「絶対作られない映画」を空想企画してみた:『大長編ドラえもん、のび太のギリシャ悲劇』
ストーリー
夏休み研究課題で「古代ギリシャ」を調べることになったのび太。
図書館で見つけたソポクレスやアイスキュロスらの「古代ギリシャ悲劇作家」に興味を持ち、これをテーマにしようと思いつく。
そんなのび太を手伝うため、ドラえもんは未来から秘密道具を取り寄せる。それらは「まさにギリシャ悲劇の主人公のような体験が降りかかる」という触れ込みのものだった。
ギリシャ悲劇とはどんなものかもよく知らないまま、それらの道具に手を出してしまったのび太。
まもなく、のび太(野比家)と、ジャイアン(剛田家)スネ夫(骨川家)には先祖に深い因縁があることがわかり、そのことが秘密道具のために親たちにバレてしまう。
知らないほうがみんなが幸せだった恐ろしい真実を突きつけられ、共同体は崩壊に向かい、のび太とジャイアンとスネ夫は「僕らが一緒にいると大人たちがどんどん仲違いしてしまう」と、泣く泣く友達関係を解消し、互いに違う学校に転校することを選ぶ。
だが悲劇の連鎖は終わらない。さらに恐ろしい真実が明らかになる。
実は、源しずかは、のび太のママがしずかの父と不倫して産んだ子だった。のび太としずかは異父兄妹だったのだ!
そして野比家に伝わる予言によると、
野比家の誰かが近親相姦を犯した時、そのあとの子孫は呪われ、貧困に苦しむだろう
とのこと。
のび太の子孫(セワシたち)が不幸な家系なのは、のび太がダメ人間だったからではなく、のび太がしずかと近親相姦関係にあったが故の、一族の呪いのせいだったのだ!
そのことを知ってしまったのび太は、しずかと結婚することを諦め、このことを今まで教えてくれなかったパパとママにも、最後には赦しを与える。
そして「真実とはなんと過酷なものよ」と嘆きながら、「このような目など、見えぬほうがマシだ!」と自らの目を潰し、血の涙を流す盲目のさすらい人となった。
「もはや望みは、一人で静かに死ねる場所を探すのみ」と、荒野に旅に出ようとするのび太。
そこに、そっとドラえもんが寄り添う。
「のび太くん、君が安心して死ねる場所を探すのを、僕も手伝うよ」
「ありがとう、ドラえもん」
ドラえもんに手を引かれながら、のび太は血の涙を流しつつ、荒野に踏み出していくのだった。
その旅立ちを、こっそりと見守る源しずかは、顔を覆って一人、むせび泣いた。
というのも、のび太には教えていなかったが、実は、しずかはすでにのび太の子供を腹に宿していたのである。
のび太が自らを犠牲にしても、野比一族にかけられた呪いは解けることはなく、結局はのび太の子孫たちはまたドラえもんを未来から送り込んでくるのだろう。
つまり、こうして、のび太の悲劇は永遠回帰する運命なのだ。
あまりの過酷な運命に、しずかは大地を叩いて嘆き、「オリュンポスの神々よ?なぜ?なぜ?」と問いかけるが、神々は沈黙したままであった。
登場するひみつ道具
「スフィンクスのクイズボックス」スフィンクスのイラストが描かれた、なぞなぞを出してくるグッズ。だがこれが出してくるなぞなぞは、実は使用者にとって知らないほうがマシだった過去の恐ろしい真実の伏線となっているのだった。
「イオカステの針」痛くなく目玉を潰すことができるひみつ道具。