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たかが「好」。されど「好」。中国語を学んだことがある人、日中・中日の翻訳を生業にしている人ならば一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。 というわけで今回はこの「好」の落とし穴について少し語ろうと思います。ご興味のある方はしばしおつきあいください。 先ごろ、自民党の森山裕幹事長、公明党の西田実仁幹事長らが中国を訪問し、王毅外交部長や李強総理らと会見しました。 この報道の内容自体はもうみなさんご存じかもしれないので割愛しますが、自公幹事長が訪中に関する中国側の報道
肩書きについての解説。前回からだいぶ時間が開いてしまいました。いろいろあったので、すみません(汗)。気を取り直して。 前回は国内の要人の中国語表記について解説しました。 ◇◇ では中国メディアの報道に出てくる外国の要人の肩書はどうでしょうか。 これについては私は訳出の際、中国語表記をそのまま書くのではなく、ちゃんと日本語に訳して表記するようにしています。もっと言えば、日本の新聞報道で使われている肩書(つまり記者ハンドブックで使われているような肩書)になるようにしていま
ユニクロ社長である柳井さんの発言が、中国国内で波紋となっています。発端はBBCのインタビューでした。 実際に柳井さんのインタビュー動画があるのですが、記者はそのなかで日本語で、「今新疆から買った綿を使っているか」と質問しました。 これに対し柳井さんは同じく日本語で「新疆の綿は使って『いません』」と答えたのです。 この発言が歪曲して翻訳され、中国のネチズンの逆鱗に触れたのです。 当ノートは政治的な問題を議論する場ではないのでこの発言の是非は一旦横に置いておくとして、誤訳が
中国の指導者のスピーチを翻訳していてつくづく感じることがあります。それはリズム、つまり語句や文節、はたまた文構造を繰り返すケースが多いということです。これはやはり、「人々の心に訴えかける」というスピーチの特性上、繰り返すことで印象付けをするという狙いがあるのでしょう。 そして、私たち中国語学習者、日中中日翻訳者にとっても中国語の文章を書く上で参考になりうるものだと言えます。そこで今回は指導者のスピーチにおけるリフレイン効果について語っていきたいと思います。 ◇◇ 実はこ
政治家から学ぶ中国語の5回目。今回は数字について掘り下げて考察していきたいと思います。 皆さんは中国語学習を始めたての際、数字は中国語でどう表現するか勉強したと思います。「一、二(两)」のような漢字の他に、量詞と組み合わせて「一个,两个,三个」といった表現も、発音と合わせて練習したのではないでしょうか。 しかし中国語においては、この「一、二、三」といった数字はその表記通りの「いち」「に」「さん」といった意味のほかに、別の意味が付与されることも多々あります。 特に数字の「
中国のニュースを翻訳する上で必ず遭遇する、「翻訳しにくい語句」とは何か。人からこのような質問をされたときに皆さんならどう答えますか。 私なら「抓」の処理方法と答えるでしょうか。それほど中国メディアの政治記事にはこの「抓」という動詞が頻繁に出てきます。 一方で、「抓」という言葉を中日辞書で調べてみると以下の解釈が出てくるはずです。 しかし実際の中国メディアのニュース記事を翻訳する際に、これら4つの解釈を訳語に当てはめてもいずれにもしっくりこないケースが多いのです。こうなる
今回は中国の政治家の言葉から中国語学んでいこうシリーズ2回目です。キーワードはこちらになります。 この言葉。皆さんは中国の新聞やメディア、人々の会話などで耳や目にしたことはありますか?この「接地气」を、中国語の文字通りに直訳するならば、「大地の気に触れる」ということになるでしょうか。 要するに、地面から湧き出てくる「自然のパワーをオラにくれ!!元気になる!!」という解釈になりますよねw。 ただこの「接地气」なのですが、あまりこの意味でつかわれることはないように思わます(
今回からの試みとして、新シリーズを立ち上げたいと思います。名付けて「中国の政治家から学ぶ中国語」です。 当noteでは、これまで何回か中国の政治家の発言を引用しながら、中国語の文法や意味を解説してきました。 実のところ、中国のリーダーである習近平主席や李強総理、はたまた王毅外交部部長などの発言を丹念に調べ上げて、「彼らが何を話したのか」ということを見ていくことは、中国語の語学のレベルアップ、翻訳のレベルアップにとても役立つと私自身強く感じています。前回の記事で紹介した「~
本当は中国政治に関する記事を投稿するのは先週限りにしようと思ったのですが。今日11日は全人代会議の閉幕日。ということでやはり触れざるを得ないでしょう。 今回は今年の全人代会議で話題になった点を総括したいと思います。 総理記者会見の取りやめやはり今回の両会の中で、これが一番ハイライトになったといえるでしょう。この情報は、4日に開催された、全人代会議開幕直前に開催が恒例となっている全人代会議記者会見の席上で、婁勤倹報道官が発表したものです。発表後は中国ウォッチャー界隈では衝撃
今回は少し毛色を変えて、中国政治のことを触れたいと思います。いつもなら、中国政治のことについて解説するのは当noteの趣旨とは少し異なるので控えているのですが、やはり今週は触れざるを得ないでしょう。なぜなら今週は中国にとって一年一度の重要な政治イベントがあるからです。そう。全人代と全国政協会議の開催です。そこで、今回は全人代と全国政協会議の(私が知りうる範囲の)基礎知識と、今年の全人代会議、全国政協会議の見どころを少しお話したいと思います。 まず触れておきたいのは、全人代と
地味に(?)人気のあるニュース定型文シリーズも今回で3回目となりました。特に今月は全人代・全国政協会議があり、中国の新期指導部が発足したこともあり、どのような政策を新たに打ち出すのか注目していたという人も多いでしょう。 彼らの政策がいいかどうかということは別にして、指導者が常々口にしている独特な政治用語をしっかり理解しておくことは中国のニュースを読み解き、理解し、さらには翻訳する上でとても必要なことだと感じています。 というわけで、今回もこのような思いから皆さんに中国政府
早いもので、私がnoteでの執筆を始めてから、2年と8カ月。今年の6月で3年を迎えることになります。 そもそもこのnoteを始めたきっかけは、中日の翻訳者の人たちの翻訳の質向上を願ってのことでした。 私は仕事柄、日常的に他の人の訳文に接する機会があるのですが、「何を言っているのか(いいたいのか)さっぱり分からない」日本語の訳文を目にする機会が最近多くなりました。 「こんな程度の訳ならグーグル先生にまかせればいいや」。中国語を全く知らない人がこのような感想を持ったならば、
前回のnoteの記事である「ニュース定型文は覚えてしまおう(政治用語解説編)」は一定の反響があり、私も少し驚いています。やはり、中国の政治に注目している人は語句の意味や由来についても深く知りたいとおもっているのだなと言うことを実感しました。 私自身も、ある政治用語を初めて用いる時はその由来まで最初に調べて、ある程度理解してから訳語を構築するようにしています。時間は限られているので詳しくは調べることはできませんが、このようなことをすることで、その語句の派生的な言葉が現れたとし
中国メディアのニュース翻訳を長い事やっているとつくづく思うことがあります。それは最近(時に習近平政権になってから)指導者の講話の難易度が日に日に上がっているということ。 特に現在の習近平政権になってから、その難易度が一段とアップしたような気がします。なにせ、辞書や教科書通りの言葉を話すのはまれ。文字原稿を見ても「何を言っているかさっぱり分からない」といったことが多々あります。 だからこそ、彼らが提起している理論、および彼らが話す言葉のバックグラウンドをしっかり理解しなけれ