こむら返りを科学する①原因とメカニズム
こんにちは!
冬になって夜中に足が攣って起きてしまう方も多いのではないでしょうか?
今回は“足がつる”とか”こむら返り”といわれる「有痛性筋攣縮」についてお話ししていきたいと思います。
脱水や電解質不足が原因で起こるとされる説が根強く残る一方、実は明確にはその原因が明らかにはなっていません。
近年の研究では、“こむら返り”は、筋肉そのものではなく運動神経系の器官に起因することが多く示されています。
医療業界では、その運動神経に起因するとの認識が一般的になっています。
今回は、“こむら返り”の原因とされる運動神経系の話を取り上げたいと思います。
「筋紡錘」と「ゴルジ腱器官」と“こむら返り”
人体の筋肉は脳からの指令のみで動いているのではなく、様々な反射に伴う緊張や弛緩によって円滑に運動しています。
反射は、筋紡錘とゴルジ腱器官が深く関わっています。
【筋伸展反射】
筋肉には「筋紡錘」と呼ばれる感覚器官があります。
筋肉が引き伸ばされると筋紡錘が感知し、その信号が1a繊維を介して脊髄の前角細胞に送られ、さらに運動神経を介してγ運動ニューロンを増強し、筋肉が収縮します。
この反応を筋伸展反射といいます。
【ゴルジ腱反射】
筋線維の束と腱の移行部に「ゴルジ腱器官(腱紡錘)」という感覚器官があります。
腱が強く引っ張られる感覚をゴルジ腱器官が察知し、1b線維を通して中枢に伝達。
この情報伝達により、α運動ニューロンを抑制し、主動筋(動かそうとする筋肉)が弛緩します。
同時に、主動筋と反対の動きをする拮抗筋が緊張します。
筋肉の損傷を防ぐこの反応を、ゴルジ腱反射(1b抑制・自己抑制)といいます。
こむら返りは、センサーの役割を果たす「筋紡錘」と「ゴルジ腱器官」がトラブルを起こした結果、発症するものと考えられます。
過酷な運動などによって「筋紡錘」の活動性が増した結果、γ運動ニューロンが増強され主動筋はより強く緊張します。
この時、「ゴルジ腱器官」が正常に機能すれば、「ゴルジ腱反射」により過緊張にある主動筋は弛緩し、保護的に働きます。
ところが疲労によって「ゴルジ腱器官」の機能が低下、本来であれば弛緩するはずの主動筋は過緊張の状態に。
これが、激しいスポーツに伴う“こむら返り”発症の一因と考えられています。
高齢者が“こむら返り”になるのはなぜ?
試合や練習中、運動後に“こむら返り”になる理由は、前述でご理解いただけたと思います。
けれど夜に寝ている間、どの年齢でも“こむら返り”は発症します。中でも運動習慣のない高齢者にも多く見られます。
非運動系の場面における“こむら返り”は下肢の筋肉への運動ニューロンの消失が関与している可能性が高いようです。
高齢者では、運動ニューロンの消失がピーク時の約25%あり、上肢よりも下肢の萎縮が強いことを示唆する研究報告があります。
運動神経系のトラブルにより発症する“こむら返り”。
では一体どうすれば防げるか。
諸説ある中での私の考えについて、次回、話したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました^_^
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