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台湾2018 夏の旅 3

 台湾への旅はお遍路に近い。
 愛犬を喪失した心傷を癒したい。
 ひび割れが顕示化してきた家庭から、目を逸らしたい。
 その解消には時間が必要だけど、如何にそれを短縮できるかが問われていた。
 まずは自分自身が越えるべき壁を見つける。辛いとき、苦しいときは、独りで壁を直視して挑まないといけない。
 そんな習慣が私にはある。

 台湾を選んだのは近場であるからだ。
 かつてのような長期間のバックパッカーの旅はできない。
 目線を変えれば、着眼点が変われば、何かが掴めるかもしれない。
 そう信じて異国に降り立った。
 ガイドブックは出発前に購入した薄っぺらな一冊。機内でそれをめくって回るルートを考えた程度の予備知識しかない。

 朝市で甘豆花とマンゴーを買ってきて朝食にした。
 甘豆花とは豆腐に大豆や落花生をいれたシロップをかけたもので、あっさりとしているけど、量が多すぎて半分した頂けない。
 2日目の行先は九份にした。
 ジブリ映画の『千と千尋の神隠し』でモデルとされた場所という。しかも夜景が素晴らしい、と紹介されている。
 観光バスで向かうことにするが、帰りはかなりの渋滞になるらしい。また鉄道で帰宅するには、小一時間も山道を下る必要があるという。
 メンタルも弱っているので、日中で日帰りすることにした。

 狭い商店街に観光客がごったがえしている。通りの左右から香辛料の香がする。臭豆腐というのが名物らしいけど、どうしてもあの臭いには馴染めなかった。
 この人込みを構わずスクーターが分け入って侵入するのには、アジアに来たなあという実感があった。

 この町はかつては金鉱山として栄えていた。
 明治の終焉の頃であり、そのときに建設された街区は、閉山後に無秩序に増築が繰り返されている。何条かの直登の石段があり、そこを観光客が鈴なりになって上り下りをしている。
 両脇にもレトロな木造街区が居並んでいる。
 この街並みは長崎の下町を思わせる。今では高齢化で人通りはめっきりと少なくなったが、石段の両脇には小さな商店が肩を寄せ合っていた。
 

 台湾らしいランチを取ることにした。
 魯肉飯と天津のセットでたしか800円程度ではなかったか。
 これでも観光地特価で割高なものであり、台北の屋台では魯肉飯単品では200円程度だったかと記憶している。
 量も程ほどであって、ほっとした。
 カキ氷だけでもうお腹一杯になってしまう。
 年齢とともに胃が小さくなってしまって、とても悔しいことだが。

阿妹茶楼、この外観は確かにイメージが似ている

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