仕事に行くのがダルい私と、学校に行きたくない次男。
朝っぱらから、我が家には不穏な空気が流れていた。
その時刻、7時58分。
そろそろ家を出なくては、遅刻してしまうギリギリの時間。
ああ、暑いし、仕事行くのだるいな。
そんなことを考えながら、玄関を出た。足元を見ると、アリが歩いていた。アリと目が合った気がした。アリが「間に合うの?」と聞いてきた気がして、私はこう答えた。
わりとギリギリッス
しょうもないダジャレが思いつくぐらいには、今日も私は元気だ。仕事に行くのはダルいが、おビール代とおビールを美味しく飲むためにがんばろう。私は、冷えた缶ビールを手に取った瞬間の高揚感を思い出し、奮起した。
そして、なかなか家を出ようとしない次男に、声をかける。
「早くしてー」
猛暑が続く9月。
あまりの暑さに、学校では体育の授業ができなかったり、昼休みも外に遊びにいけなかったりするらしい。楽しみを奪われた次男の学校に対するモチベは、鳥人間コンテストで飛び立った瞬間に海に落下してしまった時の大学生の落胆並みに落ちている。
私が「ガンバ♡ ファイト♡」とダミ声で声をかけたところで、彼はボートに這い上がることはできない。次男のやる気は、そのまま沖へと流されてしまうのだろうか。
「わかるよ」
「行きたくないよな〜」
「だるいよね〜」
「家で、もふもふのふわふわの愛犬ポッキーを撫でてたいよね〜」
私は次男のやる気が、これ以上沖に流されてしまわないよう、心から彼に共感をし、そして「やる気のない民よ。とりあえず、行くことから始めよう」と言わんばかりに「まあ、行くしかないよねー」と声をかけた。
次男はしぶしぶ準備をし、冷蔵庫に貼り付けている時間割を確認した。
そして、突然大声を上げた。
「あああ!!」
私は驚いて、次男に駆け寄る。
「何? どうした?」
次男は私に向き直った。それも真剣な顔で。
そして、口を開いた。
「今日の時間割、サイコー!!!」
彼は元気に、学校へと飛び立って行った。