ため息に乾杯:映画『グッド・グリーフ』
都会に住む大人たちのセンチメンタルな感情を見事に描いた映画『グッド・グリーフ』がNetflixで公開されていた。舞台はロンドンとパリ。
BGMは、懐かしいニール・ヤングやエルトン・ジョン、それからジブリの映画の曲もあって、この映画をより叙情的に仕上げている。
ちょっとしたカメラアングルやモチーフのそれぞれが、アーツィで都会的。そして30代後半の大人の恋や悲しみをひっそりと映し出している。
主人公のマークが胸に秘めた痛みを打ち明けるシーンは、パリの The Musee de l'Orangerie, モネの水連の絵画が壁に飾られた部屋。愛する人を失ったモネの、その悲しみが溶けているように美しい絵画の前で、マークはこれまで硬く冷たくなっていた心の一部が温かく溶けて流動的になっていくのを感じる。
オリジナルの題名の『グッド・グリーフ』は、英語で「おやまぁ」「やれやれ」「なんてこった」という意味。あの村上春樹氏が使う「やれやれ」に近い。「グリーフ」は悲しみのことで、グッドグリーフは直訳だと「よい悲しみ」となるけれど、そこのところがこの映画ではダブルミーニングになっている。
邦題は『ため息に乾杯』。悪くない。台湾で訳されている『夫後之旅』よりもずっといい。
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