親の至らなさもまた子どもにとっては肥やしなのかもしれない
娘が生まれてから、時々幸せ過ぎて怖くなることがある。その思いを、鋭いナイフで切り裂くように痛いほど言い当てられた本があった。『君は君の人生の主役になれ』(鳥羽和久、筑摩書房)は親こそ読むべき本なのかもしれない。
「当時のあなたにとって、あなたを抱きかかえる親は自分そのものであり、世界そのものでした。そんなあなたを見つめながら、親はあなたがわたしの世界そのものだと思いました。明日もこれが続くならば、わたしはもうそれだけでいい、他には何も望まない。そんな気持ちにもなりました。でも、あなたは親にとってかわいいだけではなく、ときに不気味な存在でした。少し大きくなったあなたは、わたしをじっと見つめて『好き』を全身全霊で伝えてくれます。でも、そんなあなたの無条件の愛が不意に怖ろしくなるのです。」
この本は子どもたちに向けて書かれた本だが、それを親になったばかりの視点で読むとまた違った意味が浮かび上がって興味深い。そしてとにかく言葉が的確で鋭い。現実をこれでもかと突きつけられているのに、でもなぜか前を向かせてくれる言葉が並ぶ。
不条理に満ちたこの世界を、自分の体と心でもって、どうやって生きていくべきか。余計な口出しをせずにその姿を見守っていくことはとても難しいことなのだろう。この先、親である私の言うこと為すことをよく観察しながら少なからず影響を受けていくのだろうと思うと自分の生き方を問われるような気持ちになる。それでも、親の至らなさもまた子どもにとっては肥やしなのかもしれないと、この本を読むとそんな風に思える。
「あなたは親に愛されたから愛を知っただけではなく、親があなたをうまく愛せなかったからこそ愛の深さを知りました。」