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全国自然博物館の旅【20】ミュージアムパーク茨城県立自然博物館

都道府県魅力度ランキングが何を基準に決められているのかはわかりませんが、茨城県はもっと上位になるべきだと思います。少なくとも、自然博物館のファンはみんなそう考えているはずです。
茨城県内には、国内でも有数の大型自然博物館が立っています。「年間来館者40万人に及ぶスーパー博物館がある」と聞いたら、茨城県の魅力をもっと知りたくなりますよね?


東京の博物館にも負けない? 茨城県の底力を見よ!

今回訪れるのは、国内有数の大型自然博物館。質も量もすごすぎる学術施設であり、ガチの生き物好きの人が集中して観覧すれば、3時間以上かかるかもしれません。迫力と資料の豊富さでは、東京の大型博物館に勝っているかもしれません。

広大な駐車場を有するグランドサイズの博物館ですので、筆者はレンタカーで向かうことにしました。つくば市など県内の主要な都市から1時間ほどで来られます。

敷地の広い博物館ゆえに、施設はちょっと地方に位置しています。車で向かうのがベストだと思います。

大ボリュームの博物館ですので、時間を有効に使うためにも、到着したら即行で突撃しましょう。特に生き物好きの方には見るものが非常に多く、1秒でも長く楽しんでいただきたいです。
茨城県が誇る全国屈指の大型博物館。今こそ、茨城の学術的な偉大さを五感で味わうときです。

博物館への入口。奥へ進めば進むほど、来館者は本館の圧倒的な存在感に驚くことになります。
本館の敷地には、昆虫などの生き物を観察できる小さな森や池があります。博物館の観覧と合わせて楽しみましょう。

規格外のスケール! 関東最強クラスの自然博物館

茨城を揺るがすダイナミックな恐竜・古生物たち

入館して早々、来館者は「もしかすると、めちゃくちゃすごい博物館に来たのかも?」と思うことでしょう。
エントランスホールを抜けて最初に出会うのは、マンモスの中でも特に大型である松花江マンモス。かなりのド迫力ですが、これで驚いていてはいけません。
奥へ進めば、マンモスよりも巨大な恐竜ヌロサウルス(本館での表記はヌオエロサウルス)が出現! やはり恐竜の迫力は桁が違います。観覧順路が進めば、ヌロサウルスの足元をくぐることもできますので、恐竜の圧倒的なスケールをぜひ肌で感じてみてください。

エントランスの向こうに立つ松花江マンモスの骨格。とても大きいですが、まだまだ序の口です。さらに奥へ進むと……。
マンモスよりもずっと大きな恐竜が出現! 3階建ての家以上の高さがあります。このヌロサウルスは全長26 m、体重50 t以上あったと考えられています。
巨大すぎるヌロサウルス。あまりにも大きいので、ワンショットで全身を撮影するのは不可能です。
階段を下りると、ヌロサウルスの足元をくぐることができます。やはり恐竜のスケールはすごい!

観覧は2階エリアからスタートです。
まずは、地球と生命の歴史を黎明期から辿っていく壮大な学びの旅です。先述しましたように、本館はとても大きな博物館ですので、豪華な巨大セットを活かして、地球史をダイナミックに見せてくれます。

太陽系の形成と地球誕生についての展示。天体の模型はとても大きくて見ごたえがあります。
生命の進化の歴史エリアは、まるで不思議な時間の回廊。時代の進行に合わせて、様々な古生物の標本や模型が時系列的に現れます。

時代が進むにつれ、複雑に進化していく生命。その過程を、様々な標本や模型によって展示解説してくれます。ガラス張りの床面の中にも展示標本がありますので、視覚的に楽しみながら観覧できます。

古生代の海洋生物ウミユリ類。ヒトデと同じ棘皮動物の仲間です。模型のように見えるかもしれませんが、写真に写っているのは全て実物の化石です
床面に視線を向けると、軟骨魚類オルタカンサスの骨格を発見。淡水域に生息していたと考えられています。
大型両生類エリオプスの実物大模型。とてもリアルな造形です。
ペルム紀の肉食単弓類ディメトロドン。直系の祖先ではありませんが、私たち哺乳類に近い種類の動物です。

いよいよ時代は中生代へ。陸だけでなく、海や空にも「竜」たちが繁栄しました。
魚竜などの海棲爬虫類の展示区画では、彼らの生態がアニメーションで解説されています。摂食行動や繁殖のシーンが活き活きと描かれており、楽しくアニメ鑑賞しながら学ぶことができます。

魚竜や首長竜の生態をアニメーションで解説。映像展示の力を改めて実感します。魚竜の声は、プロの声優さんが演じられています。
「空の竜」こと翼竜プテラノドン。雄大な翼を有する生物ゆえに、天井からの吊り下げ展示が似合います。

そして、満を持して、地球史の最強王者・恐竜たちの登場です。大迫力の骨格展示に加え、動き吠える恐竜模型ロボットもありますので、インパクトはすさまじいです。最強の竜たちのパワーを全身で感じ取りましょう。

動き吠えるティラノサウルス。最新の研究に基づいて、体には羽毛があしらわれています。
ティラノに立ち向かうトリケラトプス。超かっこいい!
頑丈な鎧を装備する植物食恐竜エウオプロケファルス。重装備で強そうです。
肉食恐竜デイノニクスの展示。全身骨格の隣に旧復元模型と新復元模型が並べられており、学説の変遷がわかりやすく伝わってきます。
パワフルなティラノサウルスの全身骨格。恐竜の王と呼ぶのにふさわしい風格です。

中生代が終わって新生代に移り、哺乳類の大繁栄が始まります。古代哺乳類も骨格や模型展示が主体となっており、たくさんの動物たちが紹介されています。
筆者の推しはスミロドン。いわゆるサーベルタイガーの一種であり、剣状の牙を備えるネコ科肉食獣です。最大級のサーベルタイガーであるスミロドンの骨格は、猛々しくてかっこいいです。

サーベルタイガーの大型種スミロドン。短剣のような牙が攻撃力の高さを物語っています。
霊長類の進化についての展示。時代が進むにつれて、骨格の形態がだんだん人類に似たものへと変遷していきます。
骨格の展示と合わせて、模型でも霊長類の進化を解説。こちらのプリオピテクスは、類人猿と分かれる前の旧世界ザルの段階にあったと考えられています。

生命進化の展示エリアを越えたら、今一度、2階の通路へと出てみましょう。古生代の大型生物たちの模型が、すさまじい存在感で来館者を圧倒します。
迫力と学術面の両立、これぞ大型博物館。大昔の地球にはこんなすごい生き物たちがいたんだ、という事実を改めて感じ取ってください。

デボン紀の肉食魚ダンクルオステウスの模型。かっこいいですが、最新の研究ではこれほど大きくはなかったと言われています(全長4 m前後という説が有力)
石炭紀の巨大昆虫メガネウラの拡大模型。左右に広げた翼の幅は70 cmに達します。

インパクトの強い展示で学ぶ様々な生態系

新生代までの学びを終えたら、いよいよ現代の自然と生命科学についての展示が始まります。
ここから現生動植物たちのラッシュです。先にも述べましたように、迫力と資料性の高さは国内屈指です。陸海空の生命から、雄大な野生を息吹を感じてください。

2階通路の天井に吊り下げられているのは、海洋生物の剥製・骨格・模型。やはりサメは超かっこいい。
ありとあらゆる分類群の動物たちの剥製標本がズラリ。生命の多様性を感じさせてくれます。
「生きている化石」であるシーラカンスの展示コーナー。濃密なキャプションや古代種の化石標本展示も魅力的です。

本館の売りは、そのダイナミックさ。模型や剥製によるジオラマ展示の迫力にはワクワクさせられます。その中でも、土壌生態系の拡大ジオラマが斬新かつハイクオリティです。自分がミクロ化したつもりで、地表の世界を冒険しましょう。

土壌生態系の拡大展示。来館者はミクロ化したような気分で、林床の環境を体感できます。
土の中に棲む節足動物エナガエダヒゲムシの拡大模型。私たちが見落としがちな土壌生物を、リアルな造形で学ばせてくらます。
実は、フナムシは土の上にも棲んでいます。ニホンヒメフナムシは湿った森の中で活動し、落ち葉などを食べています。

剥製を活用した活動的なジオラマも見逃せません。創意工夫された見せ方により、標本たちは再び命を吹き込まれるのです。

ジオラマ展示と言えば、やはり剥製標本。ポージングを工夫することで、獲物にとびかかる肉食動物のかっこいい姿を再現しています。
オオヨシキリの剥製と巣を同時に展示。鳥がどんな場所でどのように繁殖しているのか、独特な展示を通して解説してくれています。

ここから先の道はスロープとなり、壁面は水族展示の水槽へと変わります。飼育されているのは、淡水・海水の美しい水棲生物たち。茨城県を含めた日本の水域環境について、力強い生体の姿を通して学びましょう。

水族展示エリア。スロープを歩きながら、長大な水槽を観覧していきます。
オオクチバスやブルーギルなどの外来魚も展示されています。本エリアの観覧を通じて、日本の水域環境の現況がわかります。
河川や湖の底で暮らすカジカ。安定した姿勢がとれるので、パイプの隙間がお気に入りみたいですね(笑)。
こちらは海水魚の展示水槽。3面アクリルガラス張りで見やすいです。

続いては、海洋生態系に関する展示です。色とりどりの魚たちの剥製標本は豪華そのもので、竜宮城に来たような心地にさせてくれます。
大いなる海の絢爛な世界。そこに棲む海洋生物たちの姿や生態も、とても謎めいて魅力的です。

魚たちの剥製展示。展示標本数はかなり多いです。
円筒形のケースを用いて、回遊する海水魚たちの姿を表現。よく見ると捕食シーンもあります。
ダイオウイカの軟甲。イカは貝の親戚であり、背に貝殻の遺物である甲を備えています。この軟甲の持ち主は、胴体の長さ約1.7 mの個体であったと思われます。

巨大スケール展示で地球環境の「今」を知る

生命と自然環境の不思議について深く学べるのも、本館の素晴らしさだと思います。
次なる区画は「生命のしくみ」。動物や植物の生態や体の構造を学習できます。大型模型や体験型展示により、強烈なインパクトを受けることで理解がスムーズに進みます。

脊椎動物の骨格と節足動物の標本の比較展示。生き物の体の精巧さには感嘆します。
昆虫の体の名称を部位ごとに解説。種類によって翅や脚の形態が異なっていて、非常に興味深いです。
動物の視覚を体感できる展示。ぜひ、中を覗いてみて、「他の生き物たちが見ている世界」に入ってみてください。

この星で私たちが生きていけるのは、植物たちのおかげです。本エリアでは、植物の繁殖生態や組織の構成を興味深く学べます。植物の秘密を知れば、他の生き物とのつながりについても理解できるのです。

植物の繁殖生態に関する展示。本物の種子標本を用いて、種子散布の形式をわかりやすく解説してくれます。
動物にくっつく種子の拡大模型。子供の頃、トゲトゲのオナモミが体中にくっついたご経験のある方も多いのではないでしょうか。
植物の葉の断面を表した大型オブジェ。葉の中にどのような組織があって、光合成や呼吸がどこで行われているのか、視覚的に学ぶことができます。

続いてのテーマは「人間と環境」。地球と人間の関わりについて学び、考えるエリアに入ります。
地球上から絶滅した生物、絶滅しつつある生物の標本が多数展示されており、地球規模の環境問題について来館者に提起しています。極めて強いメッセージ放つエリアですので、全ての資料をじっくりと見ていただきたいと思います。

ジャイアントモアことディノルニス。ダチョウよりもはるかに大きい陸上鳥類です。人間による狩猟で絶滅しました。
大型鳥類エピオルニスの卵の複製。長さ約30 cmある特大の卵です。モア同様、人間に狩られて滅んだと考えられています。
ニホンオオカミの頭骨レプリカ。20世紀初頭まで日本にいきていましたが、大規模な駆除活動によって地球上から姿を消しました。
絶滅危惧種を標本やパネルにて紹介。危機に立たされている生き物たちの姿を見ることで、環境問題をより身近に感じることができます。
巨大な本型の展示「植物たちからのSOS」。キャプションと映像展示が一体となっており、植物たちが警鐘を鳴らす環境問題について、濃密かつ明瞭な学習ができます。

1階に下りると、学習空間「ディスカバリープレイス」に出ます。広々としたスペースに興味深い展示がたくさんあります。円形の観察コーナーにぐるっと配置された水槽を見ながら、可愛い生き物たちに癒されてください(笑)。

ディスカバリープレイスの観察コーナー。希少種ホトケドジョウなど、様々な生き物が生体展示されています。
深海の節足動物ダイオウグソクムシの生体展示。刺激しないようにフラッシュは禁止となっています。
1階ホールから外を見やると、ダイオウイカの実物大模型が目に入ります。クラーケンのモデルにふさわしい巨体です。

そして、県立博物館の醍醐味と言えば、ご当地の自然環境についての展示! 茨城県の陸域・水域に棲む生き物たちの標本を、たっぷり観覧しましょう。
なお、昆虫や植物の展示標本数はとっても多いので、生物マニアの方は本エリアでかなりの時間を費やすと予想されます。もしお昼をまたぎそうでしたら、同じフロアのレストランにて小休止を入れるといいかもしれません。

自然科学のニュース「茨城の自然インフォメーション」。茨城県における自然科学研究の最前線や、画期的な発見について報じてくれます。
茨城県の海に棲む生き物たちの標本展示。知名度向上中の軟骨魚類ラブカも生息しています。
棚1つ1つに動物・植物標本がズラリ。ガチの生物マニアの方には、ぜひ全て見てほしいので、観覧時間をたっぷりと確保しておきましょう。
茨城県の希少植物タチスミレ。茎の長さは1 mを超えることもあります。
2013年に茨城県内で発見されたセアカゴケグモ。毒を有していますので、見かけても触らないようにしましょう。

本当に大きな博物館ですので、筆者の記事で紹介しきれていない展示もたくさんあります。ぜひ、皆様も足を運んでみて、驚異に満ちた大自然の世界をご覧ください。
そして、茨城県には関東屈指の自然博物館があると自慢してください。

最後にもう一度、ヌロサウルスを1階から見上げてみます。やはり、恐竜はでかすぎる!

ミュージアムパーク茨城県立自然博物館 総合レビュー

所在地:茨城県坂東市大崎700

強み:巨大な恐竜をはじめとする大型施設ならではのダイナミックな骨格・模型展示、精巧な大型ジオラマや特殊な体験型展示など来館者に関心を持たせる創意工夫、茨城県内の自然科学に関する膨大な数の標本資料

アクセス面:立地の関係上、車で行くことを推奨します。自家用車をお持ちでない方は、茨城県内の街でレンタカーを借りて向かいましょう。事情があって車を使えない場合は、つくばエクスプレスの守谷駅からバスに乗って行く手もあります。ただ、最寄りのバス停から博物館までは20分以上歩きますので、夏期には補給用水分を万端に準備してください。筆者としては時間なんて気にせず、この超大型博物館を心ゆくまで楽しんでいただきたいので、閉館ぎりぎりまでいても大丈夫なように、やはり車での来館をオススメします。

超巨大なヌロサウルスをご覧になればわかるように、日本有数の特大自然博物館です。古生物・現生動植物問わず、ものすごい数の標本を見られますので、ガチな生き物好きの人は丸1日費やすつもりで楽しみましょう。幸い、館内にレストランがありますので、お昼をまたいでも、ランチ休憩や軽食を適宜とることができます。
大迫力の大型標本・模型展示のみならず、アニメーションや特殊技法を用いたユニークな展示も本館の強みです。個々のエリアに施された創意工夫からは、「来館者に楽しんで学んでほしい」という強い想いが伺えます。環境問題に関する区画もかなりのボリュームであり、自然教育においても非常にスペックの高い施設となっています。
再三になりますが、とってもとっても大きな博物館です。生物マニア・自然博物館マニアを自負するならば、一度は足を運んでおきたい施設だと強く言えます。

博物館の野外公園内に立つ「自然発見工房」。野外エリアの自然観察や教育活動の拠点となっています。

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