#88 Student, Interrupted 〜 就活はメカニカルにいこう!⚙️
後輩の学部生たちが就職活動真っ只中だ。昨今の大学生の就活のあり方についてはいろいろと意見があるが、今日は就活の方法論ではなく、「何を仕事にするか」について、大学4つ、転職5回を経験した立場から述べてみたい。あちこちの大学で学び、仕事もいろいろやったおかげで、いろいろな経験をさせてもらった。
難しいことは、メカニカルに
考えてもなかなか結論の出ないことは、「メカニカルに」やってみてはどうかと思う。最近の僕のちょっとした口癖になっている。「メカニカルに」とは、内容をあまり「考え」過ぎず、一定のルールに従って「作業」することを意味する。
数学的に物事を考える時に、いちいち数字で作業せずに文字を使った一般式を立て、抽象的に考えるのに似ている。将来の仕事も、そうやって考えた方が風通しがよく、心が折れないと思う。もし学部生がこの記事を読んでくれていたら、ぜひ以下に説明する方法を一度試してほしい。
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作業A: 「好きなこと」 と 「できること」
ここからは、僕が自分の場合を当てはめて、実演しながら進めてみる。まず、「好きなこと」と「できること」を書き出す。「好きなこと」は今できなくてもいいし、逆に「できること」は好きでなくてもいい。後から参照しやすいように、番号をつけてやってみる。そしてこの作業は「考える」作業だ。
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作業B: 世の中の流れを調べる
次のステップは、考えるのではなく「調べる」作業になる。できる限り主観を排して、今の世の中がどうなっているかをネット検索して調べてみよう。上の1〜5については、次のように言える。
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作業C: 自分の指向を書き出す
世の中の流れを把握したら、次は自分の好みを書いてみて、上と合致するかを見てみよう。このステップも、「考える」というより「作業」だ。
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作業D:最終判断
こう「メカニカルに」考えて、僕は4を生業にし、5をサイドワークにすることに決めた。上のプロセスの中で、「考える」のがメインなのは、「作業A」だけだ。そして、このA〜Dの作業が済んだら、自分がエントリーシートを出すべき企業や団体、あるいは公務員試験などは自ずと決まってくるはずだ。
就活セミナーに何度も参加したりお金を払って講座を受けたりする時間があれば、上のBにかける時間を増やす方が賢明だと思う。就職情報を提供する会社はそれがビジネスであり、この一連の作業が、「簡単であっては困る」という前提があるような気がする。その前提には、そういった企業の社員も気づいていないことが多いのではないだろうか。
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不一致を選んでもかまわない
上であえて、【不一致】を生業として選ぶ選択肢ももちろんあると思う。そして実はそういった人たちがいなければ、世の中はとてもつまらなくなってしまう。【不一致】を選んだ時のその先については回を改めるが、一番避けたい事態は、就活情報の海に溺れてしまって、結局何をどうすればいいのかわからなくなり、「どうでもいいや」となってしまう状態だ。
先の投稿「#77 仕事につまった時の万能薬 〜伊雑宮のご利益〜」でも書いた通り、どうしようもなくなったら、手元の就職情報は一旦全部捨ててみよう。自分の頭だけで上のA〜Dを何度か回せば、きっと答えが見つかると思う。
社名と肩書きを外しても、何かが残る仕事を
50歳になって思うのは、学生の皆さんには、30歳前後に、社名と肩書きを外しても、自分にちゃんと何かが残る仕事をしてほしいということだ。例えば海外に出て、勤めている会社の名前を誰も知らない環境に行っても、スキルや知識、教養や話し方、その話題などで、あなたという人格の魅力がにじみ出るような仕事をして欲しい。
Student, Interrupted
このフレーズを見てピンとくる人がいるだろうか?ウィノナ・ライダー主演の1999年の映画、Girl, Interrupted(邦題:『17歳のカルテ』)からとった。この映画では、精神病の診断を受け、思春期の女性としての人生が一旦「中断された = interrupted」主人公の人生が描かれている。原作者スザンナ・ケイスンの自叙伝でもあり、映画中でも「スザンナ・ケイスン」と実名が使われている。色々なことを考えさせられるいい映画なので、とてもオススメ。
この映画に描かれた少女たちが、僕の感覚では「大学での学びを中断させられて、就活に向かわされている」今の学部生たちと重なる。世の中、そんなに複雑ではないと思う。複雑に見せかけて、それを紐解くことをビジネスにしている人たちがたくさんいる感じだ。情報ビジネスは大切だが、もう少し裏方的な役回りでいいと思う。主役は情報ではなく、働く人たちだ。
上の映画にはもう一つ見どころがある。それほど有名ではなかった時代のアンジェリーナ・ジョリーが出演して、アカデミー助演女優賞を受賞した。
蛇足と知りながら付け足すと、ロックバンド、グリーン・デイの大ヒット曲『バスケット・ケース』(1994年)のミュージック・ビデオも、『17歳のカルテ』と同様、1960年代の精神病院を舞台としている痕跡があり、社会システムに「中断」を余儀なくされた彼らの気持ちが今の学部生と重なる。タイトルの「バスケット・ケース」は世の中で手足を拘束されて動けないイメージを表現したそうだ。
音楽面では、破壊力抜群のドラムスが特にいい。使っているドラム・セットはビートルズのリンゴ・スターと同じ「ラディック・ブルーノート」だ。車椅子に乗ったドラマーが登場して、すごいパワーで叩き始める瞬間、いつも勇気をもらう。
貴重な学生時代が「中断 = interrupted」されないことを祈りたい。
今日もお読みくださって、ありがとうございました⚙️
(2023年11月19日)