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小さな約束と恋の音
息子を幼稚園に迎えに行くと、彼は数人の女児を引き連れて姿を見せます。普段の活動の様子も両手に花がデフォルトです。
そんな彼が入園時から「かわいいんだー」と目をつけていたララちゃん(仮名、4歳)と急接近していることを知りました。
ある日の帰り道。
息子は幾度か此方をチラチラと見て、意を決したように話し始めました。
パパ、ぼく思うんだけど、
ララちゃんってすごくかわいいんだ。
そうなのかい、すごくかわいいんだね。続く言葉を促すように、私は相槌を打ちながら呼吸を合わせます。
ララちゃんは、ぼくに優しくしてくれるよ。
シゲルくん(仮名)はいじわるだから、
ぼく、スルーしてる。
ララちゃんと2人で、よく遊ぶんだ。
息子の話によると、彼が女児たちと遊んでいると後ろからシゲルくんがドンと押してきたり、喧嘩を仕掛けてくるそうです。息子よ、それはきっと嫉妬されているのだと思うぞ。
今日、ララちゃんと約束したんだ。
約束?
うん。
大人になってもララちゃんのこと忘れないって。
思わず脳内に『secret base 〜君がくれたもの〜』が流れ始めます。
10年後の8月、また出会えるでしょうか。
息子は「約束」を果たすことに情熱を傾ける性格ですから、大人になっても案外忘れずにいるような気もします。あれが初恋だったのかと、いつか振り返る時が来るのかもしれません。
不意に思春期のような表情を見せることのある息子を、そんなに生き急ぐ必要はないのにと思いながら、口を噤み、ただ抱き上げます。
息子はフウっとして、身体の力を抜きました。
ぼく、子どものままがいい。
だって大人になったら、
パパに抱っこしてもらえないから。
一生懸命な息子を、ひどく愛しく思います。
心配すんなよ、大人になっても抱っこしてやるぜ!パパは力持ちだから大丈夫。安心して大きくなるといい。そうだろう?
息子はパッと弾ける笑顔を見せて、わかった、と言いました。
大人の何気ない一言が、子どもに思わぬ影を落とすことがあります。もし私が抱っこを拒否したり、大きくなったら出来ないと否定したりしたら、彼は大人になることを恐れるかもしれませんし、大きくならないようにという思いから、不食や不眠に陥るかもしれません。
それは考え過ぎだとしても、私は常に、子どもたちの心を肯定していこうと思うのです。
日常の一場面。
私は今を忘れまいと、noteを開きました。
拙文に最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました。願わくは、貴方の心に触れる音が、やわらかく温かいものでありますように。
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