青春の理想は「熱い気持ちと冷静な判断力」。全国高校ラグビー。鉄壁守備の桐蔭学園が3大会ぶりに優勝。東福岡もトライシーンに輝きを放った
青春といえば、熱い気持ちを思い浮かべる。がむしゃらに突っ走るのは魅力的だ。それに冷静な判断力が加われば、なんと理想的だろう。高校ラグビーで両方を兼ね備えた勇者たちを見た。3大会ぶりに優勝の桐蔭学園(神奈川)だ。苦しくても熱い気持ちと自らを律した鉄壁の守備を見せた。そして準Ⅴの東福岡のトライも見事だった。青春がキラキラ輝いていた。
有名は経済学者のアルフレッド・マーシャルは、経済学を学ぶのに必要なのは、「冷静な頭脳と温かい心」という名言を残している。
青春、そしてラグビーにも同様なことが言える。より正確には「熱い気持ちと冷静な判断力」だろう。
無心に突っ走る。一方でしっかりと判断して自律する。青春という名の自動車で、アクセルとブレーキを巧みに使いこなすのが理想的だ。
7日に花園ラグビー場で行われた全国高校ラグビー決勝。連覇を狙う東福岡と3大会ぶりの優勝をめざす桐蔭学園が相まみえた。
前半は桐蔭学園ペース。1トライと1ペナルティーゴールを奪って8-0で前半を折り返す。
後半は東福岡に主導権を握られ1トライを返される。8-5とリードは3点差に。
後半のロスタイム。東福岡にゴール前まで攻め込まれる。ボールを奪いたい。はやる気持ちが先立つのは当然だ。ただ無我夢中でプレーすれば、反則を犯す危険もある。
桐蔭学園の選手たちは、熱い気持ちで必死に押し返し、自制心も忘れていない。相手にタックルを続けながらも、自らを律していた。インゴールに踏み込ませない。途中出場のフッカー田中健心選手らがボールに絡んで、東福岡の反則を引き出した。
桐蔭学園が守り抜いて、4度目の日本一に。SNSでは「鬼ディフェンス」と称賛された。熱い気持ちと自らを律する判断力。青春の理想を体現したのだ。
敗れた東福岡も後半16分に奪ったトライは見事だった。右サイドをナンバー8の高比良恭介選手が突破しチャンスを作る。タックルを受けても倒れずに20m前進。3人目のタックルを受け、倒れ込みながらパスを渡して、トライを演出した。
ぎりぎりまで前進し、これ以上は無理と分かった時点でパスを供給。これも熱い気持ちの前進と、パスの出す機会を冷静に判断したプレーだった。
今大会、両校ともに準決勝までに奪ったトライは32。頂上決戦でもお互いに一つずつ。まったく互角と言っていい戦いぶりだった。
熱い気持ちと冷静な判断力。優勝した桐蔭学園も、準優勝の東福岡も、理想的な青春をグラウンド内で体現してくれた。青春を完全燃焼した選手たちをたたえたい。