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the_thinker1996
夜の音
日の暮れる様相に季節を感じます。釣瓶落としとは上手くいったもので、夕刻の橙色を星空が覆うのに僅かな時間しか要しません。
「どうしてはやくよるになるの。」
娘は不思議そうに街灯を仰ぎました。アスファルトの影は淡く伸びて、幾つかの方向に光源のあることを示します。見上げると満月が雲間に姿を現して、遠く響く虫の声が侘しさを奏でました。
「たいようがねむるから?」
詩的表現を繰り出す娘に息子が応えます。
「ちがうよ。ちきゅうがまわるから、
たいようがみえなくなるんだよ。」
地動説を唱える4歳児にポカーンとする2歳児。小難しい話になってきたことを察した娘は不意に踊り始めました。
「ぱんつHey!ぱんつHey!」
左右に体を振りながら、軽妙なリズムで踊る娘。
「ぱんつHey!ぱんつHey!……」
呪文を止めた直後、バッと両手を開いて
「…雨、降らず。」
そっか。降らないんだ。
神妙なドヤ顔です。意味不明な展開に息子も私も笑いを禁じ得ません。月夜に響く奇怪なリズムと踊る2歳児。シュールレアリスムを感じます。
何の話をしていたのか忘れた私たちは、再び夜道を歩きます。虫の音色を掻き消すような笑い声が、静かな星空に舞い上がりました。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、日常に寛容とユーモアを。
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