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写真の話

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ちゃんと写真の話をしてる記事のまとめ。
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#カメラマン

「面倒な客」に対して思うこと

「面倒な客」に対して思うこと

独立してすぐの頃、勤めていた写真館の後輩カメラマンの仕事の愚痴をよく聞いていた。先に辞めて身軽になった身分で聞く愚痴は、酒の飲めない私にも良いツマミであった。

ある日のこと、後輩2人がいつものように酒を飲みながら「今度面倒な客が来るんですよ」と言った。「どんな?」と促すと、どうやら持ち込みの小道具があるらしく、「布を持ち込むので、それを背景にして振袖姿を撮りたい」と言われているとのことだった。

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宣材写真撮影を撮った時のこと(実例)

宣材写真撮影を撮った時のこと(実例)

先日、「宣材写真を撮る時のこと」というnoteを書いた。今回はその実例を書いてみようと思う。ちなみに書き出してる現在、お客さんに書いていいかの許可はまだもらっていない。書き損にならなきゃいいな、どきどき。

4月中旬頃、以下のような問い合わせを頂いた。

「宣材写真を撮って頂けませんか?プロの演奏家なのに写真が苦手で。HPで料金は拝見済みなので、ご検討お願いします」

まれに「料金を説明すると返信

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宣材写真を撮る時のこと

宣材写真を撮る時のこと

宣材写真を撮る時のことを話してみようと思う。

宣材写真を撮れるようになろう、と思い立った数年前、どう撮るのが良いのかを調べたり人に聞いてみたりしたのだけど、分かったのはどうやら「明確な答えを持っている人はいない」らしいということだけだった。

ならばどんな写真でもいいのかと言えばそうでもないようで、写ってる本人は「とりあえずポートレートで撮った写真を使ってるけど、これでいいのか分からない」と言っ

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写真のセンスがない。

写真のセンスがない。

写真のセンスがない。

写真を始めて優に10年を超えるのだが、自分にセンスというものを感じたことが一度もない。写真をやらない人達が「私にはセンスがないから」と言う度、「私にもないけどな、ははは」と自虐的な気持ちになる、というのをずっとずっと繰り返している。

色んな写真家の写真を見ては「なんだこれすげえな」と思い、「自分にはこういうセンスがないなぁ」と思う。そんな人間だから「自由に撮れ」と言われる

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苦手な写真を撮った話

苦手な写真を撮った話

昔から、性的なものが苦手だった。

個人的に苦手な分にはそういったものから距離を置いておけば良いのであるが、写真に関わっているとそうもいかないことがたまにある。専門学校の授業で延々と性的な写真を見せられたり、先輩から「俺の作品見る?」と言われて性的な写真を見せられたり、写真の雑誌を開けば性的な写真だったり、写真展に誘われて行けば性的な写真だったり。

写真に携わる以上、写真と名のつくものは見んけれ

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「ありのまま」が分からない。

「ありのまま」が分からない。

「お客さんに求めることは正直であること」という話をたまにするのだけども、これがどうやら「ありのままを撮りたい」という言葉に受け取られてしまうことがあるらしい。まぁ営業写真業界でよく聞く言葉であるから仕方がないのかもしれないが、この「ありのまま」という言葉を、私は正直あまり好まない。使いにくいと感じてる、という方が正しいかもしれない。

「ありのまま」という言葉を使うことで、妙なフィルターがかかると

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撮りたいもの

撮りたいもの

「撮りたいもの」と聞かれた時に「これ」というものを答えると、「ではそれ以外は撮りたくないのですね」ということにされてしまうことが多々あり、それでなくてもHPやSNSに並べた写真から「この人はこういうのを撮る人だから、きっとこれは撮ってくれないだろう」などと聞かれてもないことを勝手に判断されてしまうこともあったりするので、なかなかこの話題は難儀なのだった。ちなみに以前は「着物以外撮りたくない人」と思

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ペラくないもん。

ペラくないもん。

きっかけは確か、男性に「顔が好き」と言われたことだったような気がする。顔の造作を褒められ、本来ならばキャピっと喜ぶべきところを、さすが私と言う他ないが、「そんなの明日お前が失明したら意味ねえだろうが」と思ったのだった。

仮に相手が失明しなかったとしても、私が失明したらろくに顔の手入れもできなくなるのだし、失明までいかずとも視力が弱ることは十分考えられるし、お互いの視力が保たれたとしても、いずれ外

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写真が苦手な人の実態

写真が苦手な人の実態

相も変わらず写真が苦手な人を撮っているのだが、ここ数年ずっと思っていることがある。恐らく、いやほぼ確実と言っても良いのではなかろうか。写真が苦手な人は、写真のことが好きだと思う。

最初にそう思ったのは、お客さんから写真に対する感想をもらった時である。メールを開くと、長いのだ。感想文の量が半端ない。写真館勤務時も感想はもらったことはあるが、大体「綺麗に撮ってくれてありがとうございました」くらいで終

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せっかくなんでね。

せっかくなんでね。

世間は大晦日なのであって、ということは私にとっても大晦日なのであるが、年末感にはもう飽き飽きなのであった。毎年毎年よくもまぁ暮れるよね、年。

年末に全く関係ない話をしてやろう、と思いこの文章を書き始めたのであるが、まぁこんな日でもない限り改まって感謝の気持ちを述べることもなかろう、と思い改まった。イベントは結局のところ口実なのである。「せっかくだから」と何か特別なことをする為の。

だからこれか

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何も言いたくないんだもん。

何も言いたくないんだもん。

写真をやっているので、写真に対して質問をされることがある。カメラは何がいいかとか、レンズは何を買えばいいかとか、やれじぇーぺぐとか、ろうがどうとかはまぁ初期質問として、「人はどう撮ったらいいか」「料理はどう撮るべきか」「風景はどうしたら良く撮れるか」みたいな質問。

私に質問した人は、大体この一言で一蹴されてると思う。

「まぁなんでもいいんじゃないすか」

余程答えが絞られる専門的な質問じゃない

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カメラマンをやめた話。

カメラマンをやめた話。

私はメインの集客をTwitterで行ってるのであるが、実はそこでカメラマンと名乗っていない。最近はその設定もグズグズになっているのだけど。ちょっとその辺喋ってみよかな、の回。

どんな仕事にもイメージと現実のギャップがあるものだけれども、私の仕事にも、それは漏れなくあると思う。

カメラマンであると言うと、「芸能人とかモデルとか撮るの?」と聞かれることが多い。その次に「スタジオはどこにあるの?」と

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聞かれるより聞きたいの。

聞かれるより聞きたいの。

ほんの少し前、「独撮」という企画撮影会をした。

お客様から「こう撮ってほしい」という希望を聞くのではなく、「私から見たその人を撮る」という企画である。私の独断で撮る。だから独撮。今回は白ホリという真っ白なスタジオで行った。好き勝手に光を創れる、私の大好きな場所だ。

私が撮影会を企画する時は、大体何かの思い込みを壊したい時である。例えば「ジャージ撮影会」なら「写真だからって別に綺麗な衣装でなくて

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1人になれない。

1人になれない。

写真を始めた理由についてたまに聞かれることがあるのだが、営業写真家として活動している今、口に出しても良いものなのか迷ってしまうくらい、それはとても大変にネガティブな理由なのだった。端的に言えば「他人と関わりたくなかった」のである。

母の胎内から出てから、将来を考える歳になるまで、私は「私と社会との相性の悪さ」について頭を悩ませていた。どうにも自分がこの社会で上手いことやっていけると思えなかった私

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