![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/120582066/rectangle_large_type_2_951971f5a27657bc25dd4e5544bc176e.png?width=1200)
綿帽子 第十話
先生がやって来た。
「◯◯さん、色々と培養したりして調べていますが、変わらず原因は不明です」
「ウイルス性の可能性は低くて、どうやら細菌性のようです。何かというのは断定できていません」
「そこが掴めると良いのですが、この抗生剤が効いているようですので継続して様子を見ます」
それだけ告げると先生は足早に去って行った。
希望が見えて来たのだろうか、まさに鍛冶場の馬鹿力とでもいうべきだろうか。
本当にもう神仏は信じないと決めてから、俺は少しだけ気合いが入っていた。
相変わらず希望の灯は遠くとも、生きるんだという強い意志が戻りつつあった。
口からは自分自身の死滅した細胞が発している臭いなのだろうか?魚の腐敗臭に似た香りがした。
強く実感する死の香り。
死臭としか表現のしようがない。
こういう時に鏡を見るべきではないと言われたりするのだが、如何せんスマートフォンという便利な物がある時代。
わざわざミラーアプリをダウンロードするまでもなく、見ようと思えばいつでも自分の顔を見られるのだ。
早速俺はiPhoneの写真アプリを開いてみる。
カメラの向きを反転させてから自分の顔を覗き見た。
私の記事をここまでご覧くださりありがとう御座います。いただいたサポートはクリエイター活動の源として有意義に使わさせていただきます。大感謝です!!