憂鬱を檸檬で溶かす話
匂いと記憶の関連性は強いもので、匂いによって特定の記憶が甦ることをプルースト効果と呼ぶことがあります。
私にとってレモンの香りは、印象的な2種の記憶と紐付けされているようで、夕刻のレモネードは懐かしい情景を想起させてくれました。
ひとつは高校生の頃。受験勉強に疲れて鬱々とした気分だったとき、私は決まってレモンをひとつ買いました。それは梶井基次郎の小説に倣った儀式のようなものでしたが、あの香りと質感と重さは実に心地良く私を癒やします。机の上の参考書や問題集に添えられたレモンの存在感。その視界が写真のように瞼に浮かびます。
もうひとつの記憶は強烈な船酔いと上陸後の爽快なレモンドルチェです。山育ちな私が荒れた海路を経験したのはそれが初めてで、友人達にもひどく心配をかけました。男4人の旅路は愉快なものでしたが、この瞬間の陰鬱を溶かしてくれたのは何処までもレモンの風味でした。カプリ島を経つまでに幾つのレモンを摂取したか分かりません。
忘却は人間の美徳です。
何も忘れることが出来なければ、心は記憶の重圧に耐えかねて崩壊に至るかもしれません。過去も未来も幻影で、ただ刹那的現実が命を燃やします。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の憂鬱が爽やかな香りに溶けて霧散しますように。
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