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肩書きの訳し方について考える(外国の要人編)
肩書きについての解説。前回からだいぶ時間が開いてしまいました。いろいろあったので、すみません(汗)。気を取り直して。
前回は国内の要人の中国語表記について解説しました。
◇◇
では中国メディアの報道に出てくる外国の要人の肩書はどうでしょうか。
これについては私は訳出の際、中国語表記をそのまま書くのではなく、ちゃんと日本語に訳して表記するようにしています。もっと言えば、日本の新聞報道で使われている肩書(つまり記者ハンドブックで使われているような肩書)になるようにしています。
例えば「联合国秘书长古特雷斯」ならば「グテレス国連事務総長」になりますし、「美国总统拜登」は「バイデン米大統領」になりますね。
总统などは誰でも訳せると思うのですが、他の肩書はどうでしょうか。思いつくままに注意点などを解説していきます。
总统
といいながら、まずは总统から見ていきましょう。普通の国は「大統領」と訳されるこの肩書きですが、例外があります。それは台湾です。台湾の場合は普通に「総統」という肩書を当てます。
「台湾は国ではないじゃん」という人もいるかもしれませんが、そのあたりは政治的な問題に抵触するので、ここでは詳しくは触れませんが、「中華圏」と言うくくりから、そのまま表記すると覚えておきましょう。
总书记
トップが总书记と表記される国はそう多くはありません。一般的に政党のリーダーのことを指すからです。すなわち、「政党のリーダー=国家元首」の国の場合に限って、总书记という表現を目にすることが多いのではないでしょうか。
一般的には「総書記」と訳しますが、「総書記」と訳すのは北朝鮮と中国ぐらいですね。ベトナム共産党の「总书记」は「書記長」と訳します。
秘书长
英語ではSecretary-generalと訳されます。一般的には、国際機関、政府機関、政党、非政府機関(NPO)などさまざまな組織のトップの肩書きを指します。
ただSecretary-generalの原文から来ていますから、中国語の「秘书长」を日本語に訳す場合は、「事務局長」や「書記長」など、対象の組織ごとに肩書きの訳を変えるなりして工夫しなければなりません。
例えば先ほどの「联合国秘书长」の場合は「国連事務総長」なのですが、この「事務総長」と訳される肩書きは多くはありません。広く使われるものとしてはNATO(北大西洋条約機構)やOECD(経済協力開発機構)ぐらいでしょうか(共同年鑑参照)
ほかの国際機関で「秘书长」と来た場合は、大体が「事務局長」と訳す場合が多いですね。
例:东南亚国家联盟秘书长=東南アジア諸国連合(ASEAN)事務局長
总干事
これもよく使われる言葉です。英語に訳すと「Director General」となります。主に民間団体、協会や機関、公共機関、行政部門の最高責任者を指す肩書きになります。日本語で訳す場合は「幹事長」でしょうか。
ただこの「总干事」ですが、国連関連機関のトップにもこの肩書をよく見ます。中国語で「~组织」と名の付く組織のトップの肩書は大体「总干事」ですね。当然ながらこの場合は、「幹事長」の肩書を付けるのは不適切です。「事務局長」とすべきでしょう。
例:世界贸易组织总干事=世界貿易機関(WTO)事務局長
国际原子能机构总干事=国際原子力機関(IAEA)事務局長
主席
中国語における「主席」は、ある機関、委員会、国会・議会組織のトップのことを指します。このため一般的には「主席」=「議長」と訳される場合が多いのですが、外国の人物の肩書にこの「主席」が来た際には本当に「議長」と訳していいのかどうかをしっかり検討する必要があります。例えば委員会ならば委員長ですし、政党の場合は「党首」と訳すこともあります。
例:美国众议院外交委员会主席=米下院外交委員会委員長
◇◇
ここまで世界各地の組織や政府機関の肩書などを見てきましたが、ここからは米国の政府機関、組織の肩書に絞ってみていきましょう。なぜか、米国の政府機関や組織の中国語表記はなぜか特別だからです。
美联邦国会(议会)=米連邦議会
参议院=上院
众议院=下院
美国务院=米国務省
美国防部=米国防総省
どうでしょうか。一番最初「国務院」との文字を見たとき、そのまま「米国務院」とやってしまい、怒られたことがありました。国防「総」省もよく忘れがちなミスですよね。他の国では「国防省」なのに米国だけ「総」が入っているのはやはり罠だと言わざるを得ません(笑)
そして・・ここからは国務省の高官の肩書なのですが、これがかなり複雑。慣れないうちは表などをつくっておいて、パソコンの横において突き合わせるようにする方がいいと思います。では見て見ましょう。
国务卿 国務長官
常务副国务卿 国務副長官
副国务卿 国務次官
助理国务卿 国務次官補
常务助理国务卿帮办 筆頭国務次官補代理
助理国务卿帮办 国務次官補代理
これに加えて、国務次官以下ですと担当実務の肩書がつきます。
例:负责太平洋事务的助理国务卿=太平洋問題担当国務次官補
◇◇
いかがでしたでしょうか。中国メディアのニュース記事を見ていると、この他にもさまざまな肩書を目にすることができるでしょう(副外长=副外相)(外秘=外務次官)など。
重要なのはこれらの目にしたことのない肩書に出くわした場合、中国語と日本語の範囲内だけで解決を図ろうとしないことです。なるべく、英語で書かれた同じ記事をネットで探し出して確認することだと思っています。
肩書についてはこれからも機会を見つけて語っていきたいと思っています。
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