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総合英語Forest/Evergreen [書評]①:「第18章 名詞」

これまで授業資料の記事中でいろいろな教材をご紹介してきましたが、特に丁寧にご説明しておきたい英語学習参考書の書評を個別に記事にしていきます。

最初にご紹介するのは旧名「総合英語Forest」。今は「総合英語Evergreen」という書名になって中身も追加されています。学校英語における英文法参考書の最高峰と言っても過言ではない名著。私も個人的にForestの第6版と第7版を合わせて10年以上読み込んで学校英語のプラス面とマイナス面を考察する際の基準にしてきましたので、特別な思い入れがあります。先にForestの書評を書いて、後からEvergreenの情報を追加できればと考えています(名詞の章に追加はありませんでした)。

総合英語Evergreen
川崎芳人・久保田廣美・高田有現・高橋克美・土屋満明・Guy Fisher・山田光 (著),
墺タカユキ (編集), 鈴木希明 (編集)
株式会いいずな書店
ISBN-10 ‏ : ‎ 4864607214
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4864607216

内容が多くて1つの記事ではとても書ききれませんので、何回かに分けてご紹介させていただきます。第1回目は、私が特に重視している名詞を扱っている「第18章 名詞」のご紹介。以下にForest原文を引用・要約して、私からのコメントも入れていきます。著作権を考慮して必要以上の引用は避けておりますので、内容を詳しく知りたい方は原本を直接ご覧ください。

Part 1 これが基本:数えられるか、数えられないか
①英語の名詞は数を無視できない
 日本語と英語の名詞のもっとも目につく違いは「数えるかどうか」
 「数える」のかどうかを意識しなくてはどの名詞も使えない
 「数える」名詞の場合は、「単数」か「複数」かを意識しなくては使えない
②数えないといけない名詞・数えてはいけない名詞
 (a) 数えないと使えない
 (b) 数えてはいけない①:容器に入るなら数える
 (c) 数えてはいけない②:容器にも入らない
③具体的なまとまりをもつなら、数えることにする
 一般には「数えてはいけない」はずの名詞であっても、「具体的な1つの出来事」「具体的な1つのもの」などを表す場面では「数えないと使えない」名詞に変身することがある。ここでいう「具体的」とは「ほかと区別できる1つのまとまり」をもっているということだ。

  1.  ほぼ学校英語の定番説明とその言い換え。これを私なりに実用的に整理し直すと、「英語の名詞は単複の違いで意味が大きく変わる」(学校英語や学術英語では「単複」のことを「」と表現しがちですが、厳密には「」ではなく「単複」)。 「単数か複数かを意識」も実際その通りで、可算不可算単複の違いで意味が大きく変わる単語が数多く存在するのが英語名詞の特徴(単なる「単複の違い」ではなく「意味まで違う」)。一方で、日本語の名詞には単複の違いで意味が大きく変わる単語は存在しません(本当に「単複の違い」だけ)。この点が、日本人が英語を学習する際に苦労する大きな原因の一つ。「見た目の単複の違い」に騙されてはいけません。

  2.  可算・不可算を定番説明「数えられる・数えられない」ではなく「数えないといけない・数えてはいけない」と言い換えてあり、その点で多少は工夫が見られますが、結局は定番説明と大差ない気もします。実は学術英語でも可算・不可算の区別の基準が単に「数える・数えない」でないことは常識で、専門的には「境界性」等と表現される概念(著者の皆さんもそのことは十分にご存知のはずです)。それを一般向けに「まとまり」と言い換えるのもほぼ定番。残念ながら、それでも例外がまだ数多く存在するので、結局は辞書を引いて調べるしかありません(可算不可算に関しては、Michael Swan先生も "Practical English Usage [4th ed]"で"to know exactly how a particular noun can be used, it is necessary to check in a good dictionary."と書いておられますが、私も全く同感で、簡単に法則化して説明できるようなものではありません)。

  3. 容器の議論は、英語名詞の数え方形・容器・単位という定番説明の一部(以下の「❸物質名詞の用法」を参照)

Part 2 理解する
1 名詞の種類
 ❶名詞には数えられる名詞(可算名詞)と数えられない名詞(不可算名詞)があり、どちらであるかによって文の中での使われ方が違ってくる
 注意!:意味によって数えられるかどうかが変わる名詞
 ❷名詞の種類
  数えられる名詞(C):普通名詞、集合名詞
  数えられない名詞(U):物質名詞、抽象名詞、固有名詞
2 名詞の用法
 ❶普通名詞の用法:数えられる名詞
 ❷集合名詞の用法:集合体を指す名詞(ひとまとまり、構成員)
  複数形がない集合名詞
  PLUS101:注意すべき集合名詞:furniture
 ❸物質名詞の用法:「金属」「液体・気体」「材料」など、「物質」を表す名詞
  決まった形をもたないので数えることができない  
  PLUS102:形・容器・単位などを使った物質名詞の数え方
 ❹抽象名詞の用法:物事の性質や状態などを表す名詞
  一定の形がないので数えることはできない
 ❺固有名詞の用法:人や土地・建物の名前などを表す名詞
  大文字で書き始め、原則として複数形にはしない
  〈the+固有名詞〉

  1. いわゆる「名詞の5分類」ですが、単語の意味が分かっていることが前提の議論。英語学習者にとって、逆に意味が分からない単語をどう解読するか、が実用的には重要。ただ、そうなると文法書というより辞書の出番。

  2. ここでの固有名詞の扱いも、残念ながら説明不足。「第19章 冠詞」でも少し扱われていますが、「固有名詞と定冠詞」はセットで扱われるべき一体不可分の概念(今後の記事でご説明していけたらと思っています)。

3 注意すべき名詞の用法
 ❶数えられない名詞を普通名詞として使う
  物質名詞を普通名詞として使う
  抽象名詞を普通名詞として使う
  a/an+固有名詞
 ❷使い分けに注意すべき名詞

  1. 「物質名詞・抽象名詞を普通名詞として使う」は、要は「可算名詞の不可算名詞化」

  2. 逆に「不可算名詞の可算化」も同じように発生しますが、その点は説明不足

  3. 「固有名詞の普通名詞化」は、全く次元が異なる現象(学校英語のレベルでは包括的な説明ができないので、別教材の書評で改めて扱う予定)

  4. 「使い分けに注意すべき名詞」も、文法書というより辞書で扱うべき内容

4 名詞の複数形
 ❶規則変化
 ❷不規則変化
 ❸複数形の意味と用法
  複数形の意味に注意:英語には複数形になると、別の意味をもつものがある
  ●必ず複数形で用いられる名詞:複数扱い
  ●学問を表す名詞:複数形で単数扱い
  ●金額・距離・時間のまとまり:単数扱い
  ●複数形の名詞を含む慣用表現
5 所有を表す名詞の形
 ❶所有格の形
  「AのB」というように所有を表す時の名詞の形には、A's B, B of Aという 2つの形がある
 ❷B of A の形を用いて所有を表す場合

  1. 「複数形の規則変化・不規則変化」については、特に追加することはありません

  2. 「複数形の意味と用法」は「複数形名詞の単数呼応」問題が含まれており、もっと丁寧に扱われるべき重要な項目。俯瞰的に見れば、複雑すぎて学校英語では敬遠されがちな項目の代表格とも言えます。これはEvergreen/Forestの問題というよりも説明を簡素化(省略と言うべきかも)している学校英語全般が抱える問題。

  3. 所有格は今回パス(代名詞と一緒に扱うべき項目)

限定詞とは

  1. 私の知る限り、学校英語の参考書としては珍しく限定詞を正面から取り上げており、こういう点はさすがEvergreen/Forestだと思います。

  2. 一方で、実用的に見ると説明不足なのは仕方のないところ。限定詞については、実際の英語経験を積んでから改めて学び直すことで新たな発見があるはず。不定冠詞や冠詞の理解にも苦労するような中高生が限定詞をちゃんと理解するのは相当難しいと思います(そう言う意味では、学校英語で取り扱いが少ない点も納得できます)。

今回の書評は以上です。いかがでしたか?面白いと思った方は、コメントしていただけると、今後の励みになります。

こちらは、総合英語Evergreen/Forest「冠詞」章の書評

❶本文中でもご紹介したMichael Swan先生の文法事典"Practical English Usage [4th ed]"。英語が好きなら読んでおくべき名著。

❷冠詞という単一トピックに関するモノグラフとして、以下の書籍もご紹介しておきます。学校英語の参考書では説明不足で曖昧になっている点を、実例を多く挙げてしっかりと補っている良書です。

以下をクリックして関連記事もご覧ください。学校英語では説明が足りない点を補ってもらうための教材です。


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