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中国語翻訳者・通訳者向けマガジン

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主に中国語上級者向けのマガジンです。
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2024年12月の記事一覧

今年も一年ありがとうございました

今年も残すところ2日となりました。 振り返ってみて、今年のnoteの記事は中身が薄いものが多かったなぁと反省しているところです。ただ一方で率直に言うならば、当noteの中国語の翻訳理論に関する解説も、ほぼ語りつくしたかなという感があります。現にここ数カ月は過去の記事をリメイクしたみたいな感じになってしまっていて、自分としては忸怩たる思いでもありました。 まぁ翻訳理論というのは、語っていけばいつかはネタも尽きるというわけで、頭に叩き込んだ後はひたすら実践あるのみです。実践の

「日本語らしい文」ってなんだろう

翻訳業界でよく言われること。それは「翻訳をやるなら母国語はしっかりと身につけておけ」というものです。 そして、その後に続くのは「だからこそ小説や論文など母国語の文章をよく読め」というアドバイスでしょう。翻訳を目指す皆さんなら、一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。 私は中日翻訳を20年以上続けていますが、このテーマに長年悩まされてきました。なぜなら私自身読書好きでも「本の虫」というわけでもなく、中二病の学生時代には「本を読め」という大人の言葉に反発して漫画ばかり

中日ニュース翻訳のステップアップで大切なもの

突然ですが、私は中国語→日本語のニュース翻訳を20年以上続けています。 20年も翻訳を続けていて大変なことも多かったのですが、日常的に向き合っていると中国語のニュースに潜むいろいろな法則が分かってきます。そしてこの法則、結構私の中でニュース翻訳処理に役立っているのです。 そこで今回は、ニュース翻訳をやっていて皆さんにも知ってほしいなぁと感じた法則、そして翻訳力を向上するに当たってどのあたりに留意してトレーニングしたらいいのかということをつらつら書いていこうかと思っています

肩書きの訳し方について考える(外国の要人編)

肩書きについての解説。前回からだいぶ時間が開いてしまいました。いろいろあったので、すみません(汗)。気を取り直して。 前回は国内の要人の中国語表記について解説しました。 ◇◇ では中国メディアの報道に出てくる外国の要人の肩書はどうでしょうか。 これについては私は訳出の際、中国語表記をそのまま書くのではなく、ちゃんと日本語に訳して表記するようにしています。もっと言えば、日本の新聞報道で使われている肩書(つまり記者ハンドブックで使われているような肩書)になるようにしていま

「不」と「没有」(再び)

ユニクロ社長である柳井さんの発言が、中国国内で波紋となっています。発端はBBCのインタビューでした。 実際に柳井さんのインタビュー動画があるのですが、記者はそのなかで日本語で、「今新疆から買った綿を使っているか」と質問しました。 これに対し柳井さんは同じく日本語で「新疆の綿は使って『いません』」と答えたのです。 この発言が歪曲して翻訳され、中国のネチズンの逆鱗に触れたのです。 当ノートは政治的な問題を議論する場ではないのでこの発言の是非は一旦横に置いておくとして、誤訳が