苦境に陥ったときに、どう臨むか。「どうする日本ラグビー」。試合前半に退場者。相手の得意技を封じて、数的不利に対応。勝利を逃したが、大きな糧に
苦境に陥ったときに、どう臨むのか。人生における最大級のテーマだろう。それはスポーツでも変わらない。ラグビー日本代表は試合中に数的不利に陥った。この状況にどう対応するのか。日本は相手の得意技を封じる作戦に出た。試合には敗れたが、このプランは正解だった。試合の勝利とチーム強化の両立をめざす時期に、大きな糧を得たように思えた。
13日に仙台で行われた日本-ジョージア。日本は前半20分に危険なプレーによる反則で退場者を出し、数的不利に追い込まれた。
昨年のNHK大河ドラマ「どうする家康」のようにピンチに追い込まれた。1人少ない状況で残りの60分を戦わなくてはいけない。「どうする日本」。
試合に勝つだけならば、ペナルティーゴール(PG)やドロップゴール(DG)で3点を細かく追加していく戦法もある。
実際に昨年のワールドカップで、イングランドは数的不利の中、ジョージ・フォード選手が、PGとDGで計9本を決めて、強豪のアルゼンチンを27-10で下している。
しかし、今の時期は日本にとって勝利とともに、チーム強化の両立を図る必要がある。日本が取った対応策は相手の得意技を封じて、勝機を見出すことだった。
相手のジョージアはスクラムに力を入れている。まるでスクラムに勝てば、試合に負けてもいいと言わんばかり。スクラムを得意技としているのだ。
日本はフォワードの選手が1人欠けた中で、スクラムを組む際に、バックスの長田智希選手が穴を埋めた。そして互角に戦った。自分たちの得意技で押し込めないジョージアに焦りが生まれる。日本は相手の反則を誘っていった。
そして相手にも一時退場者が出て、14人対14人の戦いとなった後半24分。相手陣のゴール前で攻撃を重ねる日本。最後は外にパスを出して、長田選手が逆転のトライを決めた。代表初トライだ。その後のゴールも決まり、日本は23-18とリードする展開に持ち込んだ。
もったいなかったのは、その後の展開だ。相手の攻撃に対して、日本の選手が反則を犯して、1人が一時退場。ジョージアは一時退場の選手がグラウンドに戻っていたため、13人対15人の戦いとなった。
さすがに2人も少ない数的不利の状況ではなす術がなかった。後半34分、相手にトライとゴールを奪われて勝負あり。23-25で日本は敗れた。
しかし、相手の得意技のスクラムに対して、同じ人数で組めば互角以上に持ち込んだ。これは大きな収穫だろう。相手の焦りを誘って、自分のペースをつかむ。ゲームプランとしても良い展開に持ち込んだ。
試合には惜敗だったが、今後に向けて大きな糧となった。この試合で代表初出場の選手もいた。チームの経験値を上げることもできた。
苦境に陥ったときに、どう臨むか。3年後にオーストラリアで行われるワールドカップに向けて、日本は敗戦の中から、大きなものを手にしたように思える。
「どうする家康」で最後に天下を取った徳川家康。日本もピンチに陥っても十分な戦いを見せた。「どうする日本」。ワールドカップへ、日本の視界は良好だ。