《35》水業界の事例(WOTA㈱)~水道依存から循環へ~
業界別のSDGs事例紹介。
今回は水業界。
独自のデジタル技術で水処理にイノベーションを起こし、宇宙ステーションのような水再生処理の地上での安価な実現に向けて取り組まれているWOTA㈱です。
同社は「水を使っては捨てる水道依存社会(大規模集中型)から、小規模分散型水循環社会への移行を実現すること」を目的とし、2014年に設立。
「水処理の小型化と自動化」をコンセプトに、二つの主力製品を開発されています。
一つは災害時などに仮設シャワー施設として活用できる可搬型の水再生処理プラント「WOTA BOX」。
大規模な水処理施設の約10万分の1のサイズで容易に持ち運びができます。
もう一つは水道不要の水循環型手洗いスタンド「WOSH」。
どこにでも設置でき、特にコロナ禍では都市部の飲食店などの手洗いに活用されたようです。
この二つの製品を主力として、98%以上の水を再利用し、例えば砂漠でも移動体の中でも、水道がなくても水が使える未来を目指しています。
同社はこれまで熊本地震や西日本豪雨など、数々の災害時に入浴支援を行ってきた中で、
避難所で100人以上に対してシャワー提供を行った様子がSNSなどで話題となったことをきっかけに、全国展開への要望が急速に高まりました。
また、災害支援の担い手である自衛隊、消防隊、国際協力機構、自治体などへの聞き取り調査を実施して開発に反映。
18年には神奈川県と災害を含めた水に関する包括連携協定を締結しました。
今後の展開としては、水循環のコストを下げていき、日本の被災地はもちろんのこと、途上国への導入も視野に入れられています。
製品を量産すればするほどコストが下がり、世界中に行き渡ることが可能となるため、より多くの人に知って使ってもらうことが必要となります。
水問題には、世界規模の水不足や水汚染、そして従来型の水インフラに係る課題があり、いずれの課題も年々深刻化しています。
今でも40億人がトイレや公衆便所など基本的な衛生サービスを利用できず、毎日1000人近い子どもが予防可能な水と衛生関連の下痢症で命を落としています。
2050年までに世界人口の半分が水不足に陥るという予測もある中で、将来的には「水を持つ国、持たざる国」という分類で世界の国々が語られる日が来るかもしれません。
このような状況下で、今回ご紹介したWOTAのように水業界に新しい風を吹かせてくれる企業が今後も現れることを期待したいと思います。