源氏物語「桐壺」あらすじ&要点紹介!
平安時代の一大長編小説『源氏物語』。その記念すべき第1巻め「桐壺」といえば、皆さん授業で読んだ(読まされた?)記憶がおありかと思います。…しかし、(なんかピンと来なかった)方が多かったのではないでしょうか。実はこの「桐壺」の巻、平安人にはハラハラドキドキのお話だったのですが、現代人にはとても理解しにくいのです。でもとてもスリリングな巻なので、その面白さ、ぜひ味わっていただきたい!という訳で、この記事では、「桐壺」のカンどころをご紹介します♪
当記事は、YouTube動画「砂崎良の平安チャンネル」の内容を、スクショと文章でまとめたテキスト版です。動画で見たい方はYouTubeを、文で読みたい方は当記事をどうぞ♪
前置き:そもそも「桐壺」巻とは
「桐壺(きりつぼ)」の巻とは、『源氏物語』全54巻の最初の1巻です。
いづれの御時にか。女御・更衣 あまた さぶらひ給ひけるなかに…
という出だし文で有名です。
…実のところ、『源氏物語』というと「この1文を暗記させられた!」という、授業の記憶しかない方、多いのでは⁈ 確かに名文で、突き詰めれば突き詰めるほど奥の深いテキストなので、義務教育で覚えてソンはないとは思うのですが、…超ドラマティックな「桐壺」巻に触れておいて、「出だしの記憶」しか残らないのは、超ザンネン! という訳で、
まず、「桐壺」巻だけのあらすじをご紹介します!(『源氏物語』全体のストーリーといえば、「光源氏の恋のお話?」等とご存じの方、多いと思います。でも授業で習った「桐壺」巻の筋書きは、意外と知らない方が多いのでは…^^;)
本題:「桐壺」巻、単体のあらすじは、コレ!
出だしは、主人公・光が生まれる前、両親のお話から
とある天皇が、世を治めてらした頃のお話です。
天皇は、おおぜいいる妃たちの中で、「桐壺更衣」という女性に特に惹かれていました。二人の間には、玉のような皇子が誕生します。本作の主人公、のちに光源氏と呼ばれる人です。
両親の恋は、世間が許さぬものだった
身分の高くない桐壺更衣を特に愛することは、宮廷の秩序を乱す行いでした。右大臣派の妃(身分高い妃)が先頭に立ち、桐壺更衣へのバッシングが激化します。桐壺更衣はしだいに病弱になり、3歳の光を遺して亡くなりました。
母の早逝。そして母に似た貴婦人、登場
愛する桐壺更衣を亡くした天皇は悲嘆に暮れますが、何年か経ったのち、桐壺更衣に似た女性・藤壺と出会います。藤壺は、身分がとても高く、天皇と【釣り合う】立場でした。藤壺が妃になり、天皇の愛を最も得るようになったことで、世論は歓迎、宮廷に平穏が戻ってきました。
落ち着く宮廷。しかし光少年の心は…
藤壺は、天皇とは「年の差婚」で、光より5歳年上なだけという、とても若い妃でした。「藤壺さまは、光さまの亡き母上にそっくり」と聞いた光は、藤壺を母のように姉のように慕います。(この慕情は、のちに恋心へと育っていってしまいます…)。
後見人(生母)のない光は、立場が弱い…政敵もいる
一方、光の仇敵である右大臣派の妃は、新たにライバルとなった藤壺を、当然敵視していました。そのため、藤壺になつく光少年を、いっそう憎むようになります。彼女の性格・権力を懸念した天皇は、光を皇族から外し、臣下へ降ろすことにしました。
光少年、皇族から臣下へ降格
(なまじ皇位継承権があると、政争に巻き込まれる…)という、父であり天皇である人らしい配慮ですが、平安時代に皇子として生まれたなら、究極の出世は「天皇になること」です。光は人生の滑り出しで、この出世レースから叩き落とされてしまったのです。しかも皇族でさえいられず、臣下身分へ降格。
「最も優れた資質を持つ皇子」と言われながら、この運命です。光少年、このあとどうなる?!
も一度おさらい:「桐壺」巻のあらすじ!
天皇が、桐壺更衣という、身分低い妃を熱愛しました。
天皇と桐壺更衣の間には、本作の主人公・光が誕生しました。
他の妃らにいじめられた桐壺更衣は、病んで亡くなってしまいました。
数年後、桐壺更衣に似た女性・藤壺が妃になり、光と絆を育むように。
光は皇太子になれず皇族でもいられず、臣下に降りることとなりました。
2021/12/3加筆:古文の授業で習うのは、たいてい 1. と 2. の部分です。
「桐壺」巻、要するに…?
主人公の人生、挫折&波乱のスタート!
「桐壺」巻のポイントは、
・光という、「誰が見ても天皇に最もふさわしい!」皇子が、
・母の身分低さ、その早死になど不運に見舞われ、
・藤壺という運命の女性とは、縁が食い違って結婚できず、
・皇族の地位も藤壺も失って、人生を臣下としてスタートすることに
という、【主人公が、のっけから敗北した】という点にあります。
そして実は、コレ、光ひとりのことではなく。光の一族、3代にわたるインネンだったのです!
キーワードは「あと一歩」
光一族の敗北は、「あと一歩」およばなかったせい
光とその一族は、なんと祖父の代から、あと一歩でチャンスを逃し、敗北し続けてきたのです。
今、光というすばらしい人材を得て、やっと日の目を見るか⁈と思いきや、またまた「あと一歩」で敗れてしまった…でも光ほどの逸材、なんとか挽回してくれるのでは⁈と、読者の期待感を煽っておいて、「桐壺」巻はしめじめと終わります。
続きは次回に…
本日は、ここまでに致します。次の記事で、
光の一族を苦しめた「あと一歩」とは何だったのか?
を、お話ししたいと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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