11月1日に食べた、反抗的な玉ねぎの話。
こんなに涙を流したのは、初めてだった。
私は涙を流すのが嫌で、玉ねぎを常に冷蔵庫で冷やしている。だって泣いてしまったら、翌日、目が腫れてしまうじゃないか。どこで聞いたのかも覚えていない情報だけど、玉ねぎを冷やしておけば涙が出ない、と聞いたことがある。だから、私は玉ねぎを冷蔵庫で保存している。
確かに私は、ここ数年、涙を流したことはなかった。
それなのに昨日、涙を流すことになった。
私は玉ねぎを冷蔵庫から取り出して、頭とお尻とザクっと切り落とした。その瞬間、私の方に何かが飛んできた。間違いない。それは、玉ねぎの汁。
完全に狙い撃ち。
どうやっても狙い撃ち。
あえて泣かせてやろうという、玉ねぎの心意気が感じられた。
私はまんまと泣かされた。涙がボロボロと溢れてくる。悔しい。こんなに悔しいことってない。だって、泣きたくもないのに、泣くなんて。「女じゃ話にならん!男を出せ!」って、電話に出た瞬間に拒否された時ぐらいに悔しい。
私は下唇を噛みながら、玉ねぎを切り続けた。
その名は、みじん切り。
次の日、私はそのみじん切りにした玉ねぎと挽肉を炒めた。出来上がったのはタコスミート。私は炒めながら、こいつは辛いやつだと思った。なぜなら、私に涙を流させる奴だ。絶対に辛いに決まっている。もしかしたら、炒めたら甘くなるかも、と思った私の考えが甘かった。タコスミートを食べてみた。表面的には甘味を感じるが、奥からは辛味を感じる。
まるで、ライダースを着こなしてハーレーダビッドソンにまたがっているイケオジが笑顔で笑っているようだ。イケオジだからと、あの落ち着きにコロッと騙されそうになるが、そう甘いものではない。本気になるとヤバいやつだ。
しかし、タコスにしてしまえば意外に気にならなかった。トマトの酸味や、チーズのこく、サルサソースの辛味と一緒くたになると、玉ねぎの辛ささえも美味しさのスパイスとなった。
ああ、そうだ。
今日から11月。
そろそろ大掃除を始めないといけない。
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