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高校バスケの「ファブ・ファイブ」。たった5人で戦った和歌山南陵の選手たちをたたえたい。学校の経営難で部員激減。困難な生活でもプレーし続けた「驚異の5人」

高校バスケットボールの「驚異の5人」と言いたい。全国大会のウィンターカップが開幕し、和歌山南陵が初戦を戦った。たった5人で臨むチーム。学校の経営難で部員が激減したためだ。試合は終盤に1人が退場して、最後はコートに4人が立つだけ。それでも最後まで戦い抜いた選手たちをたたえたい。

南陵の初戦は長崎工業。南陵のコートサイドには、控え選手はいない。今大会に5人だけで臨むためだ。

コート上の選手たちは全員3年生。彼らが入学した当時は部員が46人いた。しかし学校の経営難で、多くが転校していった。生徒の募集も停止となり、寮のガスや電気が止まるなど生活すら危ぶまれる状況だった。

寮の朝食が菓子パン1個だけという生活が2カ月続いたことも。育ち盛りの選手たちにとって、つらい時期だったに違いない。それでも6人の選手たちがプレーしていた。

選手が少ない状況下で、チームの戦術は「走らないバスケ」。この競技はコートを駆けて、激しく体がぶつかる。体力も消耗する。そのため、試合中に選手を頻繁に入れ替えていく。本来行うべきことが、この環境ではできない。

二宮有志主将は「走りあってしまうと体力的に苦しいです」と現状を語る。そのためにスローペースに持ち込み、体力を消耗しないように攻撃時のリバウンドを回避する。一つ一つのシュートに精度を高めていった。

6人で臨んだ和歌山県予選。チームの戦術が奏功して、圧倒的な成績でウィンターカップ出場を手にした。

しかしチームをさらなる試練が襲う。外国人留学生が進路の件で、一時帰国したのだ。なんとか大会出場をめざしたものの間に合わなかった。チームは5人で戦うこととなった。

もう交代選手はいない。そして初戦の長崎工戦に臨んだ。南陵は前半を終えて、33-37と接戦に持ち込んだ。第4クォーター残り7分40秒では52-54と同点に追い付ける展開だ。

しかし5つ目のファールをした選手がファールアウトとなった。南陵に控え選手はいない。コートにはたった4人だけ。みるみるうちに点差を離されていった。最後は64-80と力尽きた。それでも交代選手のいない中で戦った南陵の5選手をたたえたい。

バスケの本場、米国ではかつて大学バスケ界に「ファブ・ファイブ」と呼ばれる選手たちがいた。ミシガン大の「驚異の5人」。後にプロバスケのNBAでスターとなるクリス・ウェバーさんら5人。入学当時から、この愛称で呼ばれ、2年連続全国大会決勝に進んだ。

南陵の選手たちは初戦敗退で終わった。それでも競技環境があまりにも厳しい中で、学校を去らずに戦い続けた。二宮主将は「この舞台に来て最後まで戦ったのは自分の財産」と振り返った。

今大会に臨んだ南陵の選手たちのことも「ファブ・ファイブ」とたたえたい。「驚異の5人」に盛大な拍手を!

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