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終楽章に光った雫 -響け!ユーフォニアム3-
媒体との相性の良さからか、音楽をメインテーマに掲げるアニメ作品は多い。2024年春クールにおいてもそれは例外でないようで、「ガールズバンドクライ」「夜のクラゲは泳げない」などの音楽アニメが放送された。アニソンライブなども活発な昨今、そういった作品の増加は喜ばしいことと思うが、一方で音楽アニメにハマりきれない自分というのも感じている。音楽に明るくないため話の子細に興味を惹かれないのか、結論をライブシ
もっとみる物語における典型の考察 -"ヒロインの格"の観点から-
日常的に物語を摂取していくなかで気付くこととして、典型の存在が挙げられる。否定的な文脈ではテンプレ、肯定的な文脈では王道などと呼ばれるようだが、どう認識するにせよ、なんとなくお決まりの形式というものが消費者の間で共有されているのは事実だ。ここでひとつ疑問になるのは、それを"なんとなくお決まりのモノ"としたままで良いのか、ということである。物語の良さは、時に典型を守り、時に典型を外れることで生まれる
もっとみる死後に寄り添う蝋の翼 ー渚のイカロスー
観たり読んだりする作品、ひとつひとつは何の繋がりもないそれらに共通のテーマを見出すようになる時期がある。面白い偶然もあるものだと思っていたが或いは偶然ではなく、特定の作品で提示されたテーマが心に残ったとき他の作品においてもそのテーマを無意識に探してしまう、ということかもしれない。さてその真実はともかくとして、一時期自分が感じるテーマとして"死後のストーリー"が流行っていたことがあった。"死後のスト
もっとみる君への愛の訳しかた -好きな子がめがねを忘れた-
”月が綺麗ですね。”というフレーズをご存じだろうか。「吾輩は猫である」「坊っちゃん」「こころ」等の著作で有名な明治の文豪 夏目漱石は”I love you.”をこのように訳したという。曰く、日本人にとって直接的な表現は不自然であるとのことだ。英語教師として職を得ながら後世に残る日本語作品を数多く残した彼の、豊かな言語感覚がうかがえるエピソードである。
さて、ここまではよく知られた話である。近年の恋
破れた夢の先にある人生 -白い砂のアクアトープ-
「白い砂のアクアトープ」は、2021年7月から12月にかけて放送されたTVアニメ作品だ。その副題が示すように、本作は夢破れた二人の少女が新たな道を見つける過程を描いている。訳あってアイドルの夢を諦めた「宮沢風花」と落ち目の水族館を閉館させまいと足掻く「海咲野くくる」。彼女らを中心にした青春群像劇は、P.A.WORKS得意のお仕事アニメであり、「凪あす」「色づく」に続く篠原俊哉監督の微ファンタジーシ
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