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綿帽子 第九話

「どうや?」

相変わらず気の利いた言葉は何一つ言わないお袋ではあったが、毎日顔を見には来てくれる。

それだけでも有り難いと思わなければならないのだが、本当に側にいるだけなのでそれもまた複雑な気分になったりする。

昨日の夢の話をした。

それから気になっていた話の内容も確かめてみた。

「お袋、どこの話やった?」

「何?」

「いや、だからなんか言うてたやろ?どこか行って大丈夫やったって話」

「ああ、善光寺さんの話かいな」

「せやったかな、その話教えてほしいんやわ」

「夢の話や」

「夢なんか?」

「せや、夢の話やで」

「それでええ、もう一回話してみて」

「何でや、なんでそんなこと聞きたいん?」

「ええから話してくれよ」

「えーとな、ちょっと待ってや」

お袋はしばらく不思議そうに俺の顔を見つめていたが、何かを確かめるように「うんうん」と頷くとゆっくりとした口調で語りだした。

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