ミュッセ『ガミアニ』という性愛奇書
太宰治の「斜陽」のなかに、ミュッセの名があり、僕はその名を知らなかった。ふと好奇心の襞がくすぐられて、図書館で借りて読んでみることにした。太宰が触れていた文学を知りたかった。
海岸の近くにある図書館にはミュッセの本がたった一冊だけあった。初版2003年の須賀慣訳の「ガミアニ」であった。青地に黄色の文字が浮かび、表紙の中央には男女の接吻の絵があった。その絵にふと目を奪われ、なんとなくクリムトの接吻を思い出させたが、接吻を見ればなんでもクリムトに結び付けてしまう僕の心の勝手な作