紆余曲折の漢字指導
漢字指導は常に試行錯誤してきた。先生や学校の方針によってもいろんなやり方があると思う。
今回は、私の漢字指導がどう変わってきたか書いてみたい。
文字の指導期
15年以上前、メキシコで教えていた頃は「漢字指導=文字の指導」だった。
訓読み、音読み、漢字の成り立ちや書き順まで教え、指で「空書き」させたりしていた。
表に漢字、裏にスペイン語の意味を書いたフラッシュカードを作って、授業の最初や最後に読ませたりもしていた。
テストは、(完全に文脈を無視した)漢字と読み方と意味を書くテストを出題していた。
この頃はまだICT環境なんてなく、全てアナログ。プロジェクターもパワポも使ったことすらなかった。
語彙の指導へ
タイに来て2、3年後。教室にプロジェクターが付き、スライドで授業をするようになって、漢字指導が劇的に変わった。
授業時間が短縮でき、漢字が使われている場面の写真を簡単に見せられるようになった。
例えば、「味」の漢字が出てきたら、「タイのお菓子のパッケージにもこの漢字がありますよ😁」とタイ限定トムヤムクン味プリッツの写真を見せたり、
「洗う」と「顔」の漢字が一緒に出てくる課では、こんなクイズを出したり。(ちなみに「肌ラボ」はタイのドラッグストアやコンビニにも売っている😉)
漢字の勉強が、タイにいても実生活と結びついていると感じられれば、漢字嫌いの学生も少しはモチベーションが上がるかなと思う。
また「語彙の指導」を意識して、助詞や使い方も一緒に教え、「漢字を使って文を作る」宿題を与えていた。
書き順は質問があれば教えるが、それより「問題なく読める字を書く」ことの方が大事と割り切って、間違っていても口うるさく言わないようにしている。(書き順に関してはタイ人の先生の方がよっぽど厳しい💦)
【2020年前期】コロナ禍での漢字指導その1
昨年前期のオンライン授業でも漢字を教えた。
しかし、私が一方的に説明するだけで学生からの反応は全くなし。全員カメラオフで、どこまでやっているのか(そもそも勉強しているのか)も把握できず、ものすごくやりにくかった。
【2020年後期】教えあう活動+使い方の指導へ
これまでの授業の流れは、
①漢字の読みと意味を説明(学生、ワークシートに記入タイム)
②漢字語彙の意味や使い方を説明(学生、ワークシートに記入タイム)
③ ①に戻る
だったが、昨年度の後期は①をやめてみた。
代わりに、例えば12個漢字を勉強するなら、学生をABCDの4グループに分け、Aグループは新出漢字の1〜3、Bグループは4〜6、Cは7〜9、Dは10〜12を割り当てて、それぞれ読みと意味を教科書で調べさせる。
↑番号は出席番号
その後、ABCD全員が入るよう横1列で新しくグループを組ませ(上の青やピンク)、その新しいグループの中で自分が担当した漢字を発表させるようにした。
私が全部説明した方が多分早いが、友達と一緒に調べて教え合うことは、説明を聞くより記憶に残るんじゃないかなと思った。
グループの活動後、文中で正しく使えるように品詞にフォーカスして、例文をあげながらタイ語で意味をとっていく。
ワークシートも少し変えて、品詞ごとにまとめたものの下に宿題の短作文を書くスペースを作った。
後期も途中でオンラインになったので、この活動は各学年2-3回しかできなかったが、これまでより学生が活発になったと感じた。
定期テストでは、漢字の短作文をはじめて出題してみた。白紙で出す学生も数名いたが、事前に告知していたこともあり、ほとんどの学生が頑張って書けた。
【2021年前期】コロナ禍での漢字指導その2
新学期がオンラインで始まったが、反応が欲しいなぁとpadletで漢字を教えてみた。
⏫にも書いたが、勉強する漢字語彙を並べておき、学生たちはその下にこれらの語彙を使って文を書くという活動。
つまり、これまで宿題でしていたことをオンラインでみんなでやってしまおう!という試みである。
やってみた結果、いくつかいいなと思ったこと。
まず、誤用にすぐに気がつけるから即時フィードバックできること。これまでは宿題で書いてきたものは私が赤ペンで訂正し、数日後に返しても見ずに放置されていた(と思う)。
2つ目に、これまではフィードバックや訂正は本人にしか届かなかったが、padletでオープンにすることで全体に届けることができるようになったこと。多くの気づきが生まれる場面も見られて、「間違いから(教師も含め)みんなで学ぶ」ことができていると感じる。
3つ目に、宿題の短作文でチャレンジできるようになったこと。これまでは「無難な」文を書く学生が多かったが、padletを見ながら応用して書いてくる学生が増えたし、提出状況もよくなった。
高3のクラスでやってみて、反応がよかったので高2のクラスでもやってみた。
これからの漢字指導
このpadletを使った方法、対面授業でもやれそうじゃない?というか、今まで教室でしていた事(音読み訓読み、漢字の意味)を予習にして、padletの活動を授業のメインにできないだろうか?
つまりは反転授業✨
今まで使っていたパワポをPDFかGoogleスライドで(もしくは映像化してYouTubeで共有)し、授業の前までに各自で読み方と漢字の意味をワークシートに書いておく。
授業では、padletで作文してアイディアをシェア。オンラインでは私が全部間違いをコメントで訂正したが、対面なら学生たちに口頭で訂正させてもいいかもしれない。
高2のクラスで早速このやり方を試してみたので、またそのうちレポートを書いてみたいと思っている。