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【読書感想文】サローヤンの小説が読んでみたくなった(トシオ・モリ『カリフォルニア州ヨコハマ町』)

昔、Jポップのあるトップクラスのアーティストの曲を聴いていたら、ソウルフルなバックコーラスのほうがはるかに上手くて、これはイカンだろう、と思ったのを思い出した。

本書は、山田稔のエッセイでその存在を知り気になっていたところ、探していたわけでもないのだが、たまたま図書館の返却本置き場にあったので、借りてみた。

山田はメジャーな作家とは言いがたいし、モリはほとんど無名だから、これはなかなかのシンクロニシティだが、いろんな本を読んでいると、こういうことってよくある。

カリフォルニアの日系二世が英語で書いた小説で、著者の両親の故郷である広島の方言で訳してある。

広島弁の小説はめずらしいし新鮮ではあるが、残念ながら私は小説としては楽しめなかった。

三分の一ほど読んでみたのだが、ウィリアム・サローヤンの序文が一番面白いというのは、いかにもマズい。

何千人といるアメリカの隠れた作家の中で、トシオ・モリほど英語を書くことが下手な人は、三人といないであろう。彼の作品には文法的な誤りが充満しており、その英語は、特に彼が何かすばらしいことを必死に訴えようとするときに、はなはだ良くない。(p.1)

すばらしいツカミだ。まずこき下ろす。そして持ち上げる。

私はトシオ・モリをアメリカの重要な作家であると考えている。(中略)私に出来ることと言えば、トシオ・モリが自分を研いてもっと明晰になるよう心がけると同時に、彼だけが持っているものを何一ついつまでも失わないように祈ることだけである。(p.4 )

新人に対する最大級の賛辞だ。これは期待するなというのが無理な話だ。

しかしごめんなさい、私には楽しめなかった。訳の問題なのかもしれないし、テーマが趣味に合わないのかもしれない。

有名人に序文を書いてもらうのも考えものである。



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