【推薦図書】私たちには死んだ人のことを勝手に「回想」する権利などあるのか
ゲルショム・ショーレムによる、ベンヤミンについての回想録、『わが友ベンヤミン』を古本で入手しましたが、なんというか、予想以上に、読んで得るものが大きい本でした。
単なる故人の回想録には収まらない。
なにせ、まえがきにおいて、そもそも「他人の回想録を記すものは、いかなる権利をもって、報告し、釈義し、解説することができるのか?」という、「ある人間が自分の視点から故人についてあれこれ回想することの正当性」を、厳しく問うところから始まるのだから!
ショーレムにせよ、ベンヤミンにせよ、この頃のドイツの(ユダヤ系の)思想家たちが、本を書くときにもっていた、この燃えるような「客観性への意志」は、ぜひぜひ、なんとか、継承したい志と思う。
「自分の主観で、自分の感想を、自分の意見として発言することがよいのだ」という風潮の強めな昨今にあっては、なおさら憧れちゃう。
親友の回顧録を書くにあたっても「私に正しく親友の人柄を回想できる権利と力があるのかどうか」と悩むマジメさは、考えれば考えるほど、凄いことです。こういう感動的なまでにマジメな思想家たちが、ナチスに破壊される直前のベルリンやミュンヘンには生きていた。