノアール → マルゼン → トイレ → 銀座線

というルートがノンストレス。最高。

先日も、定例会議後にこのルーチンに入り、いつものようにルノアールで仕事をしていた。

そうしたら、横で投資マンションの勧誘が始まった。とはいえ、この手の勧誘はルノアールの日常風景だ。ルノアールあるある。

東京のルノアールでは、街の個性にあわせ、色々なことが取引されている。歌舞伎町ではツケが払えなくて号泣するOLに店でさらにツケで飲むようホストが勧め。渋谷ではタレント事務所へ登録するための入会金の説明が行われ、赤坂では襟が二重になったシャツを着た男性がしおれた老人にモンブランのマイスターシュテュック(高級ボールペン)を持たせ何かの売買契約を結んでいる。

日本橋はどうか。日本橋は、非常に土地柄が良い。よって、ちゃんとしたサラリーマンが沢山いるので、ルノアールもこころなしか上品だ。ちゃんとしたおじさん達が、ちゃんとした打合せをしている。資格の勉強をしている方も多い。

そして、今回のような投資マンションの勧誘もよく見かける。よくみかけるというか、毎回見かける。

その日も、投資マンション業者が若い男性を囲んでいた。しかも、彼を取り囲むのは、なぜかみなミニスカ姿だった。羨ましい。

いつも見かける営業マンはパンツスーツスタイルなので、彼女たちは赤羽あたりから出てきた新参なのかもしれない。

そのミニスカ営業マン曰く、いま投資マンションを買えば、間違いなく、絶対に、確実に儲かるそうだ。特に、ベイエリアが儲かるから目いっぱいのローン枠で買えば、薔薇色の資産形成になるそうだ。羨ましい。

しかもその根拠は「水辺の生き物が元気になるから地価も上がる」というものだった。凄い。

でも、どうしてそれで地価があがるのかわからない。

営業マンたちは、なにやら斤の嵩みそうな紙を使った資料で、水辺の生き物がいかに大事か説明をはじめたのだが。こちらも仕事中だし、あからさまにのぞき込む訳にもいかないので、なかなか様子がつかめない。もどかしい。

その後、水辺の話は終わり、家賃保証の説明や収益モデルの説明やらが行われ、私も興味を失い仕事に戻った。被害者男性はいつの間にか帰っていた。水辺の話、どんな説明がされたのだろう。気になってしょうがないが、なんにせよそこで契約が結ばれなかったのので、切ない気持ちにならずに済んだ。

それよりも、なによりも、わたしが気になったのは、投資マンションの勧誘に夢中だった女性たちが、しきりに「やり切りましょう!」と叫んでいたことだ。

この「やりきりましょう!」は決めセリフのようで、このセリフを言う時に声が大きくなるので、そのたびに周りのオジサンたちがビクッとなって視線が彼女に集まる。

「資産形成をして、勝ち組になるまでやりきりましょう」

「老後の為の2000万貯蓄を早くやりきりましょう!」

「ローンさえ払いきればあとは全部自分の資産なのでやりきりましょう!」

そうか、やりきるのは大事だよね。それはよくわかります。

私はこの読書記録を1000日続けるつもりで書いている。日々「やりきるぞー」という気持ちで本を読み、感想を書いている。

趣味の延長みたいなものなので、周りが心配するほどには大変じゃないけど、そうはいっても大変ではある。強い気持ちが必要だ。

そんな日々をすごすうち、そろそろ100日を目の前に迫るうち、この『やりきる』について自分のマインドセットをうまく整わせる方法が見えてきた。

例えば、平日の場合、感想を書く本は22時までに読了しておく、という基準を持っていて、それに間に合うよう、スケジュールとにらめっこしながら選書し、ペース配分も朝イチで考えて、その通りに進捗するよう調整する。という決め事をやんわり課している。やんわりなので、酒を飲むと忘れるのがポイントだ。

まぁとにかく、22時になったら書き始める。電車だろうが、どこにいようが、とにかく書く。最初の1行だけでも良いから書く。車に乗っていたらコンビニの駐車場に停めて書く。パソコンが無くてもスマホで書く。

そうするとあら不思議、なんとなく30点位の文章がすぐに書きあがる。

酒を飲むと分かっているときは、この作業を飲む前に済ませる。

で、あとはそれを読み返し、書き直し、たとえどんな出来栄えだったとしても24時までに更新する。

この流れがルーチンになってきた。

これならやり抜くことが出来そうだ、という気がしてきている。

投資マンションの彼女たちの気合を感じて(二つ横に座っていただけだし盗み聞きなんだけど)、私もがんばろうと気持ちを新たにした。

そして、ルノアールを出てマルゼンに立ち寄るわけですが、二階の売り場でこの本が平積みになっていて、バシッと目にはいってきた。

『やり抜く人の9つの習慣』

これだ! やり抜きたい! つい、買ってしまった。

そして、一気に読み、帰宅中の電車で読了した。実は、あまり期待せずにいたのですが、ところがどっこい、さすがマルゼンの平積み、なかなかいいです!

何が良いって、余計な記述も一切なく、心理学でエビデンスが出ているメソッドがコンパクトにみちっとまとめられていて、よく書店で見かける「スタンフォード式目標達成に至る1024のステップでハーバード入学」みたいな本とは一線を画している。コロンビア大学だし。

本書では、うまれもった才能などは否定している。なにかしらやり抜く人は

「ある種の思考や行動によって、自らを成功に導いている」

という。そしてそういった人たちに共通する思考や行動を「9つの習慣」にまとめて紹介している。

9つの習慣がそのまま章立てになっている。

第1章 目標に具体性を与える
第2章 目標達成への行動計画をつくる
第3章 目標までの距離を意識する
第4章 現実的楽観主義者になる
第5章 「成長すること」に集中する
第6章 「やり抜く力」を持つ
第7章 筋肉を鍛えるように意志力を鍛える
第8章 自分を追い込まない
第9章 「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する

ざっくり内容を整理すると「効率的に、効果的に目標を立てる」そして「それらをやり抜く」の二つについて実行可能とする手法が紹介される。

目標を立て実行したら目標達成? そんなの当たり前田のクラッカーだ。それをやるのが難しいのだ。となるよね。なります。

でも、大丈夫、そのために必要な行動について、心理学上正しいと明らかになっている方法を使い達成できるようになっている。

しかも「毎日朝4時に起きて3時間勉強したあと朝活して通勤時間は英語のテープを聞いて仕事は超効率的に終わらせ残業は一切せずアフターは勉強会に参加して自宅ではヨガと瞑想をして8時間睡眠」といった、それだけやりゃ出来るに決まってる、みたいな超人向けのメソッドではなく、無理せずに普通の人でも実行できる内容になっている。

読んでいて特にこれは良いなと思ったのは「if-thenプランニング」だ。

身体を鍛えようだとか、資格の為の勉強をしようだとか、毎日読書感想文をつけようだとか、そういった目標に対しては、必ず内外からの邪魔が入る。

SNSが気になる、メールやメッセージが来る、部屋の掃除を始めてしまう、子どもが寝ない、諦めて酒を飲んでしまう。誰しも、普通に生活をしてればやらなくてはならない事が膨大にあるうえに、常に差し込みも邪魔も入る。

こうした事態に対処する心理学で効果の実装された方法が「if-then プランニング」だ。

これは「もしこうなったら、こうする」という意味で、プログラミングをかじったことがある方なら、一番最初に学ぶ構文だ。これがシンプルで強力だという。

事前に行動を具体的に決めておくというものだが、方法は簡単で、

事前に「いつ」「何を」やるかを、はっきりと決めておく

だけで、

これで実行できる確率は2倍から3倍も高くなります。

ですって。すっごーい。

例えば、

「16時になったら、何があっても、今日かけるべき電話はすべてかける」

と決める。

つまり目標達成の為の行動について、

IF もし〇〇だったら
THEN 〇〇をする

と決めておき、それを実行する。これだけだ。だがしかし、これが超強力だという。はからずして、私がこの読書感想文を毎日書くためにしていた事は正しかった。

IF もし22時になったら
THEN あらゆる手段を使ってでも書き始める

IF もし酒を飲む予定が深くなりそうなら
THEN 飲む前にあらかた原稿は書いておく

IF もし本を読み切れなかったら
THEN 過去読んだ読書メモの在庫を使って更新する

といった具合に整理された。

とてもシンプルな方法だが、事前にするべきことをはっきりさせておくことで、やがて意識をしなくても自動的に体が行動するようになるそうだ。

この意識せずってのは大事だ。

目標に向けた毎日の行動をルーチンにせよ、習慣にせよ、という事が言われるが、その習慣にしてしまうポイントがこの「if-thenプランニング」を決めておくことにある。

もう、これを知れただけで元が取れた。ありがとう、ありがとう。チャレンジしている皆さんにもおすすめ。ぜひ読んでみてください。

4000字近く書いてしまった。すみません。

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マエダヒデキ
「それって有意義だねぇ」と言われるような事につかいます。

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