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Siena
夫にとっては母親代わり、私にとっては欧州の母である夫の遠縁の叔母が住むイタリアへ8日間ほど行ってきました。3月末のことです。叔母が住むのはフィレンツェですが、今回はその前にシエナに滞在しました。今日はその時撮影した写真を何件か選んで投稿しようと思います。
ギムナジウムの旅行で初めてイタリアに行って以来その魅力に取り憑かれ、その後何十年間にもわたり数えきれないほどイタリアを訪れている夫に「イタリアで最も美しい街」と言わせるシエナ。「シエナ」というその街の名からして、私には美しく響きます。私の生半可な知識を元にこの街に関してゴチャゴチャ言うよりも、まずは写真を見ていただくのが一番良いのではないかと思います。
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シエナ大学の校舎は、その歴史を13世紀にまで遡る古い教会の横にあります。多分教会附属施設を転用したものだと思います。その教会から街の中心へと続く道の両側には、気軽に軽食をつまみコーヒーを飲める店が並んでいて、学生がその店の前で春の日差しをタップリ浴びながら楽しそうにお喋りしていました。
かつて、須賀敦子はゆっくり座ってコーヒーを飲める場所をミラノ(イタリア?)で探すのは難しいと何処かに書いていました。しかし、秋に行ったヴィチェンツァといい、今回行ったシエナといい、ゆっくり座ってコーヒーを飲める店は意外とあることに気付きました。これは各都市に特有の傾向なのでしょうか、それとも須賀敦子の時代からイタリアが変わったということなのでしょうか。
…ここまで考えて、須賀敦子がイタリアにいたのは既に半世紀も前のことなのだと気付き、若干驚きました。それだけ彼女の文章が今もなお生き生きしており、時を経ても古くさくならないということなのかもしれません。
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シエナには大型ホテルがほとんどありません。私たちは数百年前の建物を綺麗に改装したB&Bに宿泊しました(そもそもシエナの市壁内の建物はほとんど数百年前の建物に違いないのですが)。大型ホテルが少ないおかげで、日中は芋の子を洗うような旧市街中心部も、日が傾く頃には人影が少なくなります。ここからようやく地元の人たちの時間が始まるようです。日中とは明らかに異なる様相の人々がポツリポツリと姿を表すさまを道のかたわらで眺めるのは、なかなか楽しい時間でした。朝晩の顔と昼の顔、シエナは2つの異なる顔を持っている街だと思いました。
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シエナでは、素晴らしい料理を出すオステリアを発見して、滞在中は毎日そこで昼食を食べました。このオステリア、なんと地下にはエトルリア時代の墓があります。今でも当時のまま残っていて、階段で地下に降りて見学することもできます。「墓の上で昼食って」と最初はビミョウな気分にもなりましたが、数百年前の建物がほぼ丸ごと残っており、今もそこに人々が暮らしているのですから、このシエナにあっては特にどうということもないのでしょう。そう思ったら、全く気にならなくなりました。実際、日本では不動産などの心理的瑕疵が非常にネガティブに受け取られますが、シエナでそんなことを言っていたら、何処にも住むことが出来なくなりそうです。何度も戦禍や疫病を乗り越えてきたこの街にあって、事故死や不審死を免れた建物を探す方が難しいのではないでしょうか。「心理的瑕疵とは、まさしく心理のみに関わる問題なのかもしれない」などと思った次第です。なお、昼食は何度も「美味しい!」と声をあげてしまうほど美味でした。
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イタリアに出かける少し前までは毎日試験勉強に追われていたので、ほとんど写真を撮る時間がありませんでした。その反動か、今回イタリアではものすごく沢山の写真を撮りました。実はまだ半分ほどしか現像・スキャンしていないので、今後もし良く撮れた写真が現れたら、随時ここに追加していこうと思います(その時に思いついた文章も追加していくかもしれません)。
なお、ここに投稿した写真は全てRolleiflex 2.8F PlanarとIlford HP5 Plusを使用して撮影しました。