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#148 素晴らしいキャリアをありがとう 〜ビートルズへ感謝の旅〜

夏休みを取って、イギリスのリバプールへ来ています。リバプールは港やサッカーチームも有名ですが、何と言ってもザ・ビートルズを生んだ街。中学1年生の時にビートルズを聴き始め、いつかリバプールへ、という38年越しの想いを叶えに来ました。今日は感じたことをリバプール滞在中に記したいと思います。
(ヘッダ写真は滞在中のビートルズ・ホテル)



映画『イエスタデイ』

まだ日本にいた頃、車に乗っていてふとラジオをつけると、聴き覚えのある大好きな声が。歌手の今井美樹さんでした。番組の途中でしたが、映画について話しているらしく、「みんな、この映画ゼッタイ観て!」と熱弁していました。

「何の映画かな?」と思って聞いていると、「ある世界規模の停電をきっかけに、ビートルズを知っている人間が世界中で自分だけになった」世界を描いた 2019年の作品『イエスタデイ』でした。ビートルズのメンバーと同じく英国 MBE 勲章を受けたミュージシャンのエド・シーランが本人役で出演しているのですが、彼が「地球上でビートルズを知る唯一の男」に嫉妬して多少取り乱すシーン、あれは彼の本当の気持ちではないでしょうか。
 エド・シーランは作中でビートルズを、「現在のモーツァルト」と称えました。これはビートルズ・ファンの共通認識のようで、J.S. バッハやベートーベンではなく、やはりモーツァルトなのだと思います。僕も今井美樹さんと同じく、この映画を強く推薦します!

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リバプールへ

日本からビートルズ・ツアーでリバプールへ行く場合は、ロンドン経由になることが多いと思いますが、今住んでいるオランダからは、アムステルダム〜リバプール間に直行便が飛んでおり、一時間半ほどで着きます。リバプール空港の正式名称は2002年に変更になり、現在はなんと「リバプール・ジョン・レノン空港」。多くの観光客がビートルズ目当てなのではないかと思います。

愛称ではなく正式名称が Liverpool John Lennon Airport だ!

カスタムハウスふたたび

空港から二階建てバスに乗ってリバプール市街地に。欧州の街並みは似ている部分もありますが、やはりドイツともオランダとも違う雰囲気の住宅地を抜けて、リバプール・ワンと呼ばれる市街中心地で外へ出ました。そこでふと上を見上げると、「カスタムハウス」の表示が。元税関があった場所なのでしょうか?
 何気なく目に入ってくる文字や数字には意味があると言われますし、心理学的にもそれはある程度正しいと思うので、ここに書き留めておくことにしました。「カスタムハウス」はアメリカの作家、ナサニエル・ホーソーンの代表作『緋文字』の序章のタイトルで、僕が自分の小説『Flow into time 〜時の燈台へ〜』の全体構造としてお借りした発想の出発地点でした。うーむ、リバプールまで来てもやはりついて回るのか?

偉大な作品を勝手に引用したから、因縁がついてきたか……いい念であることを祈ろう

ここから始まった、キャバーン・クラブ

リバプールには、ビートルズが活動初期に出演していたナイトクラブ、「キャバーン・クラブ」があり、現在も営業しています。このクラブのあるマシュー・ストリート沿いにはビートルズの曲名を冠したバーやレストランが並んでおり、月曜日に訪ねた時には、日本からのツアーグループもいて、ガイドさんが熱心に説明なさっていました。Wikipedia によると、キャバーン・クラブは第二次世界大戦中の防空壕を利用して、1957年に開業したのだそうです。こんなところにも歴史ですね。

1960年代の雰囲気のままですが、昨日撮影した写真です

リバプール、ビートルズ博物館

リバプールには、ビートルズ関連の博物館が二つあります。中心街にある Liverpool Beatles Museum と、海沿いにある The Beatles Story Museum, Liverpool です。今回は、前者の通称「ビートルズ博物館」へ行ってきました。上で紹介したキャバーン・クラブから、徒歩数十秒の距離にあります。入り口はこんな感じで、みなさんがよくご存知の4人のメンバー以外に、元メンバーのピート・ベストとスチュアート・サトクリフの名前もちゃんとあるのが嬉しかったです。

何気ない案内表示も、歌詞をもじったものだったりする 〜 例えば「お楽しみいただけましたか」は、「We hope you've all enjoyed the show」でした

博物館を訪ねたのは月曜日の午後でしたが、それでも満員! みなさんとても熱心に展示を見ていました。僕も一通り全部見たのですが、写真撮影は許可されているので、二点だけ印象的な展示をご紹介します。

一つは、ビートルズデビュー時のマネージャー、ブライアン・エプスタインが使っていた万年筆です。この万年筆で打ち合わせのメモを取ったり、ひょっとすると様々な会場でのライブ出演の契約書にサインしたりしたのかもしれません。特にブライアンに興味があったわけではないのですが、この万年筆を見た時、不思議に惹きつけられてしまいました。今後、伝記などを読んでみたいと思いました。

ブライアン・エプスタインの万年筆

ビートルズというとどんなイメージがあるでしょうか? 年代にもよるとは思いますが、「うるさいロックを演奏する不良グループ」という印象を持つ人は少ないと思います。このビートルズのイメージは、ブライアンのアイディアでした。
 彼らの優れた音楽を、ロックを毛嫌いする層にも受け入れてもらうため、ビートルズの当初の「ジーンズ+革のジャケット」というスタイルを、「スーツを着てネクタイを締めてロックを演奏」という当時としては斬新なスタイルを導入し、欧米では一般的ではない「おじぎ」(それもほぼ90度!)を演奏後に毎回するようにしたのも、ブライアンの提案でした。

彼は32歳でビートルズの解散前に亡くなりましたが、何となく彼の魂がまだまだ健在な二人のメンバーを見守っているような気がします。プロデューサーのジョージ・マーティンと合わせて、ビートルズは周辺にいた人たちもとても素敵でした。

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次は、現在も営業しているキャバーン・クラブが一旦閉店した際(11年後に再オープン)のクラブ内壁のレンガです。このレンガには、懐かしい思い出があります。僕は中学一年生の頃から高校に入る頃まで、ビートルズのファンクラブ、「ザ・ビートルズ・シネ・クラブ」の会員でした(名称変更を経て、現在は「ザ・ビートルズ・クラブ」)。このファンクラブは 1966年に発足、それから58年後の現在も活発に活動を続けています!

そのザ・ビートルズ・シネ・クラブが、キャバーン・クラブの内壁レンガのうちいくつか(10個程度だったと思います。斉藤早苗さん、何個だったか覚えてますか?)を入手し、限定コレクションとしてプレートをはめ込んだものが売り出されたのです。記憶では、1個5万円前後でした。僕はその写真を手に、父親に話したのを覚えています。

僕:「このレンガ欲しい!」
父:「レンガ買っても音楽聴こえないし、役に立たないだろ」

おそらく15歳の頃だったと思う

普通の対応だろうと思います。その時、「このレンガはすぐに売れてしまうだろうけれど、将来大人になって自分で稼げるようになったら、こういう『お金以上の価値』があるものは、その場で手に入れよう」と思ったのを覚えています。とても、悔しかったです。ビートルズの音が染み込んだレンガが、どうしても欲しかったのです。そして昨日、それを見ることができました! これが、そのレンガです。多くの人が見入っていました。

中学生の僕が欲しかった(当時は買えた!)キャバーン・クラブのレンガ 〜 今は博物館所蔵品

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ビートルズ・ホテル

ご紹介した、キャバーン・クラブ、ビートルズ博物館から徒歩1分ほどの距離に、世界で唯一のビートルズをテーマとしたホテルである、Hard Days Night Hotel があり、今はそのホテルの部屋でこの記事を書いています。ホテル名は、ビートルズの名曲、A Hard Day's Night からきています。この曲の最初の「謎の一撃」コード、近年当時のマスターテープが発見されたことで、謎が解けたようですね。

各部屋はメンバー4人のうち、誰かが必ずテーマになっており、僕が泊まっている部屋は、ドラムスのリンゴ・スターの部屋でした。リンゴ・スターのボーカル曲といえば、『オクトパス・ガーデン』〜「海の底に頭をつけて、休憩するんだ……」(Resting our head on the seabed…)という歌詞は、中学生の時には分かりませんでしたが、今は何となくその意図を想像することができます。

今回宿泊した部屋、リンゴ・スターがテーマ

ホテル前には、オプション・ツアーがあるのでしょうが、ジョン・レノンが購入してサイケデリック模様に塗り替えたロールス・ロイスのレプリカもあります。

多くの人が写真を撮っていました。まさか本物じゃないよね……本物なら触っておくんだった!

そしてこのホテルは、自然といえば自然なのですが、廊下もレストランもバーも、すべての BGM がビートルズ、あるいは解散後の4人のソロ作品です。朝食はホテルのレストランでのビュッフェだったのですが、もちろんビートルズの曲が流れています。
 今朝隣のテーブルにいたご夫婦は、二人とも大のビートルズ・ファンらしく、「ジョージが亡くなった頃にね……」と奥さんと話しています。そして最後期の曲『ゲット・バック』が流れると、なんとそのセリフ部分(メロディ以外のセリフが多く含まれる曲です)を一緒に話し始めたのです! 歌詞は覚えているとして、セリフも覚えていて、それを同タイミングで言えるのはすごい、と思いました。レストランのウェイターさんたちも要所要所で曲を口ずさみながら仕事をしている感じで、「まさに聖地」という感じです。

そして、ホテルのドアノブにかけて「掃除お願いします」「掃除は不要です」を示すカード、これもまた、ビートルズでした。通常は「掃除をお願いします」は「Please service the room」など、「掃除は不要です」は決まっていて「Please do not disturb」ですね。このホテルでは、写真の通り、「掃除をお願いします」は「I need you」、「掃除は不要です」は「Let it be」でした。「I need you」も「Let it be」も曲名で、ちゃんと掃除が必要か不要かという意味に合っているので、思わず微笑んでしまいました。このドアサイン、売ってもらえないかな……

「清掃の方が」必要ですよの意味 〜 つまり「掃除お願いします」だ
「ゆっくりしているので、そのままで」は Let it be というわけだ

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素晴らしいキャリアをありがとう、そして未来へ

思えば、中学一年生の時に母親の勧めでビートルズを聴き始め、一気に音楽と英語への興味が開けました。「いつか英語に関わる仕事を」「いつか音楽に関わる仕事を」の夢は、紆余曲折を経て少しずつ実現しつつあります。
 最初は英語教師、その次は音楽業界で海外営業、再度英語教育に戻って AI の研究をしているうちに、ヨーロッパとの縁を得ました。映画『イエスタデイ』では、「ビートルズがいなかったら存在していなかったもの」が多く描かれていますが、僕も、中学一年生の頃にビートルズの音楽を聴き始めなかったら、間違いなく今ここにはいません。そんな、自分の精神的ルーツのようなものを探る旅でした。

同時に、ビートルズが素晴らしいのは、素晴らしいアーティストであったという過去が、多くの人に影響を与えて、それが未来へ繋がっていることだと思います。
 実は僕もちょっとした企みがあり、丸3日間のリバプール滞在では、ここで紹介した以外の観光はほぼせず、ホテルにこもってあることに取り組んでいます。それは何か? 小説の次は、これです! 年末にはお見せできると思うので、乞うご期待です。精神的ルーツがあるような場所の「気」は、大きなものをくれます。ちゃんと受け取って、未来に繋いでいきたいと思います。

今日もお読みくださって、ありがとうございました🇬🇧
(2024年7月31日)

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ささきとおる🇳🇱50歳からの海外博士挑戦
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