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中日ニュース翻訳のステップアップで大切なもの

突然ですが、私は中国語→日本語のニュース翻訳を20年以上続けています。

20年も翻訳を続けていて大変なことも多かったのですが、日常的に向き合っていると中国語のニュースに潜むいろいろな法則が分かってきます。そしてこの法則、結構私の中でニュース翻訳処理に役立っているのです。

そこで今回は、ニュース翻訳をやっていて皆さんにも知ってほしいなぁと感じた法則、そして翻訳力を向上するに当たってどのあたりに留意してトレーニングしたらいいのかということをつらつら書いていこうかと思っています。

まず中国語メディアのニュース翻訳をしていると、ある日突然気付くことがいくつかあります。

それは実は、中国メディア(大陸メディア)の表記スタイルは固定化されているということ。

例えば簡単に説明するならば「国家主席习近平」と最初に肩書を並べ、あとは「习近平」と呼び捨てにするなど・・。この辺りは単に表記(要するにミクロ)の問題ですよね。

この他に、文章のスタイル、指導者の発言のスタイル(要するにマクロの問題)なども一定の「くせ」みたいなものがあることが感覚で分かってきます。

実のところ、このように語句や文章、指導者や要人の発言のスタイルが統一されているのはやはり、中華人民共和国として中国共産党、中国政府が一括して言論統制を敷いており、新華社や人民日報を統一的な窓口として、国内メディアや地方政府サイトの一字一句、語句の言い回し、文章スタイルに至るまでほぼ全て指定しているからだと言えるでしょう。

これらの「スタイル」、最初はとまどったりするのですが、何回も翻訳処理して慣れてしまうと、だんだんと「自分のなりの翻訳処理の仕方」を身に付けることができます。

ということは言い換えるならば、これらの語句や言い回しをどのように訳せばいいかを把握しさえすれば、誰でも中国メディアのニュース記事をかなり楽かつスムーズに翻訳できるということになります。

中国国内メディアのこれらの語句、言い回し、文章スタイルの統一性というのは、(国内外の)会議記事、会見記事、外交部記者会見、共同声明など、ある一定の格式のある記事にはより顕著に表れます。

・・こう考えると「中日のニュース翻訳ってちょろいな」と思う人もいるかもしれません。

ただこれらの語句や言い回しはいつまでも同じ、というわけではありません。年間で何回か更新されるタイミングがあります。

例を挙げると毎年3月5日に国務院総理が発表する政府活動報告、年間に1回から2回のペースで行われる●中全会、4年に1回行われる第●回中国共産党大会、12月に行われる経済工作会議で、指導者が交代したり、交代しなくても中共中央総書記、国家主席、国務院総理が新たな考えや論断、政策を打ち出したりことがあります。このようなときには、新しい語句や言い回し、スタイルをその都度勉強し、更新する必要があるわけです。

◇◇

加えて、このセオリーが通用しない記事もあったりします。それは事故や事件などの社会ネタ(指導者の汚職記事除く)、論評記事、教育関係の記事あたりでしょうか。

だからこそ私は中国語→日本語の翻訳力の向上を目指している皆さんに言いたい。

中国メディアのニュース記事は、中国語→日本語の翻訳力向上を望んでいる学習者の皆さんにとってはこれ以上ないほど良質な練習台になり得ます。

中国語のニュース記事を使って翻訳力を身に付けたい人はまず、指導者の会議や会見記事の翻訳を数多くこなしましょう。これだけでもかなりの翻訳力のレベルアップにつながるはずです。

数をこなし、これらの記事の語句、言い回し、文章スタイルの法則を理解できたなら、次は社会ネタの記事、論評記事あたりを自分で訳してみて、実力をさらに付けることをおすすめします。

社会ネタは事故や事件など、「動作を描写する表現」が多々出てきます。「中国語の動作表現」というのは日本語にそのまま訳すと分かりにくく、グーグル翻訳っぽくなりがちです。

「いかに日本語らしく翻訳できるか」。これが事件・事故記事を翻訳する最大の理由の一つとなります。

そして、論評記事です。ここは「翻訳力の最後の砦」といっても過言ではないでしょう。

まず筆者が「何を言いたいのか」「論点はどこにあるのか」「どう論理展開しているのか」をしっかり理解・把握する必要があります。そのうえでその論理展開に寄せた訳語をしっかり充てる必要があります。

人民日報や環球時報、新華社の論評記事を「違和感なく」日本語にしっかり翻訳することができたなら、あなたの「翻訳力」は間違いないはずですし、プロでも十分通用するでしょう。

志のある人、ぜひその高みを目指して頑張ってみてください。

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明天会更美好
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