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「本当は勝つことが最大の恩返しだったのだ」。阪神・糸井選手の引退試合。延長で敗れてCS争いからも大きく後退

阪神を支え続けてきた糸井嘉男選手(41)の引退試合。チームはクライマックスシリーズ(CS)進出に望みをつなぐ大一番でもあった。猛虎打線を引っ張り続けてきた「アニキ」的存在の糸井選手に対して、勝つことが最大の恩返しのように思えた。しかし、チームは延長の死闘の末に、痛い敗戦。アニキに有終の美を飾らせてあげられなかったのは、悲しい。

セリーグでは、3位争いが激しさを増している。3位巨人に対して、阪神と広島が1ゲーム差の4位タイで追っていた。そして、4位同士のチームによる直接対決が21日に甲子園で行われた。

ともに65勝70敗3分。残り試合が5試合しかない。ここからの1敗は、「遥かなる後退」を意味する。「負けられない戦いが、ここにあった」のだ。

阪神が初回に2点を先取しながら、直後の二回に広島が4点を奪って逆転。お互いに勝たねばならないことが分かっている。「ガチンコの殴り合い」。これこそ、「アニキ」の引退試合にふさわしい。

五回の先頭に代打で登場した糸井選手。スタンドからは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。フルカウントからの8球目。高めの147キロストレートを三遊間に流し打ち。技ありの一打に、引退はまだ早いのではないかと思うほどだった。

このヒットで、打線が勢いに乗って、このイニングに1点返し、次の回にも加点して、同点に追いついた。チームを勢いに乗せる男。これこそ「アニキ」糸井選手なのだ。

七回からは一気に展開が変わり、両チーム無得点。「得点を許したら即、負け」と言わんばかりの緊迫したムードになった。まさに死闘だった。ついに延長に突入。しかし、十一回に広島がビッグイニングの6点を奪って勝ち越し。阪神に追いつくだけの気力は残っていなかった。

阪神にとって、二重の意味で痛い敗戦だった。一つはCS争いから大きく後退したこと。そして、世話になった糸井選手に「有終の美」を飾らせてあげられなかったこと。「アニキ」に対しての最大の恩返しはねぎらいの言葉をかける以上に、一緒に勝つことだったと思うのだ。

「勝負師」糸井選手には勝利の場面こそ、ふさわしい。それだけに、死闘の末に負けたのは、あまりにも痛すぎる1敗だったのだ。

日本ハム、オリックスを経て、2017年から6シーズン、阪神を引っ張ってきたヒットメーカー。通算1755安打。大きな応援を後押しに、現役最後の打席でヒットを放った。まさに勝負師だったのだ。だからこそ、最後は勝利という「餞別」を、アニキへプレゼントしてほしかった。

糸井選手、お疲れさまでした。偉大な強打者でした。

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