マガジンのカバー画像

佐々木麦のそそそ

315
趣味で書いたショートショートです。作品はすべてとある人物からもらった「お題」を題材にしています。
運営しているクリエイター

記事一覧

掌編小説316 - 新しい鳥

カナリアという鳥を、金成はまだ見たことがなかった。 スズメ目アトリ科カナリア属の小さな黄…

佐々木麦
12日前
3

掌編小説315 - 十月の化けものたち

仕事は相変わらずいそがしく、九月を過ぎても延々と暑い日がつづいていたため、十月も今日で終…

佐々木麦
1か月前
6

掌編小説314 ①(お題:コメント・モリ)

米戸ことは 以下の内容で退会処理を行います。 本当によろしいですか? 本当によろしいです…

佐々木麦
8か月前
3

掌編小説313(お題:プレッツェル知恵の輪)

日曜日、よく晴れた午後のことだった。 街の中心にある噴水広場のベンチに老人が一人で座って…

佐々木麦
10か月前
6

掌編小説312 - 電子言霊の墓場送り

「ここがきみのデスクね」 と、眼鏡の男性に案内されたのは意外にも普通の、どこのオフィスに…

佐々木麦
2年前
13

掌編小説311 - アインシュタインの選択

「鵜ノ沢海里です。趣味は天体観測。鵜ノ沢の『鵜』はペリカン目ウ科の鳥の総称で、日本では古…

佐々木麦
2年前
4

掌編小説310 - 窓から鳩を飛ばしています

鳩山探偵事務所の「鳩山」はもちろん単純に俺の苗字だが、文字どおり鳩が山のように集まることも、じつはままある。デスクのうしろが大きな出窓になっていて、そこに腰かけて窓を開けると、頭に肩に腕に脚に、次から次へと鳩はとまった。 「へぇ、やっぱり浮気してたんだ」 ぐるるぽー。愉快な音でニヨは返事をした。便宜上「ニヨ」と名前をつけているが、あくまで従業員であって飼っているわけではない。二十四番目の従業員なのでニヨ。助手を手配するときはいつもこうして、番号からそれらしい名前をあてがっ

掌編小説309 - 鵜の目鷹の目、鳩の目

鵜ノ沢の「鵜」はペリカン目ウ科の鳥で、日本では古くから漁業や観光業の友でした――と、鵜ノ…

佐々木麦
2年前
2

掌編小説308 - 生死の境をうろうろしています

古い集合住宅の一角。六畳の洋室の片隅で、猫が壁に爪をたてている。右の前足を引っこめるとま…

佐々木麦
2年前
3

掌編小説307 - 頭隠して口隠さずの巻

数年前にウイルスが流行ってからというもの、この国もすっかりマスク文化というものが定着しま…

佐々木麦
2年前
3

掌編小説306 - Kid A

ママは溜息が嫌いだった。 誰かの溜息が大嫌い。自分が満たされているときはそれを邪魔された…

佐々木麦
2年前
3

掌編小説305(お題:コロコロ変わる名探偵)#ショートショートnote杯応募作品

(394文字) ※ショートショートnote杯への応募作品です。

佐々木麦
3年前
3

掌編小説304(お題:株式会社リストラ)#ショートショートnote杯応募作品

最初にリスがきた。 「本日をもって、御社は弊社に吸収合併されることとなりました。これに伴…

佐々木麦
3年前
5

掌編小説303(お題:違法の冷蔵庫)#ショートショートnote杯応募作品

六時過ぎ、やってきたのは作業着姿の男だった。 「本日は冷象庫の点検ということで」 僕が普段そうしているように、自然な動作で男は冷象庫の扉を開ける。上段が冷蔵室、下段が冷凍室になっている、なんの変哲もない冷象庫だった。見かけは。 「んー」庫内に顔を突っこんだまま男がうなる。 「やっぱりいませんか?」 落胆したのもつかのま、 「この部屋幽霊っています?」 男は顔を引っこめておもむろに訊いた。 「象の、じゃなくても大丈夫ですか?」 「大丈夫ですよ」 「一応、洗面