掌編小説304(お題:株式会社リストラ)#ショートショートnote杯応募作品
最初にリスがきた。
「本日をもって、御社は弊社に吸収合併されることとなりました。これに伴い御社の社員は全員解雇とさせていただきます。というわけで、あなたはクビです」
次にやってきたのはトラだった。クビです、と社員の肩に乗って小首をかしげるリスのあとを悠然と追い、社員一人ひとりをじっと見つめ、気迫で彼らを追いだしていく。僕は最後だった。
「もうクビになってます」
僕は努めて冷静に言った。
「きれいに荷物を詰めているね。秋、地中にたっぷり貯蔵しておいたどんぐりを思いだすな。きみ、名前は?」
「嶋です」
「素晴らしい!」
言ったのはトラのほうだった。
「リスにもトラにも、シマはつきものだ」
というわけで、段ボールに詰めていた荷物はすべて元どおり。僕は今、株式会社リストラで働いている。上司はみんなリスやトラでままならないこともたくさんあるけれど、そのくらいの理不尽は前の職場でもあたりまえだったし、動物は好きなので満足している。
(405文字)
※ショートショートnote杯への応募作品です。