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豊昇龍には「強い」横綱になってほしい。昇進の口上に込めた「気魄一閃」の思い。どんなときにも力強く。負けても出場し続ける。けがにも強い。これこそ大相撲の最高位

新横綱の誕生だ。豊昇龍が第74代の大相撲最高位となった。今月26日まで行われていた初場所で優勝。先場所と合わせて2場所連続優勝に準じる成績と見なされての昇進となった。

あやうく横綱が空位となるところだった。今場所中に唯一の横綱、照ノ富士が引退。来場所は32年ぶりに大相撲の最高位がいなくなる恐れがあった。

豊昇龍は先場所13勝。千秋楽の相星決戦に敗れて「準優勝」だった。綱取りをかけて臨んだ今場所。豊昇龍には試練が続いた。9日目までに平幕相手に3敗を喫した。「綱取り厳しく」という見出しがメディアに載った。

しかし、そこからが豊昇龍の真骨頂。残りの6番を全勝して12勝3敗。3力士による「巴戦」の優勝決定戦に臨んだ。

まずは金峰山を寄り切りで下し、続く王鵬を寄り倒し。豊昇龍は9場所ぶりの2度目の優勝を果たした。

綱取りどころか賜杯も難しいとされた状況からの逆転優勝だ。先場所の成績と合わせ2場所続けて優勝に準じると見なされて、横綱昇進となった。

先場所は13勝、今場所は12勝。計25勝は平成以降に横綱となった中で最も少ない勝ち星だ。それでも今場所の逆転優勝を見ても勝負強さは光っている。ここ一番で結果を残す者こそ横綱にふさわしい。

豊昇龍は優勝25度を誇った朝青龍のおい。これまでは常に「横綱のおい」という位置づけで見られていたが、自らが横綱となった。これからは「朝青龍は豊昇龍のおじ」と言われるように活躍してほしい。

横綱昇進の伝達式。豊昇龍は「横綱の名を汚さぬよう、気魄一閃の精神で精進します」と口上を述べた。「気魄一閃」に、何が起きても力強く立ち向かうという思いを込めた。

この言葉は大関昇進の際にも使っている。豊昇龍にとって、原点に立ち返る必須ワードなのだろう。その意気や良し。

大相撲最高位の横綱は勝つことが重要視される。さらに「品格」まで求められることもある。しかし、最も求められることは「土俵に上がり続けること」ではないか。

横綱という地位へのプレッシャーはあるだろう。これまでの取組で心身に蓄積したストレスも尋常ではないはずだ。歴代の横綱はけがや病気で休場するケースも少なくなかった。

ファンは横綱の一番が見たいのだ。番付に横綱の力士名があっても休場で土俵に上がらないのでは、いないのと同じ。勝っても負けても横綱が土俵に立ってこそ、大相撲の魅力が増すはずだ。

何が起きても力強く立ち向かう。伝達式で「気魄一閃」に込めた思い。新横綱の豊昇龍には口上通りに、どんな状況でも力強く土俵に上がり続けてほしい。それこそ横綱の最高位にふさわしいふるまいだろう。豊昇龍の立ち向かう姿を応援したい。

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