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全国水族館の旅【49】桂浜水族館

荒々しく力強い土佐の海は、数多くのたくましい生命を育てています。黒潮の恵みを受けて海洋生物が大いに栄え、高知県の雄大な生態系が循環しているーーこれはとても素晴らしい奇跡だと思います。
大平洋に臨む桂浜の海岸には、長い歴史を有する水族館が立っています。そこには、学びと遊びと感動があふれていました。


桂浜でパワフルな土佐の海を体感!

桂浜公園は高知県の中でも有名な観光地の1つです。雄大な大平洋を間近で拝める景観は圧巻の一言で、高知名物よさこいの唄にも出てくる景勝地です。この素晴らしき海沿いの自然公園には、高知の水域生態系の膨大な知見と深い歴史を有する桂浜水族館が立っています。

さっさく、筆者はレンタカーを借りて桂浜へGO。高知市の市街地からは車で30分ほどの距離なので、ちょこっとドライブを楽しみながら向かえます。土佐の海から吹く爽やかで力強い潮風が、とても心地よく感じられます。

広大な大平洋に面する桂浜の海岸。このパワフルさこそ土佐の海!
高知の市街地からレンタカーで走り、桂浜公園の駐車場に到着。関西ナンバーの車も停まっており、桂浜が四国の有名観光地であることを実感します。
桂浜公園の「海のテラス」。土佐の海の幸を食べて、お土産も買って、高知県をとことん楽しみましょう。

桂浜公園は数々のビュースポットであふれています。海岸線の景観はもちろん、勇ましい坂本龍馬の銅像も見ておきたいですね。園内の散策を楽しみながら、ハマスイ(桂浜水族館の愛称)へと進んでいきましょう。

桂浜公園の人気撮影スポットと言えば、坂本龍馬の銅像。歴史上の人物の中でも、筆者は特に龍馬が大好きです!
海岸線をまったり歩き、景色を楽しめるのが桂浜の魅力。海が大荒れしていなければ、龍王岬の上へ登ってみましょう。
大平洋に臨む海津見神社。大自然への畏敬の念が感じられます。

優雅に桂浜公園を歩きつつ、広大なビーチに出ると目的の水族館が見えてきます。筆者の来訪時、土佐の海は激しく波打っており、自然の怖さと偉大さを強く感じました。
彼方へ広がる大平洋を眺めつつ、ビーチの路を歩いていくと桂浜水族館へと導かれます。本館は昭和初期から水棲生物の飼育と研究を続けられており、生物マニアの関心を強く刺激する施設なのです。

大平洋へと開かれた広大な砂浜。この海の向こうには、無限の生命が息づいています。
龍馬の銅像の方からビーチに出て、黄色い路を歩いていくと桂浜水族館へ導かれます。高知県の水棲生物との出会いが楽しみですね。
ハマスイこと桂浜水族館。昭和6年から営業され続けている歴史深い水族館です

水族展示がはじまる前から、桂浜水族館は楽しみでいっぱいです。入場するとすぐに、様々なセットや造形物が現れ、来館者を愉快な心地にさせてくれます。ハマスイでの学びと遊びを味わい尽くし、旅の思い出を美しく彩りましょう。

おらんくの池。はりまや橋をイメージした「かつらや橋」が掛かっています。なお、プールの中には魚類やナマコ類などの水棲生物が飼育されています。
ここにも龍馬がいました。このサイズでも偉人の風格が漂ってきます。
ときおり土佐の妖怪たちが現れます。敷地内の各所に楽しい造形物がいっぱいあります。

心が暖まってきたところで、生き物たちとの出会いと学びの始まりです。深い歴史と豊かな水棲生物の研究ノウハウを有するハマスイ、どんな学習体験が待っているのか楽しみです!

水域環境を楽しく学べる特色豊かな水族館

世界に誇る多様性! 輝く高知の海洋生態系

本館の屋外展示の敷地は広く、開放的な心地でたくさんの生き物たちと出会えます。展示スタイルも各所に工夫が満載であり、来館者はワクワク感はどんどん高まっていきます。次第にハマスイの魅力に引き込まれ、展示の世界に没入していくのです。

ボートの中に水が張ってあります。中を覗いてみると……。
ボートの中でミシシッピアカミミガメが飼育されていました。自由な発想の素晴らしい展示の工夫だと思います。
屋外には水槽の展示もあります。オニテナガエビは最大級の淡水エビ類の一種であり、迫力は抜群です。
高知県の金魚「土佐錦魚とさきん」。昭和44年に高知の天然記念物に指定されました

屋外展示でテンションが上がり、高揚感MAXのまま屋内展示へ! 広々としたホール内で存在感を放つのは、天井から吊り下げられた大型海水魚アカメの模型です。土佐が育んだ巨大魚の秘密、迫力の水族展示でたっぷり味わってください。

1階の展示ホール。最初に出会えるのは高知県の水棲生物たちです。
大迫力のアカメの模型。海の中で遭遇したら、間違いなく怪物だと思ってしまうでしょう。
水槽内を集団で舞うアカメたち。水族館は数あれど、アカメの群泳を見ることができるのは桂浜水族館だけです
顎の発達に異常をきたした個体。他のアカメと同じように元気に暮らしています。

世界に誇れるほど豊かな高知県の海洋生態系。土佐湾沖には世界最大規模の海流「黒潮」が流れており、カツオやマグロなど多種多様な海洋生物がやってきます。さらに土佐湾にはクジラ類も定住しており、彼らに会いに行くホエールウォッチングも催されています。
素晴らしすぎる土佐の海。そこに棲む生き物たちを生体展示で観察し、桂浜の向こうの海洋を想像してみてください。

海水魚たちの紹介パネル。いごっそうオヤジさんが土佐弁全開で解説してくれます
パイプから顔を出すウツボたち。海のギャングと呼ばれる彼らも、身を寄せ合う姿は可愛いですね。
クロホシフエダイ。刺身や煮つけ、鍋料理の具にもなる超おいしい魚です。
高知県の養殖業者のもとで生まれた金色のイサキ。黄変種は敵に見つかりやすく、自然界ではなかなか生き残ることができません。
釣り好きの人にとってはお馴染みのカサゴ。簡単に獲れて、おいしく食べられる魚です。

おいしいものに釣られるのは人間の性であり、土佐の海水魚の生体展示を見ていると、思わず涎が垂れそうになります(笑)。生態の学習をしながら、ついつい彼らの味を想像してしまいます。観覧後の夜は、高知県内の料理屋さんで土佐の海の幸を食べまくりましょう!

見るからにおいしそうなへダイ。土佐の海の恵みに改めて感謝ですね。
究極に美味なトラフグをはじめ、可愛いフグ類が舞う水槽。刺身やちり鍋は、お酒の最高の友ですね!
大きくて、鮮やかで水族館映えするセンネンダイ。実はとてもおいしい魚で、みそ漬けやフライなどに調理されます。

本館の大水槽では、様々な種類・サイズの海水魚たちが優雅で力強い舞を披露してくれています。妖しさを湛えた軟骨魚も、おいしそうなスズキやロウニンアジも、みんなかっこいい! 本展示で魚たちをとことん観察すれば、海の中の世界をより強くイメージできます。

多種多様な海洋生物がひしめく大水槽。大小様々な魚たちが乱舞で魅せてくれます。
お腹を見せながら泳ぐホシエイたちは人気者。なお、頭部にある2つの穴は鼻孔(鼻の穴)です
モヨウフグ。大型魚たちの隙間を縫って堂々と泳いでいます。
海洋生態系の解説資料。生き物同士のつながりのメカニズム、海洋環境問題について詳しく語られています。

高知県の生き物たちに続いて、ユニークな海洋生物たちの展示も目を引きます。生体の美しさと愛らしさに加えて、独特な解説キャプションも大きな注目ポイントです。生き物たちの実像を科学的に深掘りすれば、彼らへの愛着がさらに強くなります。

必殺のパンチで貝殻さえ砕く甲殻類モンハナシャコ。そのパンチのスピードは、人間のプロボクサーを上回るとも言われています
有毒魚として有名なゴンズイ。実は、食用にもなるおいしい魚です
今や人気者となったチンアナゴ。砂中に隠れている体が気になりますね。そういうときは、本館のオリジナル解説資料を見てみましょう。
チンアナゴの手作り紹介パネル。とても絵のお上手な飼育員さんによって、詳しくわかりやすく解かれています。

麗しい高知県の砂浜には、野生のアカウミガメが毎年産卵に訪れています。彼らの生息数減少を止めるためには、産卵場所の保全が必須となります。海岸環境を守ることは、ウミガメたちの生命を守ることに直結するのです。

ホール中央部のプールで飼育されているのは、元気いっぱいのアカウミガメとアオウミガメ。生体を間近で観察できるだけでなく、トングを使った餌やり体験もできます。人を見ると寄ってくるウミガメたちの姿は、愛嬌たっぷりでとっても可愛いです!

ホール中央部にはウミガメたちのプールがあります。アオウミガメ、アカウミガメがまったりと泳いでいます。
本館では餌やり体験が実施されているので、人間を見るとウミガメたちがやってきます。
2種類のウミガメの解説資料。両種は外見的特徴だけでなく、食性などにも違いが見られます。

1階ホールの奥には、不思議な雰囲気を醸し出す展示室があります。日本における爬虫類教本の先駆者『ビバリウムガイド』編集長の方が担当された飼育空間であり、たくさんのかっこよくて可愛い両生類・爬虫類・古代魚と出会える「アキラの部屋」です。
生物マニアにとっては、ハートにストライクな場所。好奇心と探究心のままに、魅力的な生き物たちを観察しまくりましょう。

秘密の展示室「アキラの部屋」。生物マニア大興奮のかっこいい生体のオンパレードです。
強そうなミズオオトカゲ。なんという超イケメン!
泳ぎの得意なギアナカイマントカゲ。アマゾンの沼地がホームということで、水中での動きはとても軽やかです。
ぴったりと静止したイエアメガエル。可愛すぎます!
肺を有する魚プロトプテルス。水面に口を出して、空気中の酸素を吸います。

桂浜で出会う世界の水域のスターたち

海域域の次は、淡水域での水棲生物との出会いが始まります。1階の通路側に並ぶ水槽には、高知県の淡水生物たちが豪華共演!
本館のオオウナギはかなりの大型個体であり、新聞にも載るほどのメガサイズです。1 mを超える大物はなかなかお目にかかれませんので、この出会いを大切してまじまじと観察させていただきました。

淡水の底生魚ドンコ。夜になると活発に動き、小魚などを捕食します。
立派なナマズ。たまに引っくり返っているときがあるようですが、寝てるだけなのでご安心ください。
半身を隠したオオウナギ。全長1.3 mもあり、かなりの大型個体です。
パンダ柄のニホンウナギ。この子も超可愛い!
サワガニの飼育水槽。砂利の中にエアーリフトがあるので、水が砂利の中を通って浄化される仕組みとなっています。

さて、ここからは高知県を飛び出して、世界の水棲生物たちとの対面です。いきなり筆者を萌えさせてくれたのは、ちょっと怖くて可愛いピラニアナッテリー。スタッフさん手作りの可愛い解説資料と相まって、魅力はMAX!
多くの日本人の心をとらえて熱中させる海外の淡水生物。彼らの素晴らしさが、本館の生体展示から迸っています。

ピラニアナッテリー。凶暴な魚というイメージが強いですが、現地アマゾンでは漁の対象になっており、どちらかと言うと人間の方がピラニアを食べています
スタッフさんが作った可愛いピラニアのイラスト解説。このイラスト、欲しすぎる!
スモールスポット・ポルカドットスティングレイ。淡水に棲むエイの仲間です。
アメリカ産の淡水カメであるマタマタ。かなり水中生活に順応しており、ほとんど陸に上がることはありません。
オフロネームス・グラミー。好奇心旺盛な魚であり、指をかざすと追いかけてきます

次なる生体展示に向かう前にワンクッションおき、2階の展示室「ほねほねルーム」に向かいましょう。この区画は種々の標本や濃密なキャプションによる学習がメインであり、海洋生物の体の秘密や深海の生態系に関する膨大な知識を獲得できます。学術的に貴重で美しい標本のラッシュに、筆者は大興奮を押さえきれませんでした。

2階の標本展示室「ほねほねルーム」。立ち並ぶクジラ類の骨格が目を引きます。
ハナゴンドウの頭骨。イカなどを食べるハクジラ類の一種です。
シュモクザメ類の顎の骨。横に張り出した頭が、英名「ハンマーヘッドシャーク」の由来です。
ザトウクジラの胎児の液浸標本。我々と同じ哺乳類ですので、へその緒がついています。
激レアな深海魚サケガシラの標本。高知県の室戸沖で捕獲された個体です。

ここで建屋を抜けて、再び屋外展示へ向かいます。出迎えてくれるのは、本館のスターである鰭脚類たち。幸運なことに、筆者の来館日はプールの清掃日でした。水の抜かれた状態で鰭脚類たちを観察する貴重なチャンス、誠にラッキーでした(笑)。

再び屋外展示へGO。なんとラッキーなことに、本日はプールの清掃日でした!
水の抜かれたプールの底に佇むミナミアメリカオットセイ。とても珍しい光景です。
たくましいカリフォルニアアシカ。頭部にある凹凸がオスの特徴です。

屋外飼育の生体は、みんなアイドル的人気を誇る生き物たちです。筆者が強く関心を抱いたのは、療養プールで飼育されているウミガメたちです。ケガや病気で弱った個体が本館で一時的に保護されており、元気になると再び海へ放たれます。海洋生物の保護施設としても、本館は大活躍され続けているのです。

野生のウミガメ(病気の個体や負傷個体)の療養プール。再び自然界に戻すために、ここでアカウミガメやアオウミガメを一時的に保護しています。
後足で立つコツメカワウソ。どの個体もアグレッシブに動き回っていました。
本館のフンボルトペンギンには名札が付けられています。1羽1羽を識別できる飼育員さんたちの目は、まさにプロの慧眼だと思います。
穏やかなカピバラたち。餌やり体験ができますので、ぜひチャレンジしてみましょう。
どっしりした癒し系・ケヅメリクガメ。おいしい野菜やフルーツを食べて育っています。

素晴らしきハマスイ。本当に伸び伸びと楽しく学べる水族館です。土佐の海を感じながら学習している間は、時の流れを忘れて生き物たちの観察に没頭できます。
高知県の自然を理解するなら、本館での学習体験は極めて重要です。生き物を愛する全ての人に、ぜひハマスイに訪れていただきたいと思います。

敷地内にはフードストアがあり、ランチや軽食を楽しめます。桂浜のビーチを眺めながら、まったり過ごしましょう。
フードストアの案内イラスト。みんな可愛いですが、筆者の推しはダントツでピラニア!

桂浜水族館 総合レビュー

所在地:高知県高知市浦戸778(桂浜公園内)

強み:濃密かつ専門的に深掘りされた高知県の水域生態系の生体展示、間近な距離で生き物を観察できる開放的設計の展示エリア、わかりやすさと楽しさを追究した独特な工夫満載の解説資料

アクセス面:高知市の市街地や高知空港から車で約30分。景勝地である桂浜公園に位置しており、海側にはとても広い駐車場があるので、やはり車での来訪を推奨します。四国にはたくさんの学術施設があり、お遍路ドライブをしながら水族館を巡るのも素敵な旅の楽しみ方だと思います。また、市街地から桂浜公園までは「とさでん交通バス」が出ているので、公共交通機関の利用も大いにありです。

美しい生体展示と創意工夫がいっぱい! 言うなれば、「究極的に楽しく学べる水族館」です。高知県の水域生態系の生き物を飼育展示の中心とすることで、現地の環境と生物相を体系的に学ばせてくれます。独特な工夫満載の解説資料はとても興味深くてわかりやすく、楽しみながら観覧していくと、いつの間にか来館者はすさまじい量の知識を獲得できるのです。
通常の水族展示に加えて、ウミガメやカピバラへの餌やり体験、ほねほねルームでの標本資料学習など五感と脳で生き物を感じられる展示が多いのも、本館の素晴らしい強みだと思います。濃密学習したい生物マニアはもちろん、生き物たちとの出会いを楽しみたい家族連れにも超オススメな水族館です。

さらに、研究保護施設として環境保全に貢献されていることも付記させていただきたいと思います。ハマスイでは療養プールにてウミガメの野生個体の保護を行い、自然界への復帰の放流を地元小学生と共に実施されています。研究・生物保全・環境教育において、多大なる業績を有する本当に素敵な水族館です。

本館では、生き物たちの終生飼育を標榜されています。これは水族館だけでなく、私たちが生物飼育する際にも大切なことだと思います。

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