コロナ時代を予見していた?!科学史家の金森修先生の知られざる名著!
金森修という科学史の先生の書く本が、昔から好きです。なにせ私の人生に決定的な影響を与えてくれたフランスの哲学者、ガストン・バシュラールの素晴らしい評伝を書いてくれた人です。恩義があります。
(※いまだに日本人が書いたバシュラール哲学の解説本としてはこれが最高峰ではないでしょうか?↓)
この金森修先生が、科学史とは直接関係ない、しかし実に感慨深い本を書いていたことをこのたび初めて知りました。
『病魔という悪の物語』。凄く考えさせられた本です。私も初めて知った事件ですが、二十世紀初頭のアメリカで、腸チフス菌を保持している(しかし本人はいたって元気、つまり健康保菌体ですね)とされたメアリー・マローンという女性が、「公衆衛生のため」という理由で逮捕され、人生の半分以上を、隔離施設に閉じ込められて暮らすことになった、という史実を取り上げています。
いかに危険な病原体を保菌しているからといって、終身犯のような目に、なぜ彼女を合わせなければならないのか。いやそもそも、健康でしかもなんの犯罪歴もない若い女性にある日このようなカタチで権力が介入するのは正しいのか?そもそも「伝染病原菌をもっている」というだけで、こんなにも世間からハジキモノにされなければならないのか?
いろんな疑問を感じさせるこの本、コロナ時代よりずいぶん前に書かれたものですが、まるでコロナ禍の状況での問題を多々先取りしているようなところがある。いい本を見つけた。これはまさに、隠れた名著と思います!