ベストセラー小説は買わない 《詩》
「ベストセラー小説は買わない」
君の書いた詩を
僕は自分の思いとして受け止めた
君の書いた小説を
僕は自分の物語として
しっかりと抱きしめた
何故だかわからないけど涙が溢れた
上手な嘘をつく事が
詩人や小説家の仕事ならば
僕はきっと死ぬまで
其れにはなれそうにない
活字として残された類型化の文化
その他 大勢の中の陳腐
類型の王は僕に言った
小僧 教えてやろう 季節は死んだんだ
僕は何も言えなかった
其れを殺したのはお前達だ
はっきりとした答えはある
だけど何も答えられなかった
何かが勝手に心に沁みてくる
どうしようも無い程の
震えが僕を包み込む
夜を燃やしてくれ
君の言葉だけが今でも
僕の心の中に生き続けている
僕の生理が完全に支配した想いは
文字に起こされ埋もれ消えて行く
其れでも此処に意味はある
書き残す事により其処にある枠組みを
象徴的に刺殺し 象徴的に犯す
僕はそうする事により
空白を埋め続けている
街灯が虚な光で揺れている
一晩中 君の傍に居る
ベストセラー小説は買わない
そう言った僕に君は
小さく微笑んでくれた
望み通りに夜を燃やしてやるよ
もう時間だ
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