たまたまジャニーズだった
彼のイメージについて、多くの人はこう言う。「大人しくて、全然喋らない」「おじいちゃんみたい」。そういう人は彼について何も知らないんだな、と僕は思う。
とはいえ、最初は僕もそういうイメージを持っていた。ジャニーズ事務所にも、あまりかっこよくない人がいるんだなと思っていた。でもそんな印象はすぐに覆されることになる。
今から遡ること8年前。僕は中学3年だった。当時はAKB48が流行っていた。中3の男子にとって、異性のアイドルはどうしようもなく気になるもの。「あっちゃん可愛い」「俺はこじはる推し」なんて会話が、どこからともなく聞こえてきた。僕もご多分に漏れず、気になるメンバーがいた。シャイな故にそれを友達に言うことはなかったけれど。
しかし後に僕は、他のアイドルを好きになる。よりによって異性のアイドルではなく、同性のアイドルを好きになってしまう。
学校から帰宅したある日のこと。リビングに入ると、テレビから賑やかな音が流れている。コンサートのようだ。あぁまた嵐か。
その頃、親が嵐にハマり始めていた。嵐ファンの友人から、布教されたらしい。毎日家に帰ると、嵐のCDが流れていた。ついに映像の域まできたよ、と僕は半ば呆れた。いい歳してアイドルにハマるのかよ。
まぁ確かに曲はいい。テレビでもよく耳にする。バラエティ番組でもたまに嵐は見かける。別に嫌いじゃない。好きでもないけど。ただ自分とは一生無縁の世界だろう。男だからなぁ。
そんなことを思いながら、テレビをぼーっと眺めていた。どうやらソロ曲というものがあるようだ。メンバーが一人で歌っている。これはだれだろう。…かっこいいな。松潤…?櫻井…?ではない。ニノでもないし、相葉でもない。(当時は呼び捨てでした、すんません)。え…誰だ。残っているのは、リーダーの大野だけど、こんな感じだっけ。…むちゃくちゃかっこいい。ダンス上手いな、歌唱力もこんなあるんだ。別人みたいだ。テレビで見る地味なイメージとは、真逆の彼の姿がそこにあった。
ホントに大野か? 後で母に聞けば、確かに大野智のソロだった。それからしばらく、彼の姿が頭に残った。
それから、大野くんのファンになるのに時間はかからなかった。彼の歌声、踊っている姿、バラエティーでの姿、芸術センス、知れば知る程好きになっていく。
まさか自分がジャニーズを、同性のアイドルを好きになるとは。
なんで大野くんのことを好きになったのか。「ギャップ」というやつだ。普段はあまり喋らない。キラキラした世界の中で、地味とも言われかねない立ち居振る舞い。簡単に言うと、ジャニーズっぽくない。それなのに、一度ステージの上に立てば、だれよりもかっこいい。ともすれば鼻についてしまう、意識したかっこよさではなく、自然なかっこいよさ。それは誰にも真似できない姿。多くのファンは、このギャップという沼に落ちていく。一度入ったら最後、もう抜けられない。
そしてもうひとつ。国民的大アイドルにこんなこと言うのは憚れるけど、シンパシーを感じたからだ。僕も当時、学校ではあまり喋らないタイプだった。「大人しくて、全然喋らない」そういうイメージが蔓延してしまっていた。でもそれは、一つの側面にすぎない。自分だっていろんな顔があるのに、そうやって決めつけられてしまうのが心底嫌だった。
そんな自分が大野くんの存在を知った。ジャニーズにも、こんな人がいるだなんて知らなかった。強烈なシンパシーと、底知れないギャップに魅せられ、僕は彼のファンとなった。
それから8年も経ち、いまでは嵐どころか、ジャニーズ事務所も好きになってしまった。でも原点は揺るがない。すべての始まりは、大野くんのコンサートの姿を見てから。
もし彼がジャニーズ事務所に所属していなから、と考える。おそらくジャニーズを好きになってはいなかっただろう。そもそも、彼がジャニーズでないなら、大野智の存在を知る由などない。
好きになった人がたまたまジャニーズだった、ということかな。
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