【書評】 人間が一生のうちに飲める純アルコールは2トンまで 『No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方』
ほぼ毎日読書をし、ほぼ毎日「読書ログ」を書いています。70冊目。
『No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方』(田崎真也)
医者と話をしていて「人間が一生のうちに飲める純アルコールは2トンまで」と教わった。
日本酒1合で純アルコールは20グラム位だから、1合なら10万杯飲める。毎日3合飲むなら90年位飲める。なんだ、結構いけるじゃない。
でも、話に続きがあった「この2トンに近づくと、あらかたの人間は肝硬変で死ぬ」
あっはい。枠を使い切っちゃいかんのだね。
「なので、この3分の1位が肝臓を壊さない量かな」
肝に銘じます。肝だけに。
ということで、人間、一生のうちに飲める酒の量は決まっている。
それならば、もっと主体的に具体的に酒と付き合いたいもの。酔う為に安酒をくらう生活とはお別れし、美味い酒を大事にじっくり飲もう。そう心に誓いました。
本書は、日本酒を食中酒として、文化的に楽しむものとしてとらえる為の方法を、田崎信也さんがものすごい熱量で伝えてくれる。
『田崎信也』といえば、ワインのソムリエですよね。わたし、あまりワインは飲まないけど、そんな私でも良く存じ上げている巨匠です。
そんなワインの巨匠は、ワインと同じくらい日本酒を愛していた。そして憂いていた。
近頃は、獺祭の活躍などもあって、日本酒が海外で紹介される事が増えているようだけど、それだけに、日本酒を評価する「基準」が定まっていない事に問題を提起している。
本書では、ワインのテイスティングを参考に、日本酒テイスティングの言語化とそれに伴う国際化を提案している。
個人的にも日本酒が大好きなので興味のある分野なのです。
別に、神の雫みたいに「ぬふぉぉぉ足の指から滑り出る泥の感触とタガメの匂い! 山田錦の水田が広がるぅぅ!」みたいな事をしたいわけじゃなくて、自分の好きな味を言語化してみたいという気持ちがある。
目次を見ると、日本酒が好きな方なら、これは買ったほうがいいな、うん、という気持ちになってくると思う。
序章 日本酒の味わい方
第1章 醸造方法の違いを識る
第2章 原料米による違いを識る
第3章 酵母による違いを識る
第4章 いろいろな日本酒を味わう
終章 日本酒を愉しむ作法
醸造方法の違いを紹介している1章では、ざっと醸造についての知識にふれつつ、複数のメーカーの本醸造と純米の比較テイスティングや、吟醸と大吟醸の比較などをしている。これ、超参考になる。
2章の原料米については都道府県別に代表的な酒米をチョイスし、その酒米で作られた酒の比較テイスティングをしている。これ、超参考になる。
3章の酵母による違いについては、協会酵母を中心に、特徴を紹介してくれている。なかなか馴染みのない協会8号酵母を頂く機会が先日あったのだけど、先にこれを読んで覚えていたので、ものすごい味に納得感があった。これ、超参考になる。
ということで、あらゆる方面で超参考になるので、日本酒が好きな方はぜひ読んでおきましょう。必須です。
以前に紹介した酒米ハンドブックと一緒に熟読することで、頭の中に日本酒の地図が出来上がっていくような気がしてきます。
酒をただ楽しむだけなら、ここまで考える必要はないかもしれない、でも、飲んで酔って満足というのは卒業して、残り少ないアルコール摂取許容量を、もうちょっと大事に、主体的に楽しみたいし、そうすることで見えてくる世界ものあるのではないかなと思う。
この本はそれを助けてくれる。
日本酒のテイスティング会とかに行っても、どんどん飲んじゃうから二、三杯目位から味忘れちゃうのが悩み。
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