昔好きだった児童書で読書感想文書いてみた

 前に読書感想文についてのバズがあったのを覚えていますか?

 因みに私は大嫌いでした。基本読書する時に感情移入はしてもそこで自分と関連づかせていいこと書くのがどうしてもできなくて・・・。ただ、大人になって、好きな本のどういうところが好きか、言語化するのってとても楽しいのに気づいたんですよね。そこで、今回は大人の読書感想文として当時好きだった児童書でnoteを書きたいと思います。

目次

選んだ本について

 今回、私が感想を書きたい本は『星空から来た犬』 作ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳原島文世 早川書房 2004年初版です。まず、この作品を選んだ理由について2つ述べます。

 一つは、先だって、著者であるダイアナ・ウィン・ジョーンズのインタビューや講演録を読んで、彼女の作品が再燃しているからです。私は基本作者で本を選ばないのですが、彼女の作品は何回も読み直していました。その中でもこの『星空から来た犬』は本当に何回も読んだ覚えがあります。なので、その好きだった理由をもう少し詳しく掘り下げていきます。

 もう一つは、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品はかなり神話や伝統を大切にしていると感じたからです。彼女の作品は本当に想像を超えるようなエキセントリックな部分もありますが、マザーグースが随所に出てくる『バビロンまでは何マイル』やタム・リンの伝説をモチーフにした『9年目の魔法』など、昔から私たちに根付いているものを大事にしていると私は思っています。私がダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品の作品に惹かれたのも、エンターテイメント性と昔からの神話や伝説が結びついていることが大きいと思っています。そこで、キャンベルの『千の顔を持つ英雄』の分析を取り入れつつ作品の魅力を語りたいと思います。

『星空から来た犬』が好きな理由

 幼いころ、私にも世間にも海外ファンタジーブームが来ていました。私は主に英米のファンタジー、魔法、冒険,と付く本をひたすら読んでいました。そこでダイアナ・ウィン・ジョーンズを知りました。大魔法使いクレストマンシーやハウルといった魔法や冒険が詰まったシリーズの数々に魅了されて、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品を図書館に行く度に借りていました。ただ、この『星空から来た犬』という本は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品の中でも直接魔法が出てこないかなり珍しい作品です。私が最初読んだ時にはSFかと思うぐらいでした。だから逆に印象に残っていたのかもしれません。

 どこが好きなのか考えてみると、主人公であるシリウスとキャスリーンが自分ではままならない状況に置かれている描写への共感があったと思います。子どもの頃はどうしてもだとは思うのですが、世界が窮屈に感じることがありました。物理的に行ける範囲が狭いことだったり、学校に行かなければならないというような精神的な負担だったり、とにかく窮屈だったなあと思います。それが主人公二人のどうにかしたいけど自分だけではどうにもならない、もどかしい、といった感情に重なっていた気がします。

 また、だからこそ二人が虐待されていた家から脱出した場面の解放感もとても印象的なのかなと思います。大人になって読み返してもやっぱり自由にならないのはつらいよね、という思いはどこかにあって、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品はそれに寄り添ってくれる作品や描写が優しいなと思いました。

神話分析に基づいての考察

 一応大人になって、文学を一応かじって卒業した身として、最近読んだキャンベルの『千の顔を持つ英雄』をなんとなく重ねながら本作品を考察したいと思います。

 『星空から来た犬』の作品構造について。シリウスを主体とすると作品構造はかなりわかりやすいです。

 星々の世界からの追放→(天空から地球へと境界を超える)→犬の体で生まれる→ゾイの探索→地下での戦い→ゾイを獲得し星々の世界へ戻る

 上のように考えると、シリウスは天空から地球、地下をへて最後天空へと戻るというキャンベルの分析した神話の円環構造と同じ動きをしています。そして、地上における犬の体が地下(冥界)へ赴く→死を経験する→英雄(シリウス)の復活という流れも神話的だなあと改めて感じました。

 この作品で特異な点は、シリウスが霊的な世界から境界を越え、私たちが日常と感じる世界に来ている点かと思います。基本的な神話では、英雄は日常世界から異世界へと赴くのですが、『星空から来た犬』では逆転しています。

 この点によって、私たちはシリウスの経験を私たちの日常生活と重ねてコミカルに思いつつ、一方で新しい視点から自分たちの日常をとらえなおすことができるのではないかと思いました。

 あとは半分遊びのようなものですが、ウェールズのワイルドハント、『マビノギオン』、について。

 本文でシリウスの容姿は『マビノギオン』に登場する異界(冥界)の王の猟犬に例えられ、実際にそれがラストの狩の場面に表れています。この『マビノギオン』特に『ダヴェドの大公プイス』の物語ですが、主人公のプイスが異界の王と外見を取り換えて1年間異界を治め、もとの外見に戻って宮廷に復帰する物語です。なんとなくですが本作の基盤になっていそうだなあと感じました。

まとめ

 読み返してみて、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品、特に『星空から来た犬』は私たちの日々の窮屈さとか日常に寄り添って、その上でわくわくをくれる作品だなあと改めて思いました。。あと、改めて好きな本について文を書くのは楽しいなと感じました。これからもうちょい色々書きたいなあ。多分次は『ファンタスティック・ビースト』関連になりそうですが。


あと最後に。8月半ばにきちんと読書感想文を書き終えたのは初めてです。

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