ばさばさに乾いてゆく心を人のせいにするな
『自分の感受性くらい』の冒頭部分にある三行に、ハッと胸打たれる。茨木のり子の詩だ。人として生きるなら何を守るべきかを、鼓舞するような詩である。
ばさばさに乾いてゆく心を
人のせいにするな
みずから水やりを怠っておいて
最後は次のように終わる。
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
茨木のり子が七三歳で出版した詩集『 倚 りかからず』は異例のベストセラーになった。 また、女性として戦争への怒りをうたいあげた「わたしが一番きれいだったとき」は、多くの教科書に採りあげられた。その一部を紹介する。
わたしが一番きれいだったとき
まわりの人達がたくさん死んだ
工場で 海で 名もない島で
わたしはおしゃれのきっかけを落としてしまった
この詩はいつの時代になっても、読み継がれていくことだろう。
「わたしが一番きれいだったとき」で思い出すのは、セックス・アンド・ザ・シティのサマンサのセリフだ。
「あなたのことは愛してる。だけど、自分のことはもっと愛してる。」
彼女の名言は他にもある。
「男を変えようとすれば、相手は意固地になるだけ」
20年前の台詞には時代を超えた真実がある。茨木のり子とサマンサを並べるのはどうかと思う人もいるだろうけれど、「女のくせに」「女なんか」と言われた時代に、これだけのことをきちんと言えるのは全くもって痛快だ。
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