マガジンのカバー画像

詩作、過去作品 公開保存用

31
あとで読む記事をマガジンに保存しておくことができます。不要であれば、マガジンの削除も可能です。
運営しているクリエイター

#言葉

バス停

乳歯のやわらかさを、二度とあじわうことが、できないと知っていながらも、主語のない大胆な呻きから、一日がはじまるのかもしれない。舌でたしかめる濃い、唾液の温度。日射病の、なつかしさ。あの場所には浴びるほど、身体にとりいれたかった、日陰があった。とても丁寧に、描かれる曲線の束が、視野にあらわれて異性の肉体が急に、恋しくなったのをおもいだす。貧血に、比例して私たちの目は、無造作をゆるす皿に、新しい朝が盛

もっとみる

羊歯植物

                           葉と葉の間一つ一つがお稲荷様だ。

背中の毛が濡れている。

どぶ板の上につくられたお稲荷様、

出勤前のホステスの腰の臭いを嗅ぎたくて体をかたむける。

どぶを流れる油の虹色の反射が岩手の女のようだと言って喜んだ。

東北の北のほうにしか褐色の女はいないという。

お稲荷様は明け方石になる。

葉はそろって不潔に揺れる。

 

     

もっとみる