【おもしろいの正体:13】ベタなおもしろさはおもしろいのか。
もったいぶった表現は
(感情が)伝わらない。
世の中が理解できないことを怖れる作り手と
理解することへの意欲を失った受け手で
あふれているこの時代、
いろんなコンテンツを見ていると
表現がどんどんベタに、過剰になっています。
完全に間違いようのないところまで
見せないと伝わらない。
漫画とかアニメとかがわかりやすいですが、
怒ってるんだ。悲しいんだ。みたいなことを、
これでもかというくらい叫んで見せて
やっと共感する、みたいな。
ワンピースの感情むき出しのシーン、
ベタだなあ、と思うけどやっぱり感動する。
変な修飾語つけないストレートさが
直接伝わってきますよね。
と言いつつ、
実はこういうシーンがいちばん残る。
何も説明しなくても読み取るチカラってのは
やっぱりあるんですよね。
あのベタなアツさがあるから
こういうカットが生きるのかもしれませんが。
結局はメリハリ。
そして変化が起こっている。
説明ばっかりじゃなくて、
上手くメリハリをつければ伝わる。
ちゃんと作るかどうか、だと思います。
ただ、そういう甘やかし文化にも
最近は変化が起こってる気がします。
一つには歌謡曲やJ POPの
歌詞のレベルが格段に上がってること。
平成のころは「心配ないからね」とか
そのまんなの歌詞ばっかりで心配してましたが
最近は変わってきました。
昔はほぼ定型分の組み合わせでできていた。
バッと並べてみましたがこのくらいの素材で
全部成り立ってるくらいのイメージでした。
一時期は日本人はなんでこんな
アタマ悪くなっちゃったんだろう。って
歌聞くたびに思ってました。
言葉の選び方もそうですが、中身が。
たぶん伝えたいことが
なかったんじゃないかと思います。
愛と夢とさびしいしかなかった。
だけどそれは何も解決してくれないことに
いい加減腹が立ってきて、みんな怒ってます。
最近の歌詞は逆に難しく
なりすぎてるキライもある。
なんか文学的というか、
Official髭男dismのアポトーシスって歌あるけど
「遺伝子発現による計画的な細胞死」
細胞の自殺ですからね。
でもこういうところからネタ持ってくるのは
すごくおもしろいです。
こういう感覚こそCMっぽいって思うんだけど、
残念ながら最近のCMはここまで行ってないです。
本来いちばんそういう世の中の気分を
掴んでないといけないのに、遅れてる。
愛してると言わずに
愛を伝える技術。
別にストレートなものがつまらないわけじゃない。
特に歌詞なんかでは、その方が心に響く。
最後に愛は勝つ、と言われればグッとくるが
最初に言ってしまっていいのかとも思う。
いろいろ考えてないから響くんだけど、
言わないで伝える方法もあります。
唐突ですが、
英語教師をしていた頃の夏目漱石が、
「I love you」を「我君を愛す」と
翻訳した教え子に
「日本人はそんなことは言わない。
月が綺麗ですねとでも訳しておけ」
なんて言ったという逸話があって、
(まあ都市伝説らしいですが)
I love you
私とあなたがいてその間に愛がある。
…ただの説明です。
これに対して「月が綺麗ですね」は、
お互いがそれぞれ月に向かっている。
月が綺麗だという気持ちを共有してる。
直接ではないけれど、
同じ気持ちを持っている。
それが愛だ、ということです。
お互いの目を見つめることが
ストレートな伝え方だとすると、
お互いに「同じものを見る」ことで
心を通じ合わせる。
どっちがいいと言うことはありませんが、
個人的には後者が好きです。
同じような例として
「あのとき同じ花を見て
美しいと言った二人の心と心が
今はもう通わない」
という歌詞がありました。
ストレートに言ってしまうと、
「あのとき好きだったけど今はそうでもない」
になってしまってちょっと寂しいです。
何まどろっこしいことを。と思うのも自由。
その時代によって
求められる表現は変わるってことですね。
自分がおもしろいと
思うことも、
発信される時代の気分で
見え方が変わる。
結局は作り手と受け手のマッチングです。
いま何が求められているのか。
その気分を掴めてるかどうかが大きいですね。
ということで、次は
【おもしろいの正体:14】なぜこのおもしろさがわかってもらえないのかと思う人へ。
気が向いたら、また遊びに来てください。
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