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古賀コン2024年の個人的10作品

はじめに

2024年の古賀コン(第4~7回)の中から印象に残った作品を独断と偏見で10作選びました。


古賀コン4

テーマは「記憶にございません」

ケムニマキコさん「みょるにる」

 古賀コン7の「リヴァイアサン」が話題ですが、僕にとってのケムニマキコさんは「みょるにる」。古賀コン参加前に僕が抱いていた「1時間じゃたいした作品は書けないだろ」という先入観を壊し、古賀コンにハマるきっかけをつくってくれた作品。
 天使、暴力、パロディー、批評性。僕の好みが詰まっていました。

永田大空さん「じゃんけんなんかいでもやりなおしていいよ」

 永田さんの作品を読んでいると、文学や言葉について考えてしまう、そして語りたくなる。
 だからちょっと語ります。
 教えている予備校の高校生に戦前の日本文学が好き、という子がいるのですが、その子が「最近ベストセラーになる小説の文章って、きれいだけど感動しないんですよね。AIが描いた絵ってすごくきれいでも、感動はできないじゃないですか。それと同じなんです」的なこと言っていて、この子は天才だなと思いました。
 そんな、定型化・制度化された文章の対極にあるのが、永田さんの文章です。立ち止まりながらでないと読めない文章だけど、永田さん自身は楽しそうに軽そうに書いているのがいい。
  永田さんはnote上の他の文章もすばらしいので、読んでください。

古賀コン5

テーマは「第一座右の銘」

栗山心さん「右」

 古賀コン5のテーマは「第一座右の銘」という奇妙奇天烈なものでした。そもそも日本語としておかしい。歴代テーマの中でも最も難易度が高かったと個人的には思います。
 そんなテーマに真っ向から向き合い、テーマを生かし切ったのが、栗山さんの「右」という作品です。
 たとえ古賀さんがテーマに沿っているかどうかなんてそんなに重視していなかったとしても、同じテーマに挑んだ作家として、この作品を評価したい。そういう思いで、この作品を古賀コンベスト10に推薦したいと思います。

高遠みかみさん「まちなかアンケート! 100名に座右の銘を訊いてみた!」

 古賀コンを代表する奇才、高遠みかみさん。知性とユーモアが魅力です。2024年の古賀コンに参加した作品もすべてすごかったですが、「まちなかアンケート!」が個人的には一番好き。いろいろな楽しみ方ができます。

中務滝盛さん「赤いバックライト」

 僕は田山花袋の『田舎教師』が好きです。田舎に住む主人公は、彼なりの努力はするけれど、結局田舎で埋もれて死んでいく。
 人生は何歳からでもやり直せるとたたえる物語があふれている一方、人生には取り返しがつかないという悲しみを語ってくれる作品は少ない。きっと、あんまりうけないからだと思う。
 でも、僕は推します。

古賀コン6

テーマは「 架空 “☆1” レビュー 」

𝐀𝐘𝐀𝐊𝐀さん 「“𝐕𝐄𝐑𝐘 𝐁𝐀𝐃 𝐊𝐈𝐍𝐊𝐈𝐍𝐆”」

 古賀コン6に彗星のように現れた天才。圧倒的な手数の多さ、文章の密度、超展開。笑えるのになぜか感動できる傑作です。

こい瀬伊音さん「ルラの夢」

 かわいらしさと怖さが溶け合った、こい瀬さんらしい(と僕が思う)作品。
 こい瀬さんの社会に対する分析は恐ろしいほど鋭い。「カーストスイッチ」など。この作品はユーモアでカモフラージュしているけど、気をつけないと切られている。でも、切られたことに気づかない人もいる。

古賀コン7

テーマは「 ダンスをご覧ください 」

化野夕陽さん「ダンサー」

 半端なネタ作品は蹴散らすマジレス性能の高さが化野さんの魅力。おもしろダンス大会だった古賀コン7においても本物のダンスを魅せつけてくれました。人は本物の前に立つと称賛することしかできない。
 僕がひそかに憧れている「閑窓」に作品が掲載されたのもうらやましいです。(「船でなく」よかったです)

ハギワラシンジさん「舞踏転生」

ありがとう。勇気をもらった。

小林猫太さん「ポシェットギャンブラー単&複〜ダンスダンスダンスVSダンスインザダークVSダークライ〜」

 するめのように、読み返すと味わいが出る作品。
「ポシェットギャンブラー」は、全作品感想や後夜祭アンケートでは推さなかったのですが、この記事を書くために古賀コン作品を読み直していくうちに、すばらしさに気づきました。
 ふつうのネタ作品は初読時が一番インパクトがあり、読み返すたびに衝撃が薄れていくのですが、猫太さんの作品は二度、三度読んでからの方がおもしろい。「お約束」で構成されているので、話がわかっている方が楽しめるのでしょう。
 この作品に限らず、猫太さんの鍛えた安定感は流石です。いつもいつでも上手くいっています。
 そして、下ネタや暴力に頼らず、家族みんなで楽しめる小説が多い。年末年始にこたつでみかんを食べながら読むにはぴったりです。

 古賀コンには他にも年末年始に読み返したい作品がたくさんあります。自分なりの年間ベスト作品を考えるんだ!


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佐藤相平
英語を教えながら小説を書いています/第二回かめさま文学賞受賞/第5回私立古賀裕人文学賞🐸賞/第3回フルオブブックス文学賞エッセイ部門佳作

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